
日々増え続ける膨大な情報
商品データ管理の再構築への試み
1869年創業という歴史を持つ丸善は、早くから海外の思想や技術に目を向け、書籍をはじめとするさまざまな文物の輸入事業により、日本文化の近代化へ貢献してきた老舗企業だ。
書籍、文具雑貨の店舗というイメージが定着している丸善だが、創業して間もなくから大学への書籍を販売する事業を展開しており、現在では大学経営のソリューションを提案している。洋書・和書などの販売をはじめ、企業・官公庁などへ向けた外販や出版事業といった、学習・知識・生活文化の向上を目的とした事業を中心に、幅広い分野でビジネスを展開している。丸善では、全国に約50店舗(内POSレジを導入店舗は約30店舗)を有する店舗事業において売上や在庫などのデータを商品管理に活かすため、1997年、店舗向けにPOSレジを導入。さらに、POSで収集したデータを経営戦略に活用するべくデータウェアハウスを構築し、OLAPツールを導入、運用を開始して一定の効果を上げていた。
しかし、導入後5年余りが経過した頃、次第に社員から「データが表示されない」という不満の声が上がり始めたのである。その原因は、日々増え続ける膨大な量のデータにあった。書籍や文房具など点数の多い商品を扱う性質上、年間1億件ものデータが蓄積され続けることとなり、その結果、ツールの処理能力が追いつかなくなっていたのだ。
丸善・店舗事業部データセンターの責任者である石塚氏は、当時の状況をこう語る。「日別の売上などはまだしも、2年分などの長期的な分析となるとボリュームが大きすぎてデータが表示されないのです。そのため、例えば3ヶ月ごとにデータを抽出し、分析用にExcelでわざわざ加工し直す作業が必要でした」
そこで丸善では2003年、このデータ分析の際にかかる作業負担を解消するため、リアルタイム集計が可能なPOSレジへの切り替えを機に、データの分析ツールについても再検討を開始した。
スピード・コスト・操作・拡張性山積する課題に全て応えたDr.Sum
データ分析ツールの再検討に際しては、それまで利用していたOLAPツールを含め幾つかの候補が挙がっていたが、最終的にDr.Sum EA導入に至った理由について、石塚氏は次のように語る。
「弊社が当時想定していたユーザー数は1000人規模、クライアント数に応じて課金されるツールではコスト面が懸念される。その点、サーバーライセンスのDr.Sum EAなら安心ですし、開発費用を含めても前システムに投じた初期費用の10分の1程度で済むことも大きな魅力でした。また、実際に使ってみて一番驚いたのはそのスピードの速さ。今までは何分、何十分とかかっていたデータ抽出が、数秒で瞬時に表示される。待ち時間はほとんどありません。これならシステム側の負担も大きく解消されると考えたのです」
以前は分析データをリクエストしても社内のシステム部門では即応できないという状況から、Dr.Sum EA導入後は、誰でも必要な時に必要なデータをすぐに閲覧、分析できるようになり、業務の生産性向上にも役立っているという。
また、当時丸善ではPOSがリアルタイム対応になったことで、より迅速な商品管理ができるようデータ抽出作業を店舗側に任せるという新しい動きがあった。そのため、ユーザー数や店舗数の変化などにも柔軟に対応できる、優れた拡張性を備えたDr.Sum EAはまさに求めていた条件を兼ね備えた分析ツールだったのである。Dr.Sum EA導入当初は、エンドユーザーに情報を開示するという新しい試みに対してユーザー自身のPCスキル不足が懸念されたが、徹底したユーザー教育に加え、トラブルを最小限に抑えるための操作手順を組むことでその課題もクリアした。PCに不慣れなユーザーでもノンプログラミングで簡単に分析インターフェイスをカスタマイズできる、というDr.Sum EAの特長が、スムーズな運用につながった。
業務効率化と営業支援、“守り”と“攻め”のデータ活用
その後、店舗展開のさらなる拡大を想定して、Dr.Sum EA Enterpriseを中心にDr.Sum EAシリーズを本格的に導入。前日売上などの短期的な帳票だけでなく、在庫管理や予算管理などの中期的な帳票も作成・運用することで分析のバリエーションが増え、より多彩なデータ活用が可能となった。その成功事例として、石塚氏はDr.Sum EA Visualizerを利用した出版社向け販促ツールMCS(※1)についてこう語る。「MCSは、書籍ジャンル別シェアのグラフや、新商品の売行状況など、弊社が保有する商品データを出版社側がオンラインで自由に検索・閲覧できるサービスです。日次の最新売行状況を必要な時にすぐ確認できると、高い評価をいただいています」
現在、MCSを利用している企業は約80社、今年度中には150社に導入される予定。MCSは出版社へのサービス提供という側面だけではなく、丸善側においてもメリットがあるという。ひとつは、販売・返品の加減を、担当者自身の経験則や勘に頼らずに済む点だ。MCSのデータを閲覧した出版社から店舗担当者へさまざまな意見や要望がフィードバックされるため、その情報に基づいた販売戦略の練り直しなどが速やかに行え、販売機会のロスを抑制できるのだ。また、MCSの提供により出版社との営業コンタクトが増えることで、人気書籍を優先的に確保でき、商品調達の円滑化も目指せるという。
「出版社向けサービスとしてのMCSと、社内向けの分析帳票として見ている情報は、基本的には同じです。その同じ情報をもとに、店舗担当者は販売管理を行い、本部は分析や営業に利用し、出版社は自由検索で閲覧する。ひとつのデータを無駄なく有効に活用できる仕組みができてきました」(石塚氏)また、データ活用を進める過程のなかで、ナレッジの共有に対する社員の意識も高まっていった。例えば、店舗の営業推進部門から各店舗へ販売戦略の指示があった場合、店舗担当者は関連データを参照することで、戦略の本質を的確に把握した上で販売計画を展開できる。つまり、店舗の営業推進部門と店舗で同じ情報を共有しつつ、各々が即座にデータを欲しい形で見ることができるという環境が、情報に対する認識をすり合わせるのに大きく貢献しているのだ。
全社的なデータ活用で顧客満足のさらなる高みを目指す
店舗業務の標準化とデータ共有基盤が確立し、今後は、店舗における業務プロセスのさらなる効率化に加え、出店計画やお客様サービスといった方面へもDr.Sum EAの活用範囲を拡大させていく予定。「弊社では、来店したお客様自身が欲しい商品をスピーディに検索できるMサーチ(※2)という端末を各店舗に設置していますが、こうした情報提供もお客様サービスの一環です。また他にも、売上や在庫数、お客様の属性情報などこれまでに蓄積されたデータベースをもとに、お客様のニーズに応じたさまざまなサービスをご提供していきたい」(石塚氏)
試験運用を繰り返し、2007年2月に事業部内の本格稼動が開始した。かつて、業務に大きな負荷をもたらしていた膨大なデータベースは、Dr.Sum EAの導入により、業務効率化・営業支援・顧客満足度の向上などといった、さまざまな経営課題の解決に貢献する“生きた”データベースとして生まれ変わった。
そして丸善ではいま、より精度の高い商品管理プロセスやデータマイニングの手法などを確立するべく、Dr.Sum EAを軸にした、全社的なデータ活用環境を着実に整えつつある。
※1:MCS(MaruzenCommunicationSquare)
書籍の仕入先である出版社向けに販促ツールとして利用する、丸善独自のシステム。※2:Mサーチ
お客様自身が簡単に操作でき、店内の棚位置までも表示する、書籍検索用の店頭端末。他書店の検索機では前日時点の販売データを表示するものが多い中、Mサーチはリアルタイムの販売状況が反映されるため、よりお客様の利便性が高い検索機。






