

豊田通商株式会社
既存基幹システムへの影響を最小限に抑えた帳票基盤の刷新・統合を実現
請求業務も電子化することで、コスト削減と業務効率化を推進
トヨタグループの総合商社である豊田通商株式会社(以下、豊田通商)は、帳票基盤の再構築にあたり、ウイングアークの業務アプリケーションの統合出力基盤「SPAIS」を採用。既存システムへの影響を最小限に抑えながら自社並びに関連5社が活用する帳票基盤の刷新を実現した。さらに、請求書の電子配信についても「invoiceAgent 電子取引」を導入。これにより、ペーパーレス化の推進による業務効率化を果たした。
導入背景
豊田通商では既存大型センタープリンターの老朽化、および電子帳票システムや統合帳票管理システムの保守期間切れに伴うリプレースを契機に、ペーパーレス化を促進する帳票基盤への刷新を検討していた。ペーパーレス化に取り組む背景には、コスト削減、およびコロナ禍におけるリモートワークの推進があったという。また、これまで紙を用いた請求書の作成や承認、郵送といった業務について、効率化を求める声も社内から上がっており、その改善が急務となっていた。
- 課題
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- 帳票基盤のリプレースに、既存基幹システムの改修範囲を最小限に抑制したかった
- 請求業務を電子化し、作成から郵送にかかる作業負荷やコスト、時間を削減したかった
- 解決策導入ポイント
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- SPAISによって、帳票印刷のためのインターフェースを統合、既存システムの改修を抑制
- invoiceAgent 電子取引の採用により、請求業務を電子化
- 業務理解が深い非IT部門女性社員の異動により、現場における実運用の解像度を高めた
- 効果
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- 大型センタープリンターから汎用プリンターへ移行、導入や保守運用費用を削減
- 帳票の電子化により、紙帳票の印刷、保管にかかるコストを削減するとともに、場所を選ばないチェック作業が可能となった
- 請求書の電子化によって、作成や郵送コスト、および作業負荷を軽減、発送までの時間も短縮化
業務変革の一環として、帳票基盤の刷新に着手
1948年、トヨタグループの総合商社として誕生した豊田通商。金属、グローバル生産部品、ロジスティクス、モビリティ、機械、エネルギー、プラントプロジェクト、化学品、エレクトロニクス、食料、生活産業といった幅広い事業領域においてビジネスを展開、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指している。
同社では2006年より多様な人材が活躍できる職場の実現づくりを推進しており「グローバルダイバーシティ&インクルージョン」の実現に向け、業務・仕組みを見直すハードと、働きがいや幸福度を高めるソフトの両輪を回しながら、従業員一人ひとりが自律と自立で豊かな個性を発揮、互いに影響し合いながらともに進化していくことができる職場環境づくりに取り組んでいる。今回の帳票基盤の刷新・統合システムもその好例で、非IT部門から異動した女性社員が経験豊富な、定年を間近に控えたシニアプロフェッショナルとペアを組みプロジェクト遂行をしている。
同時に豊田通商では、業務に変革をもたらし、ビジネスに新たな成長をもたらすためのIT基盤の強化や、デジタル活用も積極的に進めてきた。2019年には、同社や国内関連会社の共通基幹システムを刷新する一方、2020年4月には、「デジタル変革推進部」を設置し、全社横断ですべての事業と社内業務を対象に、434件のDXプロジェクトを進行させている。
IT変革による業務効率化の一環として、今回実施されたのが帳票基盤の再構築、および請求書のWeb配信だった。取り組みを加速させた背景には、大きく2つの理由があったという。1つ目が、老朽化していた大型センタープリンターの廃止に伴う汎用プリンターへの置き換え、既存の電子帳票システムや統合帳票管理システムの保守期間切れに伴うリプレースだ。そして2つ目の理由は、経営層からの強い要請によるペーパーレス化、およびコロナ禍におけるリモートワーク推進への対応である。
紙帳票を電子化し、コスト削減と業務効率化を目指す
帳票基盤の再構築について、IT戦略部 アプリケーション統括グループでグループリーダーを務める吉岡 良馬氏は、これまでの帳票運用と、浮き彫りとなっていた課題について次のように話す。
「『計上チェックリスト』と呼ばれる、社内の関係者が閲覧して押印して内部統制の証跡とする帳票を夜間バッチで出力していました。こうした社内向け帳票をはじめ、取引先への支払い案内書や契約書など、帳票類の印刷枚数は年間240万枚ほどに達していました」(吉岡氏)

IT戦略部 アプリケーション統括グループ プロフェッショナルパートナーの中川 敦氏も、「帳票群の配布や保管に関する費用、取引先などへの配送コストや作業負担も課題として膨らんでいました」と補足する。大型センタープリンター自体のリプレース、および保守・運用のコスト抑制も、帳票基盤再構築の理由となった。
また、コロナ禍におけるリモートワークの推進が急務となる中、紙帳票の電子化はすでに対応していたが、非常に使い勝手の悪いツールを利用していたため、電子化推進ができておらず、閲覧や承認に出社が必要となってしまうこともあり、改善が求められていたという。
こうした課題解決に向けて豊田通商が踏み出したのが、紙帳票の電子化である。電子帳票化によってPCなどから閲覧・承認を行えるようにすること、また、一部印刷が必要な帳票類についても、導入や運用費用が抑えられる汎用プリンターへ移行するという施策だ。
基幹システムの改修を回避しながら、帳票基盤を刷新
これらの要件を満たすソリューションとして、豊田通商が選択したのが、ウイングアークの業務アプリケーションの統合出力基盤「SPAIS」である。
「帳票基盤の再構築で最も重視した要件は、従来のBSP-RM方式に則ることが可能であり、極力、既存のシステムに影響を与えないことでした。一般に、帳票作成においてインターフェースが異なる場合、上流にあたるシステムを改修する必要があります。豊田通商は新基幹システムが稼働したばかりであり、数千本にも達するプログラムを再改修したり、テストしたりするような事態は避けたいと考えていました。しかし、SPAISは多種多様なインターフェースを吸収することが可能であり、システム改修が不要な唯一のソリューションだったのです」(中川氏)

また、帳票を配布する部門ごとに、印刷やアーカイブ、データ保管など、帳票の処理形態を柔軟に選択できること、豊田通商では以前よりウイングアークの帳票作成・運用ツールである「SVF」を利用していたことも、SPAISの導入を後押ししたという。

SPAISを活用した新帳票基盤の構築プロジェクトは2021年1月よりスタート、ウイングアークの導入支援のもと、同年9月には運用を開始した。この間、ウイングアークからのさまざまなサポートのもとで、導入プロジェクトをスムーズに進められたと、豊田通商の関連会社であり、同社のIT基盤の構築運用をサポートする、株式会社豊通シスコムのインフラ技術本部 ICT基盤技術部の中田 洋三氏は評価する。
「問題なく本番運用を迎えられるよう、ウイングアークからはPoCの実施を提案してくれました。これにより、早期の時点で障壁となりそうな部分を見つけ出し、解消しながら導入作業が進められました」(中田氏)。

吉岡氏も「何より、メーカーから直接サポートを受けられたことが一番大きいと思っています。プロジェクトの中で小さな不具合が発生した際には、製品自体を改修してくれたり、後続のバージョンで取り込んでくれたりするなど、ウイングアークの柔軟な対応には助けられました」と語る。
プリンターのリプレースコストを半減、紙帳票も2年後にはゼロを目指す
現在、豊田通商に加えて関連会社5社においても本システムが稼働しているが、基幹システムから出力される各種帳票データは、SPAISに取り込まれて仕訳が行われ、汎用プリンターでの出力とともにPDF化、電子保管されるようになっている。現場の担当者のチェック業務も、従来の紙ベースでの作業は一部残しながらも、 SPAISの帳票承認オプションを利用し、ワークフローシステムのように、チェック対象の帳票に対して承認依頼から承認というチェック業務をSPAIS上で簡易的に実現している。
SPAISによる新帳票基盤は、豊田通商に多くの効果をもたらしている。その1つはコスト削減だ。大型プリンターから汎用型プリンターに移行したことで、大型プリンタの保守費用年間3,000万円が半減した。さらに完全撤廃により2024年4月にはゼロになる目算が立ったという。
新帳票基盤の構築は、業務効率化にも直結している。中川氏は「SPAISを活用した新帳票基盤は検索性が大幅に向上されており、帳票の中から自分がチェックを担当する箇所のみをピンポイントですぐに表示させることができます。これまで帳票が50ページあったら、1枚1枚めくりながら自分が担当する部分を探してチェックしなければなりませんでしたが、導入後は煩雑な作業が不要となりました」と話す。

このほか、SPAISの導入をきっかけに社内で複数の種類が使われていた帳票設計ツールも「SVFX-Designer」に統合。利用するツールに合わせて、個別に帳票を設計するといった手間がなくなったほか、電子帳票のレイアウトも分かりやすく統一されるようになったことも効果として挙げられるという。
請求書の電子配信にも着手、さらなる業務改革を追求
SPAISの活用によって帳票基盤を刷新した豊田通商。次なる業務改革として着手したのが、請求書のWeb配信である。IT戦略部 アプリケーション統括グループ 岡田 祐子氏は、「ペーパーレス化の推進に伴い、請求書の電子化によるWeb配信の導入を検討していました。請求書も電子化することで、リモートワークの拡大にも貢献できると考えたのです」と説明する。請求業務の電子化には、リモートワークが進む中で社内からも要望が寄せられていたという。
「営業部門などから『取引先にすぐに送付したいのに、社内承認や押印に時間がかかる』『取引先が多いため、月末や月の始めは、請求書の作成から印刷、郵送まで作業が膨大になり、他の仕事への身動きがとれない』といった声が上がっていました。この課題を請求書の電子化とWeb配信により解決できると考えました」(岡田氏)

こうした背景から、豊田通商ではSPAISに続き「invoiceAgent 電子取引」を導入。SPAISとの容易な連携が可能であることが選定の決め手になったという。前述のSPAIS帳票承認オプションは請求書のWeb配信の業務にも組み込まれており、承認済みの請求書のみがWeb配信の対象となるような仕様とすることができる。また、電子帳票保管サーバー上で取引先単位に分割した請求書PDFに対しタイムスタンプを付与し、配信帳票の電帳法対応を行う。

2022年11月からスタートした「invoiceAgent 電子取引」導入プロジェクトは、2023年5月に完了している。現在、請求書出力の多い部門を社内から選出し、先行的に利用してもらっている段階である。
「invoiceAgent 電子取引を先行利用しているグループからは、『郵送からWeb配信に移行したことで、業務の負担が大幅に減った』などの高評価を頂いています」(岡田氏)
今後は、数千社の取引先に対して請求書の電子化を促していき、まずはWeb配信の割合として60%を目標に広げていきたいという。
受領帳票の電帳法対応への取り組みに向けて
豊田通商では2024年1月からの稼働に向けて、受領帳票の電帳法対応の運用を業務部門の準備が出来次第段階的に開始するという。
「宥恕期間の発表前に、急ぎ対応検討をしていたのですが多少余裕ができた、その期間に営業部門の特定グループなどと討議をしながら、帳票種別など対象範囲を定義している最中です。また格納してもらった受領帳票を基幹システムと連携し、支払い処理するフローを検討し始めています」(中川氏)
ウイングアークのSPAIS、およびinvoiceAgent 電子取引の導入により、帳票の電子化を進め、業務変革に邁進する豊田通商。同社の取り組みは、電子化によるペーパーレス化を検討する企業をはじめ、レガシーシステムからの移行に際して、コストや手間を最小限に抑えながら帳票基盤を刷新したいと考える企業にとって、注目を集めるものとなるだろう。
最後に中川氏は、今後の展望について次のように語った。
「引き続きSPAISと基幹系システムや他の業務システムとの連携を推進し、電子帳票化を拡大させていく計画です。また、この取り組みを豊田通商の関連企業にも広げていき、グループ全体としての業務効率化や、さらに生産性の向上を図っていきたいと考えています」(中川氏)
Company Profile
豊田通商株式会社
設立:1948年7月1日
所在地:名古屋本社(本店)
〒450-8575 名古屋市中村区名駅四丁目9番8号(センチュリー豊田ビル)
事業内容:各種物品の国内取引、輸出入取引、外国間取引、建設工事請負、各種保険代理業務等
URL: https://www.toyota-tsusho.com/

豊田通商株式会社
IT戦略部 アプリケーション統括グループ プロフェッショナルパートナー 中川 敦氏(写真右から二番目)
IT戦略部 アプリケーション統括グループ グループリーダー 吉岡 良馬 氏(写真一番左)
IT戦略部 アプリケーション統括グループ 岡田 祐子氏(写真一番右)
株式会社豊通シスコム インフラ技術本部 ICT基盤技術部 プラットフォーム技術グループ 中田 洋三氏(写真左から二番目)
導入製品
Sustainable Process Application Integration Service(SPAIS)
当社の各サーバー製品への処理やアクセス管理を統合する製品。Web APIやオプションを利用しユーザーは業務アプリからも帳票運用やデータ処理を実行可能。
invoiceAgent 電子取引
電子帳票の配信・受領を最適化する電子取引ソリューション。大規模な帳票配信やデジタルインボイスに対応。デジタル封筒を利用して取引先との帳票業務の効率化を実現。