
ヤンマー建機株式会社
数千種もの多品種生産を支える生産計画
生成AI×業務アプリで工数半減と暗黙知脱却を実現

- 製品
- 業種
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製造
ウイングアークのデータ活用プラットフォーム「MotionBoard」やデータ分析基盤「Dr.Sum」を利用し、全社的なデータ統合・活用を進めてきたヤンマー建機株式会社(以降、ヤンマー建機)。社内のシステムデータから個人管理していたExcelデータまでをDr.Sumに集約し、MotionBoardによる現場主導の可視化を推進しており、今では利用者が500人を超えるまで社内浸透している。そして、同社が次なるDXの一手として進めているのが生成AIの活用だ。生成AIを搭載したMotionBoardの新バージョンをいち早く活用し、生産計画策定の効率化に着手した。PoCを経て早くも作業時間の削減効果が出ており、属人化解消に向けた一手が見えてきた。
導入背景
- 課題
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- 多品種生産に対する複雑な組み合わせに対応した生産計画策定の効率化
- 変更要求が発生した際にも柔軟かつ迅速に計画を組み替えられる仕組みの実現
- 高度なスキルを要する生産計画の策定における属人化の解消と人材の育成
- 解決策導入ポイント
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- 「MotionBoard」の新バージョンの特長である生成AI機能を活用
- 「AIウィジェット」によりインタラクティブにダッシュボードを生成
- 生産計画シミュレーションの自動化や直感的な並べ替えなど、BIツールの枠を超えた「業務アプリケーション」としての活用
- 効果
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- 5〜6時間を要していた日々の生産計画の策定時間が半分以下に短縮
- 生産計画策定の前準備に要する作業も不要となり、業務全体の効率が飛躍的に向上
- 言語化が困難だった熟練者のノウハウが形式知化され、属人化の解消を支援
ウイングアークの支援のもとDXを推進、生成AIの本格活用にも踏み出す
1912年に創業し、農業機械や建設機械、小型船舶、小型産業用エンジンなどの開発・製造・販売で知られるヤンマーグループ。ヤンマー建機では、油圧ショベル・ローダーなどの小型建設機械を主軸とした製品の開発・生産・販売・アフターサービスを行っている。日本全国に35の拠点をもつだけでなく、世界各地にも拠点・工場を構え、グローバルでビジネスを展開している。
同社は早くからDXに取り組んでおり、2020年以降、ウイングアークのデータ活用プラットフォームの「MotionBoard」、データ分析基盤の「Dr.Sum」を軸に、全社的なデータ統合と活用を推し進めてきた。2022年にはAIプラットフォームの「dejiren」を採用し、生成AIを利用した業務フローの見直しや作業の自動化にも踏み出している。
そして今回、ヤンマー建機は生成AI機能を搭載した新バージョンのMotionBoardを活用し業務改革に踏み切った。PoCの一環として、生成AIを利用した生産計画策定の自動化を目指して取り組みを進めてきた。
グローバルな顧客ニーズに応えるため、製品の多様化や多品種生産が加速
人手による生産計画の策定が限界
製品製造において、設備や人員などのリソースを最適に割り当て、工程を定める生産計画は、現場の稼働効率を最大化させるために不可欠な業務だ。ヤンマー建機では、生産計画の策定に関していくつかの課題が浮き彫りとなっていた。
その1つが、計画策定プロセスの複雑化だ。ヤンマー建機の強みは多品種小ロット生産であり、製品仕様は海外向けを含め約7,000種に上る。これまで、これらの膨大な仕様を顧客の要望に合わせながら組み合わせて生産計画を立案してきた。生産管理部 生産管理課の古賀 昭二氏は、「生産計画には、多くの制約条件が存在します。例えば、『ある仕様の組み合わせ、工程順で製造ラインに投入すると高負荷が発生する』『逆にラインの負荷が低い場合、生産効率が落ちる』といったものです。これらの制約を踏まえながら生産計画を策定するのですが、その判断は言語化しにくく、長年の経験と知識を頼りに頭の中でシミュレーションを行いながら計画を作ってきました」と話す。

具体的には、Excelシートを用いて機体ごとの仕様に色を付して色彩で判別し、その都度手作業でコピー&ペーストを繰り返して、順序を入れ替えるなどの作業を行っていた。この作業には、熟練者である古賀氏をもってしても毎日5~6時間以上の作業時間を要していたという。さらに、今後も製品の多様化、仕様の増加が予測されるなかでは、人手による計画策定は限界に達していた。
もう1つが、市場環境の変化への柔軟な対応だ。営業部門から製品の仕様変更に関する要求が発生した際にも、柔軟かつ迅速に計画を組み替えられる必要性が高まっていた。生産管理部 部長の山崎 博氏は、「生産側が理想とする平準化生産に対し、営業部門からの要望に応じて見込み生産を行った場合、時には需給のアンマッチが発生するリスクがあります。その結果、在庫過多を引き起こし、経営を圧迫する要因となりかねません」と語る。また山崎氏は、「生産の効率化を維持しながらも、営業部門からの仕様変更の依頼にも柔軟に対応できる。そうした生産計画の策定の実現が急務の課題でした」と付け加える。

さらに、属人化の解消も急務だった。生産計画を立案できる担当者が限られており、同時に休暇を取得できないといった弊害も生じていたという。課題解消には専門スキルをナレッジ化し、継承・管理する必要がある。こうした取り組みにより、人材育成も可能となるほか、担当者のワークライフバランスも確保できるようになる。
「MotionBoard」で生成AIを活用した生産計画策定の自動化へ挑む
これらの課題解決に向けて、ヤンマー建機が着目したのが生成AIの活用だった。長年にわたってMotionBoardを活用してきた同社は、最新バージョンに生成AI機能が搭載されるという情報を受け、2024年1月よりリリースに先駆けて行われたトライアルに参加した。
経営戦略部 イノベーション推進部 部長の田中 重信氏は、「社内の部門・部署が抱える深刻な『困りごと』には、それを解決するプロジェクトが必要と思案していました。そうしたなか、生産管理部から生産計画の自動化・改善について相談を受け、MotionBoardで解決できるのではないかと考えたのです」と振り返る。

生産計画策定の効率化では、スケジューラーの導入も検討の選択肢になるだろう。しかし、BOM(部品表)やBOP(製造プロセス表)といったマスタ情報の整備など、高度なノウハウが必要となる。また、導入や運用のハードルも極めて高く、外部のSIベンダーに依頼した場合、費用が高額になってしまうケースも少なくない。
「MotionBoardであれば、既存のデータやノウハウを活かしながら、生成AIを用いて柔軟かつ低コストに課題解決を図れると期待しました」と、田中氏は振り返る。
山崎氏も「今回、生産計画策定を改善していくにあたり、最初に懸念したのは、『プログラムを組み上げるのに高度な知識が必要になるのではないかということでした。しかし、詳しく話を聞くなかで、新バージョンのMotionBoardは生成AIを用いた生産計画の策定に高度なプログラム知識などは不要と分かり、ひと安心しました」と話す。
ウイングアークと足並みを揃え、MotionBoard AI機能のPoCを推進
PoCでは、生産制約や注意事項をプロンプトとしてAIに入力し生産計画の素案を自動で作成し、それをMotionBoard上で人が最終調整するというアプローチが採用された。
具体的には、すでに導入していたRPAとMotionBoardを組み合わせたプロトタイプを構築するものである。まずは生成AIを使って生産計画のベースを自動作成し、その後検証を兼ねて人手による順序の並べ替えを行う。PoCでは、生産制約をプロンプトに落とし込む作業や、ドラッグ&ドロップによる操作性を実現するためのMotionBoardの画面作りなどが進められた。こうした作業はウイングアークによる支援とともに行われた。
なお、ここまでの取り組みはヤンマー建機内では、「フェーズ1」に位置付けられており、2025年10月にはすでに完了している。現在は「フェーズ2」として、既存RPAを介さず、MotionBoardおよびDr.Sum、dejirenといったウイングアーク製品群のみで、生産計画策定における生成AI活用を完結させることを計画している。
今回、生成AIが搭載されたMotionBoardのもう1つの強みには、UI/UXの圧倒的な向上がある。これはPoCを通じて、ヤンマー建機が評価している点の1つだ。例えば、開発者の視点では、「AIウィジェット」により生成AIへの指示を通じて画面やチャートアイテムを自動生成できるようになった点が大きなメリットといえる。また、業務ロジックを組むことができる「フロー機能」により、複雑なデータ処理を行えるのも特筆すべき点だ。さらに、AIウィジェットは入力フォームを含めた画面作成も可能で、業務アプリケーションに近い仕組みを作り上げることができる。
機能の強化によって、新たなMotionBoardはまさにBIツールの枠を超えた「業務アプリケーション」としての性格を強めている。「専門的なJavaScriptのスキルが必要だった高度なカスタマイズも、AIの支援やフロー作成ボタンの改善により、ノーコードに近い形で実現できるようになりました。これにより、市民開発のハードルをさらに下げられると期待しています」(田中氏)
一方、利用者側のメリットは、より操作性が高まったことで、作業の負荷を大幅に削減できたことだ。ドラッグ&ドロップでデータの並べ替えが直感的に行える点はその一例である。古賀氏は、「MotionBoardはドラッグ&ドロップで必要な項目を入れ替えるだけで生産計画策定の作業が済んでいます。こんな簡単にできるのかと驚きました」と振り返る。


生産計画策定の時間がこれまでの半分以下に。
経営層からも高い評価を獲得
MotionBoard の活用により、フェーズ1の時点において、ヤンマー建機の生産計画策定のプロセスは劇的に変化した。基本的な生産工程のほか、オプションの情報、生産制約を生成AIにプロンプトとして入力する。「さらに、生成AIからの回答に対して、担当者が気づいた点を修正コメントとして加えることで、より情報が精査されるようになります。これにより、従来は言語化しにくかった微細なノウハウまでも蓄積できています」(田中氏)
ヤンマー建機では、生成AIが導き出す答えには100%の正解を求めていないという。「生成AIには完璧を求めておらず、6~7割程度の正答率に対して、残り3〜4割を人間が手直しする、といった進め方を基本方針として定めています。それでも大半の作業は自動化されるとともに、残りの作業も操作性の改善によって大幅に効率化されているので、MotionBoard 活用の効果は大きいと考えています」と田中氏は説明する。
また、古賀氏も「生成AIが導き出した答えには、これまでの自分のやり方とは異なるケースもあります。それが自分にとって新たな気づきになることもあり、今後に向けたさまざまな示唆を受け入れながら進めています」と語る。
新たなMotionBoardによって、ヤンマー建機の生産計画策定のプロセスが大きく変化したことで、どのようなメリットがもたらされたのか。その1つが作業時間の短縮だ。これまで生産計画の策定にかかっていた時間が、現在では半分以下に短縮されているという。古賀氏は「さらにExcelへの手作業による色付けやデータの整形といった計画策定の前準備の作業も不要となり、業務全体の効率が飛躍的に向上しています」と評価する。
作業時間の短縮によって、古賀氏の負担が大幅に抑制されたことも大きな効果だ。山崎氏は「後工程引取り推進プロジェクトのリーダーとして、古賀氏の本来のミッションである現場の業務改善と若手のサポート・育成にも注力できるようになっています」と話す。
そして今後、言語化しにくかった熟練者のノウハウがプロンプトとしてさらに形式知化されれば、新人でも生産計画の策定に携われるようになると期待されている。
今回の取り組みは、マネジメント層からの評価も非常に高い。田中氏は「DXの取り組みに関する社内発表会でも、本プロジェクトは経営層をはじめ社内からも高い評価を獲得しています」と語る。
ヤンマー建機では現在フェーズ2への移行を進めるとともに、MotionBoardによる生産計画策定の仕組みを海外工場に展開することも検討している。また、生産計画だけでなく、MotionBoardの利用をサプライチェーン全体へと広げていくことも将来構想の1つだ。例えば、台風や大雨によって物流が停止した際、現在の部品在庫情報と納期、工場の稼働状況を生成AIが総合的に判断し、最適な代替計画をリアルタイムで導き出すといったものである。
「そのためには、MotionBoardで作成した在庫管理ボードと生産計画ボードがシームレスに連携し、部門を横断したデータ活用をさらに推進していくことが必要です。ウイングアークにはそのための支援を期待しています」と田中氏は語る。
データの可視化ツールとして、長年にわたって多くの企業や組織の戦略的な意思決定をサポートしてきたMotionBoard。新バージョンのMotionBoardは、AIとの融合により従来のBIツールの枠組みを大きく超えて、データ活用の可能性を広げている。
昨今、AI利用が企業や組織に急速に浸透する一方で、文書の要約や情報収集の効率化など、チャットベースでの利用にとどまることも少なくない。ヤンマー建機のケースが示すように、AIとデータ活用を組みあわせ、経営やビジネスに直結する成果を導き出すためには、業務プロセスにおける課題の抽出と解決目標の設計が不可欠となる。既成概念に捉われることなく、先進的なチャレンジに踏み出したヤンマー建機の取り組みに期待が集まる。
Company Profile
ヤンマー建機株式会社
設立:2004年7月21日
本社所在地:福岡県筑後市大字熊野1717番地-1
主な事業内容:油圧ショベル・ローダーなどの小型建設機械、発電機・投光機などの汎用製品の開発・生産・サービス・販売
URL:https://www.yanmar.com/jp/about/company/construction/
(写真左より)
経営戦略部 イノベーション推進部 田中 重信氏
生産部 生産管理部 生産管理課 生産計画係 古賀 昭二 氏
生産部 生産管理部 部長 山崎 博氏
導入製品
MotionBoard
様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。




