
“攻め”と“守り”のITを両立させる 次世代標準フレームワークの一括整備に着手
マツダは、「広島の発明を世界の喜びに」のもと「世界中の自動車メーカーが驚くような革新的なベース技術を搭載したクルマをつくる」ことを目指し、全社一体となった「モノづくり革新」を推進している。そしてこの取り組みと歩調をあわせ、情報システム部門も「ITモノづくり革新」を掲げたチャレンジを開始した。同社 MDI & IT本部 サプライチェーンシステム部 主幹の粟根 芳樹氏は、「経営計画の実現を支える“ 攻め” のITとして、モバイル、IoT、AIといった最新技術を活用し、ビジネスに変革を起こしていきます」と語る。
一方、“ 守り” のIT の領域に目を向けてみると、過去30~40年にわたって積み重ねてきたメインフレーム系システムや分散系システムなど、大規模なレガシーシステムのライフサイクル対応に多大なリソースを費やしているのが実情だ。加えて高齢化したメインフレーム系技術者の退職により、ナレッジやノウハウが維持・伝承できないという課題に直面している。
このままでは老朽化したこれらのシステムが、経営のリスクとなってしまう恐れもあった。そこでマツダが着手したのが、“ 攻め”と“ 守り”のITを両立させる次世代標準フレームワークの一括整備である。アプリケーションごとに個別実装していた機能のうち、共通性の高い処理パターンを規格化・部品化し、この標準フレームワークから提供することで、すべてのプロジェクトで組み合わせて利用できるようにするというものだ。
さらにマツダは、新帳票基盤もまた標準フレームワークの一部として位置づけ、アプリケーションと同様に「作る」から「選ぶ」へとスタイルを転換したカタログ選択型開発を推進していくという方針を策定した。
実際にその背後では帳票システムに関して、どんな課題を抱えていたのだろうか。
各システムは個別に様々な帳票ツールを使用しており、全体の整合性を取るのが困難だった。また、定義やオーバーレイを各プラットフォームのプログラムでコーディングして作成している帳票も存在し、開発やメンテナンスに多大な工数を費やしていた。そもそも帳票の定義データ自体やその帳票システムのノウハウがブラックボックス化し、製品依存から脱却できないという事情もあった。「アプリケーションシステムの帳票に関するシステム開発においても個別最適のツールを導入するのではなく、開発生産性を考慮した上で機能ごとにパターン化、部品化を進めていきます。標準化のコンセプトを導入することで、利用者と開発者の双方の生産性を高めたいと考えました」と粟根氏は、その狙いを示す。
様々な業務アプリケーションシステムで新帳票基盤の活用が進む
SPAISを用いて再構築した新帳票基盤は、すでにいくつかの実業務で活用されている。代表的な活用事例を紹介しておこう。
Case 1:海外認証対応
海外拠点における自動車の認証関連書類(日本でいう車検証と同等)には車両の詳細なスペックが記載されている。1枚の帳票に書き出す情報量が非常に多いため文字が細かくなり、現状の仕組みではフォントがつぶれて非常に読みづらくなるのが課題だった。新帳票基盤を最初に適用したのがこの業務である。メインフレーム系システムの既存資産を再利用して開発工数を抑制しつつ、帳票の可視性を向上することを目指した。結果として、細かい文字でも高い可視性を確保した帳票をPDFファイルとして保管して提供できるようになるとともに、利用面では新帳票基盤が提供する標準の画面で利用できるようになった。
「海外のユーザーが、インターネット経由で目的の帳票を直接検索・閲覧・印刷できるようになり、日本の担当者を介することも少なくなりました。これにより国をまたいだ作業負荷の低減とリードタイムの短縮を実現できました」(粟根氏)
Case 2:インボイス帳票への適用
インボイスとは、マツダが自動車を海外に販売する際に、相手国の販売会社に対して作成送付する送り状だ。売主が買主にあてて発行する船積貨物の明細書であり、商品名や数量、契約条件、契約単価、契約代金の支払い方法などが記載されている。また、各国の輸入通関などのレギュレーションに合わせて、細かく記載内容が定義されている。
こうしたことからマツダの完成車の輸出用インボイスの出力パターンは、工場(4拠点)×出荷国(約160ヶ国)の膨大な組み合わせの数となる。一部は共通パターン化しているものの、国ごとのレギュレーションの違いがあり、法規要件の変更対応についても個別のプログラム改修が必要となる。この結果として似て非なる多数の帳票が乱立していた。
そこで新帳票基盤を活用することで、これまで個別対応を行っていたインボイスシステムのプログラム統合を推進することとした。同時に帳票デザインの共通パターン化による管理対象帳票の削減、帳票デザインの表現力向上を目指した。
これにより、帳票作成のために費やしていた開発工数を大幅に削減することができた。
「柔軟な帳票デザイン部品が用意され、帳票レイアウトの共通化による出力パターンの絞り込みにも目途が立ちました。また新帳票基盤は社内標準のITサービスと連動して利用することが可能であり、ユーザーは単一のシステムを操作する感覚で、インボイス関連の業務も完結できるようになりました」(同社 MDI & IT本部 サプライチェーンシステム部 山﨑氏)
Case 3:物流系基幹システムへの適用
マツダの物流拠点に設置している多数のプリンターを制御し、大量の帳票を利用している物流系基幹システムの再構築では大きな開発費および運用費が課題となっていた。
そこに新帳票基盤を活用することで、個別展開していたアプリケーションの開発費および運用費を削減する。また、様々なプリンターや用紙の種類に対して最適な運用、工場のラインスピードに合わせた印字など、現場ニーズに対応した帳票出力をサポートしていく。
「この構想に基づいて実現したサービスの1つが、物流現場のプリンターへの直接出力です。新帳票基盤の管理画面で流通センターのプリンターをリモートプリンターとして定義しておけば、各現場のアプリケーションから出力指示を行えます」(同社 MDI & IT本部 サプライチェーンシステム部 喜多村氏)
10年先を見据えたマツダの標準プラットフォームとしてグローバルな業務で利用シーンを拡大
次世代標準フレームワークの一環として、新帳票基盤は業務領域ごとに分散していた帳票の統合を大きく前進させた。福山氏は「帳票にまつわる開発、運用、利用のあらゆる作業を全体最適化することで、負荷軽減やサーバー台数の削減を図り、ひいてはITモノづくり革新の推進にも貢献しています」とここまでの手応えを示すとともに、サポートにあたったウイングアークに対しても「タイトな構築スケジュールの中、製品の仕様に関する問い合わせやいろいろな課題などにも非常にレスポンスよく対応していただきました。おかげでほぼ予定どおりのスピード感でプロジェクトを進めることができました」と評価する。
もっとも、新帳票基盤への統合および活用に関する取り組みは緒に就いたばかりであり、今後も販売会社領収書管理システムやグローバルサプライヤーネットワークシステムなど、様々な業務システムへの適用・拡大を控えている。
「今回構築した新帳票基盤は10年先を見据えて構築しており、今後もマツダの標準プラットフォームとして利用シーンを拡大していきます。これに伴いキャパシティー不足が起こることも予想されますが、SPAISによる柔軟なスケールアウト対応に期待しています」と福山氏は語る。
その先では、電子データ保管機能の向上、海外拠点のユーザーを含めた帳票設計やデータ抽出におけるオペレーション環境の改善、ワークフロー連携およびペーパーレスの推進、スマートデバイスへの対応など機能面での拡張も見据えている。マツダでは、SPAISを最大限に活用することで、新帳票基盤のさらなる進化を図っていく計画だ。
※2022年6月より「SPA」および「SPA Cloud」は「invoiceAgent 文書管理」「invoiceAgent AI OCR」に名称を変更しました。
現在はSVF ArchiverおよびSVF Transactに名称変更しています。






