株式会社西武ホールディングス
受領する請求書の電子化からスタートし、
グループ全体の「デジタル経営」を見据えた経理業務の改革を実現
- 業種
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サービス
グループ会社全体で「デジタル経営」を推進する西武グループは、その一環として2019年から会計システムの刷新に取り組んできた。先行導入されたERPパッケージと連携させる形で活用を進めているのが、ウイングアーク1stの請求書などの帳票類の送受信から管理までを一括で行うソリューション「invoiceAgent TransPrint」だ。取引先に負担をかけずに大量に受領する請求書の電子化をスムーズに行い自社の大幅な作業の効率化を実現するとともに、取引先の郵送の手間を軽減するなどのESG経営を戦略的に進める観点からグループ各社への展開を進めている
導入背景
会計システムの刷新に向けて「新しい西武グループ標準業務」を策定している中では、厳しい法的要件もあり一度は請求書のデジタル化は先送りとしていたが、コロナ禍でテレワークの支障となる紙ベースの業務フローや働き方の見直しが急務となり、また法制度改正も進んだことから請求書の電子受領まで「新しい西武グループ標準業務」に含める取り組みへと舵を切った。書面での受け取りが必要な請求書の電子受領を推進するため、刷新したERPパッケージと連携させることが可能な電子帳票のソリューションを求めた。
- 課題
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- 「デジタル経営」実現のための業務改革の根幹としてペーパーレス化が急務に
- 業務効率化・法対応の観点から、請求書の電子受領と電子のままで開封・保存する業務プロセス確立が必要に
- 解決策導入ポイント
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- invoiceAgent TransPrintによって、取引先からの請求書受領を電子化
- 先行導入されていたERPパッケージと柔軟に連携
- 効果
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- 会計起票の証拠書類の電子化を社内標準としてグループ23社に展開
- ペーパーレス化によりデジタル経営を推進
デジタル経営の実現に向けて
“ペーパーレス化推進が待ったなし”の状況に
西武グループは、2021年5月に「経営改革」「デジタル経営」「サステナビリティ」の3本柱を骨子とする「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」を策定し、アフターコロナの社会で目指すべき姿として「最良、最強の生活応援企業グループ」を掲げている。
特に業務や働き方の効率化に大きく関わるデジタル経営の推進は、これからの企業価値に大きく関わることとなる。経理部門におけるデジタル化を推進する役割を持つ西武ホールディングスの経理部で課長補佐を務める金國 善治氏は、「デジタル経営を積極的に進めることでコスト削減はもちろん、働き方改革にもつながる成果を上げていくことを目指しています。西武グループの競争力を高めつつ、さまざまな新たな価値をお客さまにも提供できる、そんな企業への成長を目標としています」とビジョンを示す。
財務・経理部門がDXを通じて、付加価値を生む業務を中心とした組織への変革を目指すためには全社レベルもしくはグループ企業全体を巻き込んだデジタル経営の実践・浸透が欠かせない。西武グループが2019年から取り組んできたのが会計システムの刷新だ。NTTデータ・ビズインテグラルのERPパッケージ「Biz∫」を導入することで、経理部門に留まらないグループ全体の業務を抜本的に効率化しようとしてきた。
しかし、そうした取り組みを進める中で先送りとなっていた課題があった。それはさまざまな取引先やグループ会社間でやりとりする請求書等のペーパーレス化だ。「2019年の時点では受領した請求書を電子データで保存するために満たさなければならない要件のハードルが高く、いったんは見送ることにしていました」と金國氏は振り返る。
そこに起こったのが新型コロナウイルスの流行だった。「テレワークの必要性が叫ばれる中で、弊社でも紙を起点とした業務フローや働き方の見直しが急務となりました。さらに2022年1月の電子帳簿保存法の改正も重なり、もはやペーパーレス化は“待ったなし”の状況にあると判断しました」(金國氏)
こうして西武グループは、会計システムの刷新を進めつつ受領する請求書の電子化に向けた取り組みへと大きく舵を切ったのである。
シンプルなステップで
取引先にストレスを感じさせず請求書の電子受領を実現
西武グループでは効率的なシステム運用に向け、追加のアドオン開発やカスタマイズなどの手を加えずに、導入したシステムが持っている機能や価値をそのまま活用する方針として「システムに業務を合わせる」を掲げている。そのため、受領する請求書の電子化をするためには刷新したERPパッケージである「Biz∫」と組み合わせて利用できる新たなソリューションが必要となっていた。
「導入するシステムをカスタマイズして機能を加えてしまうと、運用・管理面で大きな負担となることやバージョンアップなどによる機能追加のメリットを享受できなくなることがあります。そのため、私たちはシステムが本来持っている機能や価値をそのまま使い、追加で必要な機能があれば別のソリューションを組み合わせて運用しています。受領する請求書の電子化のためにはBiz∫とスムーズに組み合わせて利用できるソリューションが求められていたのです」(金國氏)
この方針に沿う形でNTTデータから紹介されたのが、ウイングアーク1stの「invoiceAgent TransPrint」だった。既存システムに手を加えることなく、請求書や支払通知書、注文書、納品書などのあらゆる企業間取引でやりとりする文書の電子化と、オンラインで配信・受領を可能にできる点などに惹かれた。取引に紐づく文書の一元管理やインボイス制度・電子帳簿保存法にも対応する電子取引サービスである点も大きなポイントとなった。
「私たちの独自調査に基づいてピックアップした製品も含め、さまざまなソリューションを比較検討しました。その結果、私たちの望んでいたポイントと最も適合したのがinvoiceAgent TransPrintでした」と金國氏は語る。
ここでいう「望んでいたポイント」とは、具体的にはどんな条件を指すのだろうか。会計起票の証拠書類の電子化を進めるにあたって、西武グループが優先して電子化に取り組もうとしていたのが「請求書の受領」のフローだった。取引先からの請求書を電子受領することで、保管についてもスムーズに電子化できる。紙で請求書を受領する場合は、発行・郵送され手元に届くまでのリードタイム、保管作業の手間や保管場所を確保する必要があるが、これらの時間や作業量を大幅に削減することで業務生産性の向上を実現する目的があった。ただし、電子化には請求書を発行する取引先との連携が不可欠となる。可能な限り多くの取引先から協力してもらうために、簡単に導入できることが必要だったのだ。
西武ホールディングス 経理部 主任の浅野 雅明氏は、「invoiceAgent TransPrintでは、お取引先さまがPDF形式で請求書を発行し、アップロードさえしていただければ、私たちはそのまま受領することができます。このシンプルさ使い易さは、他社製品に大きく勝っており採用のポイントでした」と評価する。取引先は現状の業務をほとんど変える必要がなく、従来の請求書を印刷・封入・郵送していた手間の削減にもつながる。なお取引先から送付されてきた請求書は、Biz∫で起票された会計伝票に添付ファイルとして紐づけることができ、スムーズに作業を行うことが可能となった。
さらに西武グループでは、電子帳簿保存ソリューションも導入している。「この3つのソリューションの連携により、電子化された請求書を受け取り、電子のままで開封・保存する一連の業務プロセスを実現することができました」(浅野氏)。
導入を支えたカスタマーサクセス支援「オンボーディングプログラム」
こうして導入されたinvoiceAgent TransPrintについて、西武ホールディングスは2021年8月から西武グループ全体への展開に先駆け、自社と取引先との間だけで先行利用を開始した。「まずは自社とお取引先さまだけで活用して運用方法を固め、最も効率的と思われる運用パターンを構築して、グループに展開することを目指しました」と浅野氏は振り返る。
そしてこの過程で「とても役立った」と高く評価するのが、ウイングアーク1stの利活用・定着化支援サービス「オンボーディングプログラム」だ。
「ウイングアーク1stの方々は、導入の前段階からほぼ毎週のようにWebミーティングを開催してくださり、invoiceAgent TransPrintの運用上のさまざまな質問や相談にご対応いただきました。オンボーディングプログラムがなければグループ展開は難しかったかもしれません。たとえば受領した請求書を指定のフォルダーに正確に仕分けるためにはどうすればよいのか、お取引先さまに支払通知書を配信する際にBridge Serviceによる自動アップロード機能をどう活用するのかなど、丁寧にレクチャーしていただいたことで、疑問や不安を解消することができ、権限設定を含め自分達で思い通りに構築し実運用に臨むことができました」(浅野氏)
こうした取り組みでシステムを活用する基礎固めができ、西武グループは万全な体制を整えて2021年12月よりInvoiceAgent TransPrintのグループ展開を開始できた。2022年4月の時点でinvoiceAgent TransPrintが利用可能なグループ会社は23社に達した。さらに電子化を推進するため、2022年2月にはグループ会社間の請求書授受をinvoiceAgent 文書管理を利用して行う仕組みの運用も開始した。
グループ会社と連携し、すべての取引文書の電子化へ
上記のような取り組みを経て、西武グループ全体として取引先から受領する請求書の電子化は急速なペースで進展している。成功要因として金國氏が挙げるのは、各取引先への働きかけをグループ各社のリーダーシップに任せたことだ。
「受領する請求書の電子化を進める上では、応じてくれるお取引先さまの社数を増やすことも重要ですが、大量の請求書を常時やり取りしている大口のお取引先さまの了承を得ることが何より必要です。仮に請求書の90%を受領する限られた数社のお取引先さまが電子化に応じれば、全てのお取引先さまと電子化を進めなくともそのグループ会社の受領する請求書の電子化の進捗率は一気に90%に達することになります。こうした優先順位をつけた交渉をお取引先さまとの関係性や現場のビジネスを熟知しているグループ各社の担当者が自ら進めたこともあり急速に普及できました」と金國氏は語る。
実際に請求書の電子化の要請に対して、各取引先の反応はどうだったのだろうか。西武ホールディングス 経理部 主任の中村 玲氏は、「すでに別の電子取引のシステムを利用しているお取引先さまや、紙の請求書発送を外部委託されている規模の大きいお取引先さまにおいては従来のシステムや運用を弊社だけのために変えるのは難しいと言われることもありました。新たなシステム利用に躊躇されるお取引先さまもありましたが、日常的に接しているグループ各社の担当者がinvoiceAgent TransPrintのメリットである、簡単に使えることに加え、郵送の手間が省けることなどを粘り強く訴求することでお取引先さまのご理解を得ることができました」と強調する。
「メールでURL、ID、パスワードを通知するだけで使い始めることができる、実際に使っていただくと、3ステップ程度の手順で、お取引先さまがPDF形式の請求書をアップロードしてから弊社への配信までが完了します。invoiceAgent TransPrintは非常にわかりやすいインターフェースですし、困ることがないのでは?という印象です。特段ネガティブなご連絡はなく、運用を開始した後の問い合わせはほとんど発生していません」(中村氏)。
また、そうした取引先との交渉場面で便利に活用できるツールとして、「ウイングアーク1stのから提供してもらったお取引先さまへの案内通知文のひな形や、利用ガイドはとても役立っています」(中村氏)という。
西武ホールディングスは今後もグループ各社に対してinvoiceAgent TransPrintの利用拡大に向け、積極的な後方支援を行っていく構えだ。
前述したとおりinvoiceAgent TransPrintが利用可能なグループ会社は23社に達しているが、会計システム更新のタイミングにあわせて最終的に導入を想定している会社は40社ある。
「これらのグループ会社への展開をできるだけ早期に達成することで、西武グループ全体としての業務標準化や連携強化などのシナジーを創出していきたいと考えています」と浅野氏は目標を見据える。
さらに金國氏は、「直近の課題は改正された電子帳簿保存法の条件クリアですが、我々の最終的な目標は企業間で授受する紙をすべてなくすことです。それを実現するためにinvoiceAgent TransPrintをさらに活用していくつもりです」と引き続きウイングアーク1stと緊密に連携しながらデジタル経営に取り組んでいく考えだ。
Company Profile
株式会社西武ホールディングス
設立:2006年2月
所在地:東京都豊島区
事業内容:東京都北西部及び埼玉県南西部にて12路線を運営する西武鉄道を中心とした都市交通・沿線事業、プリンスホテルブランドで国内最大級のホテルチェーンを展開するホテル・レジャー事業、さらに西武鉄道沿線内外の商業施設や賃貸オフィスを運営する不動産事業など、生活のあらゆる場面でお客さまを応援する事業を展開。また、東京23区の46万m²を含め、全国に1億36百万m²以上の豊富な不動産を保有しており、2016年7月に開業した「東京ガーデンテラス紀尾井町」や2019年4月に開業した「ダイヤゲート池袋」、所沢駅周辺の開発など、保有資産の潜在的な収益力を実現させるプロジェクトを持続的に実施している。
URL :https://www.seibuholdings.co.jp/
導入製品
invoiceAgent TransPrint
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invoiceAgent 文書管理
あらゆる帳票の仕分けから保管、検索、他システムとの連携も可能な文書管理ソリューションです。