導入事例

株式会社大林組

株式会社大林組

現場の生産性向上と遠隔臨場の実現に向けた建設DX
建設現場の情報プラットフォームをMotionBoardで構築

株式会社大林組
業種

建設

日本有数の総合建設会社である株式会社大林組(以下、大林組)では、「MAKE BEYOND つくるを拓く」というブランドビジョンを掲げ、既存の事業の枠にとらわれない成長を目指す中で、土木工事の現場におけるDXを加速している。その取り組みの一つが、現場管理者の負担軽減を図るとともに安全性や品質の維持・向上を実現するためのダッシュボード構築だ。現場に設置したウェブカメラをはじめとする多様なデータをウイングアークの「MotionBoard Cloud(以下、MotionBoard)」上に集約し、場所を問わずどこからでもリアルタイムの状況を把握可能にしたことで、現場管理者の生産性向上はもちろん、本社・発注者へのスムーズな情報連携にもつながっている。

導入背景

建設業界では人手不足が続く中で、時間外労働の上限規制が厳しくなる「2024年問題」を控え、生産性向上に向けた取り組みが必須となっている。大林組では、業務の多忙により現場確認を行う時間が減ることで、現場の管理が行き届かず安全や品質の瑕疵につながることを懸念。効率的に管理できる手法を検討していた。

課題
  • 2024年問題や人材不足を背景とし、特に管理者が多忙を極め、安全や品質の瑕疵が懸念された
  • 業務システムやカメラ映像などの導入は進めていたが、情報は分断され有効活用されていなかった
  • 現場ではデータが活用しにくい状態であり、業務効率化には限界があった
解決策導入ポイント
  • MotionBoardの導入により、現場に関する多様なデータをクラウド上に集約
  • 現場管理者全員が持つタブレット端末で場所を問わずリアルタイムに情報を活用
  • 発注者、本社、現場それぞれ最適な形でリアルタイムに情報を把握
効果
  • 現場管理者は情報取得のための事務所と現場の往復回数を減少させることが可能となり、情報の確認に関する業務効率が向上
  • 遠隔からの現場支援も受けられるため、適切な指示や対応を取ることができ、品質維持にも貢献
  • 発注者、本社、現場など関係者との情報連携やコミュニケーションが円滑に

管理者の負担を軽減し安全や品質を保つために


 2021年1月に130周年を迎えた大林組。その長い歴史の中で培ってきた「ものづくり」の技術と知見を今の時代にあわせてアップデートするとともに、既存の事業の枠にとらわれない成長を目指しており、その想いをブランドビジョン「MAKE BEYOND つくるを拓く」に込めている。


 建設業界では次世代の担い手の確保が大きな課題となっていることに加え、人手不足が続く中で時間外労働の上限規制が厳しくなる「2024年問題」を控え、生産性向上に向けた取り組みが必須となっている。このような状況を踏まえ、国土交通省でもICTの全面的な活用等によって生産性向上を図る「i-Construction」の取り組みを進めている。


 大林組では、ダム、トンネル、橋梁といった社会インフラを支える土木工事の現場を、デジタルやロボティクスなどによる建設DXで支援しようと、i-Constructionに先駆けて「先端技術企画部」を立ち上げた。


 同部における取り組みの一つ「現場情報リアルタイム表示」の発端について、土木本部 生産技術本部 先端技術企画部 田島 僚氏は次のように説明する。


土木本部 生産技術本部 先端技術企画部 田島 僚氏

 「特に問題視していたのが、管理者不足です。現場に足を運ぶ機会が減って管理が不十分になってしまうと、安全や品質の瑕疵につながりかねません。そこで効率的な新しい管理の仕方を検討する中で、カメラやセンサー、工事用の支援システムなどを使って遠隔からでもリアルタイムで現場を管理できる、遠隔臨場の仕組みを構築しようと考えました」


 すでにカメラや支援システムなどは導入していたが、それらの情報は各ツールで分断されており、現場が業務において使いやすい形にはなっておらず、抜本的な業務効率化にはつながっていなかった。


現場が必要とする多種多様な情報をMotionBoard上で一元化


 構想から具体的な行動へ移ったのは、2021年3月のこと。同社が求めたのは、複数規格が混在するウェブカメラも含めて各種システムを束ね、どこにいてもPCやタブレット端末から見ることができる仕組みだった。さらに、施主や協力会社も利用できるよう、属性によって権限を設定しアクセス可能な情報をコントロールできる機能も求めた。


 いくつかのICTベンダーと、やり取りやトライアルを重ねてみたものの、期待したようなプロダクトや協力体制には出会えなかったという。


 プロジェクトが前進したのは、7月だった。土木本部 生産技術本部 先端技術企画部 日暮 一正氏は、「私たちが探していたのはシステムではなく“プラットフォーム”であり、ようやく見つけたのがウイングアークのMotionBoardでした」と振り返る。


土木本部 生産技術本部 先端技術企画部 日暮 一正氏

 9月末から12月にかけてのトライアルでは、現場ダッシュボードの構築に取り組んだ。このボードでは、カメラ映像で現場の状況がリアルタイムに把握できる他、渋滞や天気など関連する情報もあわせて確認できる。また、工程や品質、図面など各業務システムのデータもシームレスに取得することができる。


現場管理ボード

 「フルクラウドで情報を集約できるMotionBoardはまさに我々が求めていたものでした。また、ウイングアークの担当者にも満足し、感謝しています。私たちの描くイメージに寄り添い、しかもスピーディに具現化できる提案力や対応力に驚きました。当社が利用していたSafie(セーフィー株式会社)というクラウドカメラとの接続の要望にもトライアル期間中に対応してくれました」(日暮氏)


 トライアルから本導入、さらなるブラッシュアップの過程では、先駆的な取り組みゆえの困難にも直面したという。


 「このような取り組みは他社事例でも目にしたことがなく、これで本当に良いのかと迷うこともありました。ウイングアークの担当者と一緒に現場へ提案し、機能が実装されたタブレットを持ち込んで触ってもらい、意見を聞きながら改修を繰り返しました」(田島氏)


 「画面レイアウトも、なかなか決まりませんでした。どのような情報があればいいのかさえ現場も手探りの中、仮説をもとに改修を繰り返しながらようやく今の形になりました。ウイングアークは要望を受けて形にするのではなく、現場の管理者と一緒にディスカッションするなど、我々と同じ立場になって取り組んでくれました。現場の所長も次々と要望が実装されて業務が変わっていくことを実感し、忙しい中でもウイングアークの訪問をいつも楽しみに待っていたようです」(日暮氏)


どこでも状況を把握でき業務が効率化


 こうしてMotionBoardで現場情報を集約することで、現場の工事長や職長といった管理者たちは、タブレットでリアルタイムに状況を把握でき、生産性向上と迅速な対応を実現した。


 「現場の所長は、事務所にいてもMotionBoardで現場の様子を確認し、なにかあれば即座に駆けつけることができますし、データを共有しながら指示をすることもできます。また、事務所での在席率が高くなった結果、本社からの対応を行う時間も確保できるようになり、本社や施主様とのコミュニケーションに割ける時間も増えた結果、全体的なクオリティ向上にもつながっています」(日暮氏)


 現在では、MotionBoardは現場の作業員へのリアルタイムな情報共有ツールとしても使われている。例えば、ストップウォッチで計測した現場の作業時間などを朝礼看板後に即座に共有することにより、現場の作業員がよりリアルに情報を把握できるといった効果も期待できる。


 また、品質確保のために先進的な取り組みを行っている例として、大林組の優位性を分かりやすく対外的に示すのにも役立っているという。


 「先日、さまざまなゼネコンと取引がある施主様の経営陣が視察に訪れました。このボードを紹介したところ、“こういう時代が来たんだね”と驚いていらっしゃいました」(日暮氏)


データを使って現場の働き方をサポートしていく


 大林組では今後、MotionBoardを利用したこの仕組みを、すべての土木工事の現場に展開していきたい考えだ。いくら便利なものだとしても、現場に理解されなければ活用が進まないだろう。だが、導入済の現場にもたらした価値について社内で共有が進んでおり、期待は高まりつつあるという。


 「つい先日も新設現場の所長から、まずダッシュボードを導入するところから現場をスタートさせたいという話がありました。今後、現場の立ち上げとダッシュボードの導入がセットになってくれば、仕事のデザインが変わってくることになるでしょう。業務プロセスを変えてもらいたいというのが私たち先端技術企画部の想いであり、そうなるために便利さに気づいてもらえるようにすることがミッションだと考えています」(日暮氏)


 一方で、田島氏は「もともと現場管理の効率化を目的として情報集約に取り組んできましたが、本社や支店でもモニタリングしたり、現場でのデータを蓄積して横断的に分析したりするなど、活用の幅を広げようと考えています」と明かす。その一つが、現場での働き方のサポートだ。田島氏は「現場で課題が発生した際、報告が上がってくる前に本社で察知して支援の手を差し伸べることができれば、現場の人間の負担を減らすことができます」と説明する。働きやすい環境の整備は、人材不足を改善するためにも重要な取り組みだ。


全国ダッシュボード(※サンプルデータを使用しています)

 さらに日暮氏は、デジタルアーカイブの構築についてもアイデアを温めているという。


 「カメラ映像など多様なデータを、過去の現場における活動記録として残していくことで、新しい現場を立ち上げるときの参考として役立てたり、新人向けの教育の資料にしたりといった活用が可能になります。そう考えると、この取り組みの本当の成果は数年先に現れると言えます」


 こうした構想を前提に、日暮氏はウイングアークに対してさらなる期待を寄せる。


 「改めて強調したいのは、MotionBoardが優れた製品であること以上に、ウイングアークの“人”の素晴らしさです。私たちと向き合って業務の課題をよく理解した提案だけでなく、発想を掛け合わせた提案や、さまざまな製品をコーディネートした提案をしてもらえました。今後を見据えても、最高のパートナーに出会えたと思っています」


 大林組では、UAV(ドローン)、AR(拡張現実)、AIといった先端技術についても取り入れ、さらにデジタルツインの実現に向けても取り組んでいる。建設DXの先駆者としてのチャレンジは、人材不足に起因する業界の危機を乗り越え、130年に続く新たな歴史として刻まれていくだろう。


Company Profile

株式会社大林組

創業: 1892年1月
所在地:東京都港区
事業内容:国内建設事業(建築/土木)を中核として、海外建設事業、開発事業、グリーンエネルギー事業、新領域ビジネスの5つの分野において、グローバルに多様な事業を展開している。
URL:https://www.obayashi.co.jp/

(写真左より)
土木本部 生産技術本部 先端技術企画部 日暮 一正氏、田島 僚氏

導入製品

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