
新星堂の子会社化を契機にグループ全体のデータ統合へ歩み出す
ゲーム、音楽、映像ソフトなどのエンターテインメント商品の販売およびフランチャイズ事業を主力ビジネスとするワンダーコーポレーションは、新たな出店や改装、アライアンスを通じた「プラットフォームの拡大」、並びに、商物流改革やサードプレイスコミュニティ(家と職場の中間地点)の創出、PB(プライベートブランド)展開などによる「コンテンツの拡大」を柱とした成長戦略を推進している。
2012年12月には、CD/DVD販売の新星堂との資本業務提携契約書を締結し、翌2013年2月に子会社化。これに伴いグループの直営店は、WonderGoo事業、WonderREX事業、TSUTAYA事業(フランチャイズ)の既存店と併せ306店舗(2015年7月現在)に拡大した。
だが、そこで顕在化したのが、ワンダーコーポレーションと新星堂のITインフラ統合の問題だ。ワンダーコーポレーションは独自開発のPOSシステム「Wonder POS」および本部システムを新星堂にも展開し、オペレーションを一本化したいと考えたが、業態が似ている両社といえども業務の手順や作法などの“文化”には違いがある。ワンダーコーポレーション 経営戦略部 システムサポートグループリーダーの室山 俊之氏は、「これからは新星堂のマーチャンダイザーもWonderGoo店舗の商品発注を担当するようになるなど、両社は業務の融合と効率化を進めていく計画ですが、一方的にシステムを押し付けたのでは、スムーズに業務が回らなくなる懸念がありました」と語る。
そこで室山氏が目指したのが、ワンダーコーポレーションと新星堂が保有する販売データや商品データ、在庫データ、顧客情報などのあらゆるデータを統合し、グループ各社が組織の垣根を越えて一元的に活用できるようにする仕組みづくりである。
レガシーなシステムによる帳票活用からエンドユーザーが主役となった“情活”を目指す
ワンダーコーポレーションがデータ統合を目指したもうひとつの背景が、「グループ全体としてEUC(エンドユーザーコンピューティング)を活性化させたい」という狙いである。現状では経営陣や本部のマーチャンダイザーやエリアマネージャー、各店舗のマネージャーなどから依頼を受け、システムサポートグループがデータを取りまとめて必要な帳票をアウトプットするという個別対応を行っており、その作業負荷の増大が問題視されていたのである。
ただ、「FileMaker」(開発元:ファイルメーカー株式会社)を基盤とするWonder POS、日本語DBシステム「桐」(開発元:株式会社管理工学研究所)を基盤とする本部システムなどの既存の基幹システム上に、新たなデータ統合の仕組みを追加・実装することには困難があった。「開発に費やす工数や期間、コスト、既存サーバーのパフォーマンスなど、あらゆる面で条件が厳しかったのです」と室山氏は振り返る。
この課題の解決策を探る中で行き着いたのが、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールであり、その実現手段として「Dr.Sum EA」が目に止まった。
「ウイングアークが提唱する『コンサルタントや情報システム部門に依存せず、エンドユーザー自身で分析運用できる情報活用基盤を短期間で実現する』という“情活”の考え方は、まさに我々が目指すEUCの姿そのものでした。また、裾野の広いエンドユーザーにBIツールを開放する際のコストの観点からも、サーバーライセンスで使えるDr.Sum EAはとても魅力的でした」と室山氏は語る。
さらに、ワンダーコーポレーションにとって“幸運”だったのは、Dr.Sum EAのライセンスをすでに新星堂が保有していたことだ。
「もともと新星堂の楽器販売部門が保有していたライセンスなのですが、同事業の他企業への譲渡に伴い休眠状態になっていました。システム開発のパートナーであるTIS株式会社に問い合わせたところ、このライセンスを有効利用できることがわかったのです」と室山氏。こうして2014年10月、Dr.Sum EAのライセンスがワンダーコーポレーションに正式に移管され、グループ全体として“情活”を実践するための準備が整った。
Dr.Sumで統合したデータを発注システムに連携させて業務を効率化
ワンダーコーポレーションにおけるデータ統合基盤の構築は2014年10月にスタートし 、同年12月に第1フェーズが完了した。クラウド環境であるAWSに実装されたDr.Sum EAを基盤とするデータウェアハウスに、本部システムの「桐」に蓄積したWonder POSのデータをはじめとした主要データをクレンジングして取り込み、さらにこれらのデータの加工/集計を行った上で、「intra-mart」(開発元:株式会社NTTデータイントラマート)を基盤に構築された発注システムと連携させるというものだ。
「新たなデータ統合基盤が稼働を開始したことでマーチャンダイザーは、所属会社や担当事業の違いにかかわらず、過去の販売履歴やグループ各店舗の販売状況、CD/DVD/ゲームソフトの予約状況などのリアルな数字を見ながら、的確な商品発注をタイムリーに行うことが可能となりました」と室山氏は語る。
データを“価値”に変える情活のさらなる高度化を推進
これに続く第2フェーズでは、「Dr.Sum EA Datalizer」を活用したデータ分析やレポーティングの仕組みを展開。本部から300を超える店舗まで、様々なビジネス現場で活動するエンドユーザー自身による“情活”を本格化させていく計画だ。
「データ分析の結果を、今後の売れ筋を先読みした予測型発注、在庫の最適化、お客様の嗜好の変化を捉えた品揃えの強化やレコメンデーション、より魅力ある店舗づくり、新たなエンターテインメント商品の企画・提案といった施策につないでいくことで、成長戦略に貢献したいと考えています」と室山氏。クラウドとWebベースのユーザーインターフェイスの組み合わせにより、場所や時間、デバイスを問わずにデータを利用できるBI環境のメリットがそこで活かされるわけだ。
一方、経営層や経営企画のスタッフに向けては、「MotionBoard」をベースとしたダッシュボードを提供していくという計画も進めている。
「長年培ってきた経験や勘に、客観的かつ科学的なデータ力を加え、KPI(重要業績評価指標)をリアルタイムに見える化することで意思決定を支援。次のアクションへのスピードを加速させていきます」と室山氏は、今後を見据える。
すでにDr.Sum EA上に蓄積された2,000万件を超える大量データを有効活用し、ビジネスの新たな価値に変えていくため、ワンダーコーポレーションはグループ全体に行き渡った“情活”のさらなる普及と高度化を目指している。






