導入事例

東急不動産ホールディングス株式会社

東急不動産ホールディングス株式会社

グループ内でサイロ化していたデータを統合
年間1,000時間超の業務削減し、全事業横断のDX推進を実現

東急不動産ホールディングス株式会社
業種

不動産

東急不動産ホールディングス株式会社(以下、東急不動産ホールディングス)は、2021年に策定した長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の中で全社方針として「環境経営」と「DX」を掲げ、戦略的な取り組みに着手している。デジタル技術やデータ活用による新たなビジネスモデルを構築するために、2030年をゴールとするロードマップを定め、段階的に自社のデジタル環境の整備を進める計画だ。その第一歩目として、グループ内に散在しているデータを統合・活用するための基盤構築を、Dr.Sum Cloud(以下、Dr.Sum)によって実施した。

導入背景

グループ内で不動産領域における幅広い事業を手掛ける中で、事業会社や部門ごとにデータ管理や活用状況がバラバラだった。そこで、グループ会社の一部で成功しているデータ活用の仕組みを横展開する形で、ホールディングスのデータ統合基盤を構築した。

課題
  • 100社以上のグループ会社や事業部が個別にデータを管理しており、グループ横断でデータを活用するための基盤がなかった
  • データ可視化・データ分析に関する社内事例がなく、データ活用が進んでいなかった
  • 基盤を整備するためのデジタル人材が不足していた
解決策導入ポイント
  • すでにグループ内で導入実績のあったDr.Sumを採用して内製化を図った
  • DX機能会社であるTFHD digital株式会社に開発ノウハウを集約して成功事例を横展開
  • 要件定義に時間をかけるのではなく、まずサンプル画面を作成するアジャイル型のアプローチでデータ活用の効果を浸透させた
効果
  • 全社のDX方針を進めていく上でのデータ統合基盤が整備できた
  • データの集計・社内の報告に費やしていた膨大な作業を省力化し、年間で1,000時間超の業務削減効果となった

グループのビジョンを定めて計画的にDXを推進


 東急不動産ホールディングスグループは、持株会社である東急不動産ホールディングスと東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブル、東急住宅リース、学生情報センターの主要5社ならびにそれぞれの関連会社によって構成され、グループ100社以上、約3万人のグループ従業員を擁する。グループ全体で不動産の開発や管理運営、仲介、流通、インフラ構築、不動産投資と、不動産に関するバリューチェーン全体にわたる幅広い事業ウイングと顧客接点を持ち、独自の強固なビジネスモデルを構築してきた。


 その中で同社は2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定し、「環境経営」とともに「DX」を新たな事業の柱として位置付けている。DXのビジョンとしては、業務の見直しによる「ビジネスプロセス」、データ活用で顧客理解を高めサービス提供価値を高めていく「CX(カスタマーサクセス)」、事業変革によって新たなビジネスモデルの構築を目指す「イノベーション」と3つのレイヤーに区分し、グループ全体および各社でDX施策の検討・実施を進めている。その中で2025年まではビジネスプロセス変革による利益率の改善とCXの実装による収益の増加を目指し、2026年以降はイノベーションの創発による収益源の多様化を目指している。


グループ横断のデータ統合・可視化を実現しBI基盤構築を実現


 DX戦略の策定に先んじて、東急不動産ホールディングスは2020年にDX推進室を発足。データの活用に向けて全社的な基盤の整備に着手した。当時のデータ活用状況について、同社でDX推進を担当する東急不動産ホールディングス グループDX推進部 DX推進グループ 兼 グループ経営企画部、東急不動産 DX推進室 DX推進グループ 兼 経営企画部 グループリーダー 課長の鳥巣 弘行氏は、①業務や情報がサイロ化されていてグループ内のデータを自由に利活用できない、②DXを推進していく上での人材がいない――という2つの課題を抱えていたと振り返る。


東急不動産ホールディングス グループ DX 推進部 DX 推進グループ 兼 グループ経営企画部グループリーダー 課長 鳥巣 弘行 氏

 「まず前者に対しては、サイロ化しているデータを束ねるデータ統合基盤を作ることで問題を解決することにしました。後者では、ホールディングス内でビジネスとデジタルが分かる“両利き”の人材育成を図るとともに、不動産の働き方とは異なるナレッジや知見を持っている優秀なデジタル人材を獲得するために、DX施策の推進・支援を行うための子会社として新たに『TFHD digital株式会社』を発足し、データ統合基盤の導入をDX推進部から引き継いで同社が担当し、内製する形をとりました」(鳥巣氏)


 サイロ化されている状況に関しては、子会社や事業ユニットにデータ基盤があり、整備状況もばらばらという形だった。またホールディングスが全社の経営データを活用する際には、各子会社・事業ユニットが保有するデータベースからデータを抽出し、エクセルにまとめてレポートを作成するという形で提供されていた。その際にかかる労力は、例えば東急不動産では「月に1回の経営会議で各事業ユニットの営業状況を報告するために、4つのユニットの各担当者(約12名程度)がそれぞれ丸2日かけて作業をしている状況」(鳥巣氏)だったという。


 他方、データ活用状況は子会社や事業ユニットとに濃淡があり、すでにデータ活用が高度化されている組織もあった。例えば、東急不動産の子会社である東急スポーツオアシスでは早々にBI基盤を整備し、ダッシュボードを活用して新規会員の獲得や既存会員の定着などで成果を上げていた。それと併せてグループ内では、東急スポーツオアシスの成功体験を横展開する形で少しずつデータ活用が広がっていくというボトムアップの動きも発生していた。


 そこで東急不動産ホールディングスにおいて、DX推進室の立ち上げとともにその動きを正式に全社的な取り組みへと昇華させ、2020年にDX推進室の下でグループ内でデータ活用を推進することを目的としたBI導入プロジェクトが開始された。


 「成功体験として横展開を始めた東急スポーツオアシスで導入していたBIツールが、ウイングアークの『Dr.Sum』と『MotionBoard』でした。導入している部門からの評判も高く、国産製品としてサポートがしっかりとしており、何よりグループ内の一部ですでに内製化ができていて両システムを熟知している担当者やエンジニアがいたので、ホールディングスとしての統合基盤にも両製品を採用することにしました。導入に当たっては、当社のDXビジョンにおけるクラウドファーストの方針から、サービスとしてリリースされたばかりの『Dr.Sum Cloud』を選択しました」(鳥巣氏)


各事業ユニットのデータをDr.Sumに集約し、Motionboardで可視化

ダッシュボードとデータベースを完全内製で開発


 MotionBoardは2020年12月、Dr.Sumは2021年5月にそれぞれ稼働を開始している。Dr.Sumの導入に当たっては、外部のベンダーには一切委託せず、東急スポーツオアシスの知見とリソースを受け継いだTFHD digitalが開発を担当。グループ内ではまず東急不動産の住宅事業および再生可能エネルギー事業から導入し、そこから現在は東急不動産内に全社展開していった。現在は、東急不動産の子会社および他のグループ会社に広げていくフェーズとなっている。


 システムの導入に際しては、これまでの経験を踏まえて円滑に進めることができたという。特に、ダッシュボード製品であるMotionBoardを導入する際に、あらかじめBI用のデータベース製品であるDr.Sumの活用を意識してデータテーブルを作成したことで、効率的に短期間で開発できたとしている。MotionBoardからDr.Sumへのデータ移行に当たっても、31テーブルを夜中の数時間システムを止めるだけで移行できたという。


 同社ではDr.Sumの導入によって、シームレスなデータの集約・統合を実現。導入した部門では、まずデータの確認や経営への報告が月次から日次へと短縮された。特に再生可能エネルギーユニットでは、数字面と業務面で大きな効果が得られた。


 「人手で集計をしていたときは、担当者が複数の業務を兼任していることもあって毎日作業をするわけにもいかず、月に1回各発電施設の発電量や売電量をエクセルで集計しているだけでした。それを自動化したことで当該業務の負荷がほぼなくなり、数字にすると年間1,080時間削減することができました。また何より、自動化されて日次で見られるようになったことで、例えば晴れの日に発電量が少ない場合は故障が疑われるなど、月次でデータを取っていた際にはわからなかった重要な情報がデータから得られるようになりました。この他にも、東京湾に面する竹芝地区の都市開発においては、カメラの人流把握センサーとAPIで連携したエリア毎の混雑状況の可視化に「MotionBoard」が活用されており、竹芝スマートシティーの推進だけでなく、まちの賑わい創出にもデータ活用の幅が拡がっています。」(鳥巣)


 東急不動産ホールディングスでは、システム導入によって高い成果が得られた成功事例を積み重ねることでグループ内での評価が高まり、Dr.SumによるBIの活用が横に広がっている状況であるという。同社はBI活用の有用性を社内に浸透させる手段として、書面ベースでの要件定義に時間をかけるのではなく、要件をヒアリングしたうえでMotionBoard上で、まずサンプルのダッシュボードを作成し、それをブラッシュアップしていくというアジャイル開発のアプローチをとっている。実際の画面を見てもらうことで、各担当者のデータ活用についての理解度も上がり、開発もスピード感をもって進めることができるというメリットがあった。メンバーは元々事業会社の出身ということもあり、相手の主張も理解できますし、その先を読んでこんな機能があったら便利だろうと想像も働きます。DXやデータ活用とはこういうことだと、ビジュアルとして理解してもらえるように工夫したことで、サンプルを開発したら約8割は導入が決まっている状況です」(鳥巣氏)


定常業務が軽くなり人財を顧客への価値提供にシフト


 今回のDr.Sumの導入によって、東急不動産ホールディングスでは、DX推進ビジョンで掲げたビジネスプロセスフェーズでの業務基盤が整備された。DX推進のベースとしてDr.Sumが位置付けられ、そこから創造的業務への転換やCXの実現という次の段階に進みやすくなったことが一番の価値であると鳥巣氏は語る。


 「定常業務が軽くなり、それ以外の業務に人財をシフトできるようになりました。Dr.SumとMotionBoardはお客様の精緻な理解を進める目的にも使えると思うので、お客様に対して価値提供をして収益を高めるというDXの第2フェーズでも両製品を活用していきます。また、今はグループごとに縦割りで事業をしているので、今後は各社が保有する顧客情報を連携して、データ活用によってお客様ごとに最適化した1 to 1のサービスをグループ全体で提供できるようにしたいと考えています。最終的にはDr.Sumをデータウェアハウス化して、ユニット内やホールディングス内でデータを統合していくことが目標なので、これからもウイングアークには製品の更なるブラッシュアップとサポートを期待しています」(鳥巣氏)


 また、TFHD digitalではグループ展開の他に、DX支援ベンダーとして外部に対してもDr.SumとMotionBoardの導入支援サービスを行っている。今後は東急不動産が実験的に進めているエリアマネジメントなどグループ内の知見も踏まえ、自治体向けのビジネスも手掛けていく方針であるという。


 「サービス提供者の立場としても、ウイングアークの充実したサポート体制はとても頼りになります。そこでのビジネスは、ホールディングスが掲げるDX推進戦略の最終段階であるイノベーション創発フェーズで掲げた、“共創モデル構築による収益源の多様化”に関係してくる部分でもあるため、これからパートナーという視点からレベニューシェアの仕組みを考えていければとも構想しています」(鳥巣氏)


Company Profile

東急不動産ホールディングス株式会社

設立:2013年10月1日
所在地:東京都渋谷区
事業内容:グループ全体で不動産の開発や管理運営、仲介、流通、インフラ構築、不動産投資など不動産に関するバリューチェーン全体にわたる事業を展開
URL:https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/

東急不動産ホールディングス グループ DX 推進部 DX 推進グループ 兼 グループ経営企画部グループリーダー 課長 鳥巣 弘行 氏

導入製品

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