
京セラ株式会社
MotionBoardを活用した実践型伴走教育で、200人超のデータ活用人材を輩出
過剰在庫削減など現場の課題解決に大きく貢献

- 製品
- 業種
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製造
生産効率の最大化を目指してスマートファクトリー化を推進している京セラ株式会社(以降、京セラ)は、収集したデータの価値を引き出せるデータ活用人材が不足しているという課題に直面。製造現場にはプログラミングスキルを持つ人材が少ないことから、「Excel」による手作業でデータ活用せざるを得ない状況で、スマートファクトリーの真価を引き出すことが難しい状況だった。そこで同社は、IT初心者を含む製造現場の技術者をデータエンジニアとして育成する独自の実践型伴走教育に着手。ウイングアークのデータ集計・分析ツール「MotionBoard」を活用することで、現場の課題解決を目的とした教育を実践し、IT初心者でも3ヶ月という短期間で成果を出す「Small Start Quick Win」を体現している。
導入背景
IoTセンサーなどを備えたスマートファクトリー化を推進する京セラでは、膨大なデータが収集・蓄積されているものの、そのデータを業務に生かせる人材が不足するという深刻な課題に直面していた。製造現場には、データベースを操作するSQLやデータの前処理・分析に使うPythonといったプログラミング言語のスキルを持つ人材が少なく、データを扱う際にCSVをダウンロードして「Excel」で手作業せざるを得ないなど、データを十分に生かし切れていない状況だった。
京セラでは、この課題を打開するため、製造現場の技術者をデータエンジニアとして育成し、IT部門に頼らず自ら課題を解決できる人材に変えるという取り組みに着手。従来の知識やスキル習得を目的とした教育ではなく、現場の課題解決を目的とした教育体系の構想が必要とされた。
- 課題
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- スマートファクトリーで収集した膨大なデータに対し、業務に生かせる人材が不足
- 製造現場のデータ活用がExcelでの手作業に頼りがちで、スマートファクトリーの真価を引き出せていなかった
- 従来の教育は「スキル習得」が目的であり、学んだことを現場で生かし切れていなかった
- 部材管理や原料調合など製造現場の業務が属人化しており、経験と勘に依存していた
- 解決策導入ポイント
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- 教育の目的を「現場の課題解決」そのものに設定し、製造現場の技術者をデータエンジニアとして育成
- データ活用基盤として、ウイングアークのデータ集計・分析ツール「MotionBoard」を導入
- 受講生は、研修で散在データを加工・整理しDBへ格納し、MotionBoardで可視化する一連のプロセスを実践
- 講師が密にサポートする実践型伴走教育により、IT初心者でもつまずきながら進めることを推奨
- 効果
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- 2021年4月のスタート以来、200人を超えるデータ活用人材を輩出
- 部材管理における過剰在庫を60%削減
- 原料調合業務の属人化を脱却し、データに基づいた判断を実現
- MotionBoardで作成された「卒業生ボード」を全従業員に公開し、個人の学びを組織全体の成果へと最大化
データエンジニア教育に向けた「現場の課題解決」というアプローチ
京セラでは、IoTセンサーを活用したスマートファクトリー化を進めているが、現場にはプログラミング言語などのスキルを持つ人材が少なく、データを十分に生かし切れていないなど、スマートファクトリーの進化を引き出すことが難しい状況だった。
そんな環境を打開すべく、製造現場の技術者をデータエンジニアとして育成し、IT部門に頼らず自ら課題を解決できる人材に変えるという取り組みに着手することに。「従来の教育は、知識やスキルを教える『スキル習得』が目的になりがちで、学んだことを現場でどう活かすかという点で課題がありました。そこで私たちの教育では目的を『現場の課題解決』そのものに設定したのです」とデジタルビジネス推進本部 デジタル人材育成部 デジタル教育戦略課 三木 伸一氏は語る。

直感的な操作性とデータ更新頻度が柔軟なMotionBoard
そんな現場の課題解決に不可欠な手法として選択されたのが、MotionBoardのダッシュボードで可視化するという、課題解決の一連のプロセスを実践することだった。
MotionBoardについては、「直感的な操作が可能なUIで、製造現場に必要な機能がそろっています。データ更新の頻度も変更可能です。特にリアルタイムに自動更新できる点は、PCを操作する時間がない作業者でも常に最新状況を把握できるため、業務の助けとなっています」と三木氏は評価する。こうした実用性の高さが、製造現場の技術者をデータエンジニアに無理なく育成する上で不可欠な要素だったという。
受講生は、研修前に現場で解決すべき課題をピックアップしたうえで研修に参加。集合研修では、基礎知識の座学に続き、Pythonなどを用いて散在するデータを加工・整理してデータベースへ格納、その結果をMotionBoardのダッシュボードで可視化。研修終了後も、受講生はリモートで講師に相談しながら修正を繰り返し、3ヶ月後の最終報告会で成果を報告するというものだ。「全くの初心者の場合は、講師がコードの作成を手助けすることもあります。コードの作成を少しでもやってみることで、段階的に理解が深まればいいという考えからです。最初から完璧なものを目指さず、つまずきながら進むことを推奨しています」と三木氏は話す。このような実践型伴走教育を通じて、受講生は本質的なデータ活用のための考え方が習得可能となっている。

過剰在庫を60%削減、機械学習による属人化脱却を実現
MotionBoardによる現場の課題解決プロセスの学びを加速させるなか、多くの成功事例が生まれている。その1つが、総務部を経てITを使った開発業務を担う現部門に異動した、半導体部品セラミック材料事業本部 生産技術開発1部 脇田 朱里氏が取り組んだ、部材管理における購入量の標準化だ。具体的には、MotionBoardを使って「在庫照会」と「発注履歴」画面を開発、在庫照会画面によって期限を軸に先入れ、先出し判断を容易にし、発注履歴画面を確認することで過剰発注を防止し、過剰在庫を60%削減することに成功している。

「製造現場から何度も修正要望が出てきたので対応するのは大変でしたが、MotionBoardは表現の自由度が高く、なんとかイメージを形にできました」と脇田氏は振り返る。要望を反映する過程では、製造現場の曖昧な要求を講師と一緒に明確にし、ウイングアークのサポートも受けてグラフの種類変更や表示方法の修正にて改善を実施。試行錯誤を通じて、MotionBoardの操作だけでなく製造現場の課題をデータで捉えてビジュアル化してアクションに結び付けるという、データ活用のサイクル確立を実現している。

MotionBoardによって、単なる採算改善という効果だけでなく、現場に気付きを促す意識改革につながっているという。また、データが可視化されることで、現場との活発な対話につながるなど、新たな社内文化を生み出す第一歩を踏み出せたことも効果の1つに挙げている。
さらに高度なデータ活用を実現したのが、製造現場の技術者である機械工具事業本部 第2生産技術部 安諸 奎汰氏が取り組んだ、切削工具の製造工程における素材の調合業務の標準化だ。経験と勘に依存していた素材の調合業務だったことから、完成後の製品特性にばらつきが生じており、ベテラン作業者が退職すると同じレベルの調合判断ができなくなるリスクがあったという。
「VLOOKUP関数さえ知らず、Excelでの単純な手作業をこなすレベル」だった安諸氏がプログラムに参加し、原料投入から最終検査までの一連のデータを管理するシステムを開発。散在していたExcelデータを集約してMotionBoardで調合内容と製品特性の関係を可視化し、属人的な判断を標準化することに成功した。「ヒートマップは、『一定ラインまでは青色』『一定ラインを超えたら赤色』に表示するといった表現が可能で、正常や異常を分かりやすく示せます。これによって生産過程のトラブルを早期発見できるようになりました」と安諸氏は語る。

その後も、データサイエンス教育を受講して機械学習による条件最適化に挑戦、調合伝票の内容や工程での値の変動、各配合比の影響度といった知見を基に最適な調合の条件を予測するモデルの構築にも成功している。「機械学習モデルから出る数値やログデータから調合の条件を決めるのは難易度が高いのですが、MotionBoardで可視化することで現場担当者でも出力結果を認識できるようにしました。運用を続けることで機械学習モデルの精度が次第に高まり、従来は気付かなかった改善のヒントが得られています」と安諸氏は評価する。

京セラ独自のデータ活用人材育成の核心は、現場の「やりたい」を「できる!」に変えるため、「現場の課題解決」そのものをゴールに設定し、講師が密にサポートする実践型伴走教育にある。IT初心者でも3ヶ月という短期間で成果を出す「Small Start Quick Win」を体現しているが、MotionBoardがこの人材育成プログラムに欠かせない存在となっている。
スマートファクトリーの進化を促す教育プログラムを支えるMotionBoard
2021年4月のスタート以来、現在では年間で100人近くが受講できる体制となっており、既に200人を超える卒業生が各事業部でデータ活用を推進している。卒業生による成功事例は、MotionBoardで作成された「卒業生ボード」で全従業員に公開されており、自分の課題に近い事例を閲覧できる。また、定期的な事例共有会や事業部を越えた勉強会も開催され、個人の学びが組織全体の成果へと最大化される取り組みも行われている。「この教育を全社に展開し、デジタルが“あたりまえ”の文化を創っていきたい」と三木氏は力強く語る。
現場の一人ひとりの「やりたい」を起点とするこの取り組みは、スマートファクトリーを進化させる原動力となっている。データを活用して人類、社会の進歩発展に貢献するという、京セラの経営理念の実現に向けた確かな一歩を、MotionBoardが強力に下支えしている。
Company Profile
京セラ株式会社
設立:1959年4月1日
本社所在地:京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
主な事業内容:情報通信や自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアなど4つの重点市場に向けた、ファインセラミックス部品をはじめとした大手電子部品・電気機器の製造販売
URL:https://www.kyocera.co.jp/
京セラ株式会社
デジタルビジネス推進本部 デジタル人材育成部 デジタル教育戦略課 三木 伸一氏(写真中央)
半導体部品セラミック材料事業本部 生産技術開発1部 脇田 朱里氏(写真左)
機械工具事業本部 第2生産技術部 安諸 奎汰(写真右)
導入製品
MotionBoard
様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。




