
ビジネスのネックとなっていた老朽化したITインフラを刷新
液体や気体の流れる量を測定する流量計には、毎分数ミリリットルの微少流量から毎時数万立方メートルの大流量に対応するものまで多種多様なタイプがある。社会のさまざまな装置やインフラを支えるセンサーとして、その用途は食品・飲料水・酒類の製造、自動車の製造工程、ガソリンの製油所、化粧品製造、空港の燃料給油、発電所、医薬品製造、半導体製造など、国内外のあらゆる産業に広がっている。
こうした流体計測機器の専業メーカー国内最大手であるオーバルは、製造や販売の拠点を米国や中国、東南アジアへと広げている。
だが、ビジネスのさらなる発展を進めるうえでのネックとなっていたのが老朽化したIT インフラだ。同社 情報システム室の室長を務める小熊 仁氏は、「ホストコンピューターは約35年間にわたって脈々と使い続けてきたもので、そこにつながる各システムも部門ごとに個別最適で構築・管理されていました。全18システムが37台のサーバーに分散し、運用が複雑化していました」と話す。この硬直化したIT インフラは、販売系と製造系のシステム間で情報が分断され、営業・事務業務の効率化を妨げており、「紙をベースとしたワークスタイルからなかなか脱却できずにいました」と小熊氏は振り返る。
この状況を抜本的に改善すべく、同社が動いたのは2014年7月のことだ。ホストコンピューターのEOL(保守終了)が3年後に迫ったのを機に、IT インフラの刷新プロジェクトをスタートしたのである。そして、富士通の営業管理システム、生産管理システム、原価管理システムを中核とする全社統合インフラを構築し、2017年4月より運用を開始した。
そして、この全社統合インフラのデータウェアハウスとして、各業務システムで処理される膨大な情報の一元的な蓄積および活用を担っているのがウイングアークのDr.Sumである。同社 情報システム室の檜山 隼人氏は、「Dr.Sum のフロントエンドとしてMotionBoard を、さらに電子帳票システムとしてSVFを連携させることで、現場部門へのリアルタイムな情報提供をシンプルな形で実現しました」と話す。
MotionBoardとSVFを柔軟に使い分け
全社の帳票作成・発行を一元化
数あるBI ツールの中で同社がDr.Sumを選んだ最大の理由は、情報の全社展開の必要性にある。
「今回刷新された基幹システムのデータを必要とするユーザーは、営業を中心に製造、サービス、財務経理などあらゆる部門をまたいだ200~300名に及びます。ユーザー数に依存せずサーバーライセンスで利用できるDr.Sumは、運用コストの観点からも私たちの利用形態に最もマッチしていました」と檜山氏は語る。
具体的に同社は、Dr.SumをはじめMotionBoardやSVFといった一連のツールをどのように活用しているのだろうか。先述の営業管理システム、生産管理システム、原価管理システムで処理される多種多様な業務データは、Dr.Sum Connectを介して帳票イメージに沿った形に加工・変換され、Dr.Sumに集約される仕組みだ。
このデータをMotionBoardで閲覧するわけだが、通常のダッシュボード形式ではなく帳票出力オプションを利用して、あえて集計表(明細展開)形式のExcel レポートを作成・出力しているのが大きな特長となっている。
「例えば、営業担当者が今期の自分の売上実績を商品や顧客ごとに検索・集計し、Excelシートに展開して二次加工するといった使い方がメインとなります」と檜山氏は語る。
一方、見積書や納品書、請求書など社外向けの帳票は、指定された項目やフォーマットにあわせて作成する必要があり、こちらのデータ加工および出力についてはSVFを利用するというのが基本的な使い分けとなっている。
同社 情報システム室の課長を務める高橋人史氏は、「今回のインフラ刷新にあたり各部門に対して、従来のような個別システムでの帳票作成・発行は今後一切認めないと通達しました。この基本方針を徹底できたのは、MotionBoardとSVFを連携させた柔軟な帳票対応のおかげといって過言ではありません」と語る。
Dr.Sum、MotionBoard、SVFで構成されたBI 環境の導入に伴い、システムごとにベンダーに依頼していた帳票作成の自社内製化が促進され、帳票開発、メンテナンスコストの削減にもつながっている。
あらゆる部門や拠点で活動する従業員のデータに対する感度を高めたい
全社統合インフラへの移行に伴い、同社は実際にどのような業務効率化を実現したのだろうか。高橋氏によると、インフラのシンプル化により「年間IT システム費用28%削減」を実現するほか、「営業・事務業務の工数20%削減(価値時間10%向上)」「生産BOM(部品表)の管理工数10%削減(約400時間)」「情報の一元管理化により月次原価確定のリードタイムを約2日間短縮」といった効果を上げている。
さらに、Dr.SumおよびMotionBoard、SVFで構成されたBI 環境にも言及し、「工数削減の効果は全社トータルで年間2,400時間に達します」と高橋氏は強調する。
「これらのBI ツールの使い方について、特に情報システム室として説明会や講習会などを実施したわけではありませんが、直感的に操作を理解できることから各部門で自発的に利用が広がっていきました。また、ユーザーから新たな項目を追加してほしいというリクエストを受けた場合も、Dr.Sum側でビューを修正すれば即時にMotionBoardに反映されるため、コストも時間もかけずに対応できます。こうした使い勝手の良さが、絶大な工数削減の効果に結び付いたと考えています」と檜山氏は評価する。
もっとも、同社はこれで満足しているわけではない。今後に向けて目指しているのが全社的なデータ分析力の強化である。
「社内ポータルからMotionBoardにSSO(シングルサインオン)でアクセスできる仕組みをすでに構築しており、あらゆる部門や拠点で活動する従業員のデータ(数値)に対する感度を高め、洞察を促したいと考えています。また、マーケティング部門におけるアドホックなデータ操作による顧客分析、経営者が求めるKPI (重要評価指標)のリアルタイムの可視化など、用途別のダッシュボードも順次整備していきます」と小熊氏は構想を示す。
インダストリー4.0(第四次産業革命)やデジタルトランスフォーメーションといったキーワードに象徴されるように産業界全体が大きな変革を迎える中で、同社はデータドリブンのビジネスを強化することで新たな価値を提供していこうとしている。






