導入事例

三井住友海上火災保険株式会社

三井住友海上火災保険株式会社

代理店の経営者/管理者向けに、3つのダッシュボードを提供
新たな成長への気づきを与え、自社の業務効率向上も実現

三井住友海上火災保険株式会社
業種

金融・保険

デジタル技術の活用により損害保険ビジネスのあり方や業務プロセスの変革を目指す三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上)は、社内基盤である統合データウェアハウスの刷新やAIを活⽤した代理店向けシステム「MS1 Brain」の構築など、チャレンジングなプロジェクトを通じてデジタライゼーションを推進している。そうした中で取り組んできたのが、傘下の代理店の経営者や管理者、社内の営業担当者などに業務上の新たな“気づき”を促すビジュアルなダッシュボードの展開である。

導入背景

ビジネス現場でのデータの可視化や分析を可能とする基盤としてダッシュボードは有益だが、1つの画面を作り上げるまでには多くの試行錯誤を重ねる必要がある。多様なニーズにアジャイル開発の手法で柔軟に対応するとともに、大規模なユーザーにも低コストでダッシュボードを提供可能な環境が求められた。

課題
  • 各代理店の経営者に対して、着実に業績を伸ばして成長している代理店と自店の違いを一目で確認できる環境を提供したい
  • 各代理店に対してポジション分析や顧客分析も行える環境を提供したい
  • 三井住友海上自体においても営業成績や業務の進捗状況を確認できる仕組みがほしい
解決策導入ポイント
  • 代理店向けシステムの経営者/管理者向け機能としてダッシュボードを提供
  • 三井住友海上の社内基盤として刷新した統合データウェアハウスのフロントエンドとしてダッシュボードを提供
効果
  • アジャイル開発の手法に沿って業務ニーズに沿ったダッシュボードを短期間で開発
  • コロナ禍においても必要なデータ確認を画面内で完結できるダッシュボードを実現
  • 従来型のシステム開発では膨大な費用がかかる進捗確認機能を低コストで実現

データドリブンな損害保険ビジネスを推進すべく
代理店向けシステムの経営者/管理者向け機能を強化


 損害保険大手の三井住友海上は、2018年度からスタートした4年間の中期経営計画「Vision 2021」の後半2年間を変革のステージと位置づけ、そのトップ項目に「デジタライゼーション」を掲げている。デジタル技術の活用により損害保険ビジネスのあり方や業務プロセスを変革し、顧客体験価値の向上、競争力強化、業務効率化を目指すものだ。 


 代表的な取り組みの1つが、2020年2月に稼働を開始した「MS1 Brain」という代理店向けシステムの構築である。過去の契約実績や顧客情報などのビッグデータを基にAIが高い成約率が見込まれる顧客を抽出し、顧客のニーズが変化するタイミングで提案すべき保険商品の構成を代理店の営業担当者にリコメンドするものだ。三井住友海上の代理店数は国内36,478店(2020年3月31日現在)に達しているが、そのうち約2万店に在籍する約10万人がすでにMS1 Brainを利用している。


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AIを搭載した損保業界初の代理店営業支援システム「MS1 Brain」

 そしてMS1 Brainのさらなる活用を促すとともに、データドリブンな損害保険ビジネスを推進すべく三井住友海上が注力しているのが、各代理店の経営者や管理者向け機能の拡充だ。同社 デジタル戦略部 業務プロセス改革チーム 課長の横山 輝樹氏は、「先の見通せない不安定な社会情勢下にあっても着実に業績を伸ばしている代理店と自店との違いを一目で比較し、新たな成長への気づきを得られるビジュアルなダッシュボードを提供しています」と話す。


 提供しているのは、次の3つのダッシュボードである。


 1つめは営業成績のダッシュボード。代理店ごとの保険料収入の積算値のほか、手数料査定に大きく影響する成績もKPI(重要評価指標)として表示する。2つめはポジション分析のダッシュボード。縦軸に顧客の種別(個人、法人)、横軸に保険商品を置いた4象限のマトリックスに自店が今いる位置を表示し、成長している代理店との差を把握できる。これに基づいて、例えば「法人顧客へのアプローチをもっと強化していく必要がある」「従来型の自動車保険や火災保険だけでなく賠償責任保険などの契約を伸ばしていく必要がある」といった新たな営業方針を打ち出すことができる。そして3つめが顧客分析のダッシュボードだ。個人および法人の顧客ごとの契約年数、契約している保険商品の種類や件数の推移などを可視化し、より多くの顧客を優良顧客に育成していくための対応方針を定めることができる。


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代理店の成績や代理店手数料判定に関わるKPIの達成状況をビジュアル表示

アジャイル開発に耐えられるダッシュボードの基盤が必須


 MS1 Brainの経営者および管理者向けダッシュボードを開発するにあたり、三井住友海上がその基盤として採用したのがウイングアークのMotionBoardだ。


 三井住友海上ではMS1 Brainのリリースに一足先駆けて2019年10月に社内基盤の統合データウェアハウスを刷新したが、実はこの基盤を利用する営業系および損害サポートを中心とした約7,000名の社員のフロントエンドとして提供しているのが、MotionBoardを活用したダッシュボードだ。


 「統合データウェアハウスの構築を進めている過程で、これと並行する形でMS1 Brainの構築プロジェクトが立ち上がりました。両システムで似たようなダッシュボードを提供するのであれば、同じ仕組みを利用したほうが後々も資産やノウハウを共有できて使い勝手がよいと考え、MS1 Brainでも経営者/管理者用のデータマートとしてDr.Sumを設置するとともに、そのフロントエンドとしてMotionBoardを採用することになりました」と横山氏は経緯を説明する。


 もっとも最初からMotionBoardとDr.Sumありきで両システムの構築プロジェクトが進んできたわけではない。「選択肢は大きく2つありました。ダッシュボードをスクラッチ開発するか、それともBIツールを活用すべきかです」(横山氏)


 結局スクラッチ開発には至らなかったが、その理由は「現状の社内体制ではウォーターフォール型の開発にならざるをえない」ことにあった。「特にMS1 Brainで目指した経営者向けの分析ダッシュボードはリリース直前まで試行錯誤を繰り返すことになると予想され、アジャイル開発に耐えられる新たな基盤が必須と考えました」(横山氏)


 こうしてBIツールを活用することになったが、その分野においてもさまざまなベンダーの製品が選択肢として存在している。実際、三井住友海上では統合データウェアハウス基盤においてセルフサービス型BIツールも導入しており、これをダッシュボードの基盤として利用することも考えられた。


 だが、この方法も同社の要件を満たすことはできなかった。セルフサービス型BIツールは一部のデータ分析の専門家にとっては便利な高機能が充実しているものの、代理店や業務部門の一般ユーザーが自由に使いこなすのは困難だからだ。そもそも統合データウェアハウス基盤の約7,000名、MS1 Brainの数万名といった大規模なユーザーにセルフサービス型BIツールの利用環境を展開するには莫大なコストがかかる。


 「これに対してMotionBoardには、ダッシュボード開発・展開に特化したエンタープライズ型BIツールならではの使い勝手の良さがあります。加えてサーバーライセンスでの運用が可能であり、大規模ユーザーに向けても低コストで利用環境を提供できるなど、目指すゴールを最も簡単かつ最短期間で実現できる手段としてMotionBoardを活用することにしました」と横山氏は強調する。


数千万円規模のコストを費やしたと思われる機能を
ダッシュボードという形で簡単に実装できた


 実際にMotionBoardは、短期間でのダッシュボード展開に大きく貢献した。先述したとおり三井住友海上の新たな統合データウェアハウス基盤が本格稼働を開始したのは2019年10月のことだが、そのわずか1ヶ月後の11月には、営業系、損害サポート系双方のダッシュボード提供にこぎつけた。一方のMS1 Brainについては、外部のコンサルティングファームおよびSIベンダーにダッシュボードの開発を委託したが、それでも2019年秋から2020年2月までの短期間で「営業成績」「ポジション分析」「顧客分析」の3種のダッシュボードを完成し、リリースすることができた。


 では、これらのダッシュボードは、三井住友海上および傘下の代理店のビジネスにどんな効果をもたらしているのだろうか。


 統合データウェアハウス用のダッシュボードについては、三井住友海上の社内業務の効率化に大きく貢献している。「営業系のダッシュボードは、これまでExcelや集計表で管理されていた営業成績をグラフやチャートを中心とした表示としたうえ、従来とは異なった組織や時系列での現状把握が容易となったことで、営業担当者一人ひとりの意識を変えつつあります。また、損害サポート系のダッシュボードはこれまでの社内システムにはなかった機能で、例えば台風や地震などの自然災害が発生した際に集中する保険金支払いの処理状況を一目で把握できるようにしました。従来型のシステム開発ではおそらく数千万円規模のコストを費やしたと思われるこれら機能をダッシュボードという形で簡単に実装できたという観点からも、MotionBoardの活用には非常に大きな意義がありました」(横山氏)


 また、MS1 Brainのダッシュボードにおいては、特に営業成績ダッシュボードに対する評価が急上昇している。これまで各代理店の経営者は自分たちの売上実績を把握するためには、業務システムからデータを抽出して集計するか、三井住友海上の担当営業からの定期的なレポートに頼るしかなかったが、現在では必要なすべての最新データをダッシュボード内で完結して確認できるようになった。「不安定な社会情勢下で担当営業とのリアルな対面がままならない状況下でも遅滞なくビジネスを進められると、多くの代理店から感謝の声が寄せられています」(横山氏)


 もちろん三井住友海上では、今後に向けてもこれらのダッシュボードのさらなる改善や新規開発を進めていく意向にある。横山氏も、「MotionBoardを最大限に活用し、代理店の皆さまや社内から寄せられる多様なニーズに柔軟に応えていきます」と力強く語る。三井住友海上は、代理店と一丸となったデータ活用力を強化することで、さらなるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく考えだ。


Company Profile

三井住友海上火災保険株式会社

設立:1918年10月21日
本店所在地:東京都千代田区
事業内容:国内損保シェアNo.1※1を誇るMS&ADインシュアランスグループの中核事業である損害保険事業を担う。グループ全体で多様なお客さまのニーズに万全に対応。事業を通じて社会的課題を解決することで社会との共通価値を創造し、「レジリエントでサステナブルな社会」を目指す。
※1 正味収入保険料シェア(2019年度) 各社公表数値および日本損害保険協会統計資料より同社調べ
URL:https://www.ms-ins.com/

デジタル戦略部 業務プロセス改革チーム
課長 横山 輝樹 氏

導入製品

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