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スマートファクトリーとは?メリットや導入方法・成功事例3選も紹介

作成日:2022.10.18 更新日:2024.01.23

スマートファクトリーとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用しDXを推進している工場のことです。
しかし、概念が比較的新しいため、特徴や効果を十分に把握しきれていない方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、スマートファクトリーの目的やメリット、日本での成功事例を紹介します。
製造業でDX導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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スマートファクトリーとは

スマートファクトリー(Smart Factory)とは、工場のあらゆる機器や設備をコンピューターと接続し、稼働状況や品質を管理する工場のことです。

実現には、AIやIoTを導入し、業務プロセスの改善や生産性・品質向上を図る必要があります。

このスマートファクトリーという言葉は、ドイツの産業政策「インダストリー4.0」から提唱されました。

「インダストリー4.0」とは

「インダストリー4.0」とは、AIやIoTなどのIT技術を積極的に取り入れ、製造業を改革する取り組みです。

この概念は2011年にドイツ政府と民間企業が組んだプロジェクトから提唱され、第4次産業革命とも呼ばれます。

日本もドイツの流れを汲み、多くの企業で同様の取り組みが推進されています。

インダストリー4.0のコンセプトである考える工場を実現するには、スマートファクトリーが不可欠です。

日本におけるスマートファクトリーの取り組み

経済産業省は2017年に「スマートファクトリーロードマップ」を発表し、ものづくりのスマート化の指針を示しました。

スマートファクトリーの趣旨は、ものづくりのスマート化によるグローバル競争力の強化です。

この状態を実現させるにはまず、スマート化の構想を策定し、次にトライアルシステムを導入した後、運用へと進む導入ステップが必要になります。

スマートファクトリーの目的

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経済産業省のロードマップでは、スマートファクトリーの目的が7つ示されています。

以下では、取り組むべき項目を具体的に解説します。

※参考:「スマートファクトリーロードマップ」(経済産業省 中部経済産業局)

1.品質の向上

1つ目の目的は「品質向上」です。品質向上を実現するためには、以下の取り組みが挙げられます。

  • 不良率の低減
  • 品質の安定化やばらつきの低減
  • 設計品質の向上

スマートファクトリー化により作業工程で生じるミスを減らすことで、不良率の削減を図ることが可能です。

また、加工条件や作業条件を改善することで、加工で生じる誤差を最小化することもできるでしょう。

製品の品質に関わるデータの収集や分析の結果、修正や改善を行うことで品質の向上につながります。

2.コストの削減

2つ目の目的は「コスト削減」です。取り組むべき項目は4つあります。

  • 材料の使用量の削減
  • 生産のためのリソーセス削減
  • 在庫の削減
  • 設備の管理や状況把握の省力化

生産管理システムなどを活用することで、材料やエネルギーの使用量が最小化できる仕組みづくりが可能です。

また、需給予測にもとづき、生産計画や出荷計画、在庫調整の最適化を目指すことで、コスト削減の効果が期待できます。

3.生産性の向上

3つ目の目的は「生産性の向上」です。取り組むべき項目は3つあります。

  • 設備・ヒトの稼働率の向上
  • ヒトの作業の効率化、作業の削減や負担軽減
  • 設備の故障に伴う稼働停止の削減

作業の進捗データの収集や分析により、作業プロセスの最適化や作業効率の向上を図ることができます。

また、故障予測にもとづいた予防保全の実行も、生産性向上につながります。

4.製品化・量産化の期間短縮

4つ目の目的は「製品化・量産化の期間短縮」です。取り組むべき項目は3つあります。

  • 製品の開発や設計の自動化
  • 仕様変更への対応の迅速化
  • 生産ラインの設計や構築の短縮化

設計事例の収集や蓄積からモデル化までを体系的に担い、開発や設計の自動化を図ることができます。

さらに、シミュレーターを活用して生産ラインを最適化することで、生産ラインの設計・構築の短縮化なども可能です。

5.人材不足・育成への対応

5つ目の目的は「人材不足・育成への対応」です。取り組むべき項目は2つあります。

  • 多様な人材の活用
  • 技能の継承

従業員の特性情報をデータベース化することで、人材の適切な活用が可能になります。

また熟練者の技能や知識などのデータを蓄積し共有することで、経験によるギャップを埋めることもできるでしょう。

さらにロボット学習による、共同作業化の実現も期待されています。

6.新たな付加価値の提供・提供価値の向上

6つ目の目的は「新たな付加価値の提供・提供価値の向上」です。取り組むべき項目は4つあります。

  • 多様なニーズへの対応力の向上
  • 提供可能な加工技術の拡大
  • 新たな製品やサービスの提供
  • 製品の性能や機能の向上

製品の共通部分を定義し、設計や生産プロセスを共通化することで、多様な製品の生産が可能になります。

また、サプライチェーンの需要を予測することで、顧客ニーズにマッチした製品の提供が実現します。

7.リスク管理の強化

5つ目の目的は「リスク管理の強化」です。

スマートファクトリーでは製品にセンサーを搭載させ、製造過程から納品後までのデータを収集することが可能です。

この特性は製品のリスク管理の強化にも適応できます。例えば不具合が発生した際、早期にその問題を把握し、対応や対策へと活かせます。

スマートファクトリーのメリット

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スマートファクトリーを導入すると、企業にとってどのような利益があるのでしょうか。

代表的な5つのメリットを解説します。

企業価値の向上

1つ目のメリットは「企業価値の向上」です。

従来、工場は製品を「作る場所」でしかありませんでしたが、スマートファクトリーの出現によって顧客に「見せる場所」へと工場の役割が変化します。

顧客の利便性や対応スピードが改善されれば、より良いサービスの提供が可能です。

また、工程・製品の追跡によって、商品や企業への安心・安全性が高まり、他企業との差別化にもつなげられます。

生産性の向上

2つ目のメリットは「生産性の向上」です。

生産状況や実績、稼働状況などのデータ化によって保有資源を最大限に有効活用できれば、小さな投資で大きな利益の創出につなげられます。

また、生産ラインや作業工程、設備・材料の管理などの可視化により現状をリアルタイムに把握し、業務の改善点や課題が明確化できれば、業務効率や生産性の向上に役立ちます。

人材問題の解消

3つ目のメリットは「人材問題の解消」です。2つのポイントに焦点を当てて、解説します。

人手不足

AIやロボットの活用により、業務の自動化や省人化が可能です。

安全性の確保にリスクがあった業務に関して、機械化することでリスク低減やコスト削減が実現します。

ベテラン人材は毎年引退していく一方で、若手育成のための時間をさくことが困難な企業であっても、スマートファクトリー化を進めることで知識や技術の体系化ができ、効率よく人材を育成することが可能です。

技術の継承

熟練技術者の技能やノウハウをデータとして収集し、蓄積することで、ベテラン人材の経験や勘の数値化が可能です。

また、他の技術者とそれらの情報を共有したり、人材教育に活用したりすることで、知識やノウハウの継承が実現します。

人材の高齢化や外部環境の変化などに影響されることなく、生産性を確保することが可能です。

省エネ効果

4つ目のメリットは「省エネ効果」です。スマートファクトリーでは一般的に、FEMS(Factory Energy Management System)と呼ばれる工場エネルギー管理システムが導入されています。

この管理システムを用いれば、工場の稼働状況の把握や必要エネルギー量の計算、それらの調整などが可能です。エネルギー消費の最適化が実現すれば、省エネにつながります。

稼働の安定化

5つ目のメリットは「稼働の安定化」です。スマートファクトリーは不具合や故障の兆候を察知し、トラブルを未然に防ぐ予知保全に優れています。

製造ラインや設備が完全に停止する前に、そのリスクを検知できるため、安定した稼働の実現につながります。

さらに、生産機器や設備の状態に応じて部分発注や補充もでき、消耗部品の在庫数や発注頻度を大幅に下げることが可能です。

スマートファクトリーの課題

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効果的なスマートファクトリーの実現には、メリットだけでなく課題の理解も重要です。

留意すべきポイントを4つ解説します。

コストがかかる

スマートファクトリーには機器やシステムを新たに導入する必要があるため、一定のコスト(例えば最新技術を搭載した機器や、ロボットなどの購入費用)がかかります。

他にも状況に応じて、新たなシステムを操作する従業員を教育するためには、その教育費用も必要です。

工場や事業が大きくなるほど、その分コストが上昇する恐れがある点に注意しましょう。

セキュリティの強化が必要

スマートファクトリーは工場や製品など、事業のあらゆるもののネットワーク接続が欠かせません。

ネットワークに接続され続けている分、セキュリティの強化が必要です。

サイバー攻撃やマルウェア感染などによる情報漏えいや、データ破壊のリスクに対して、スマートファクトリー化する段階から対策することが重要です。

設備ごとのメンテナンスが必要

スマートファクトリーでは多種多様な機器や設備が導入されます。

たとえ高性能な機器によって自動化された向上であったとしても、定期的にそれぞれの設備をメンテナンスする必要があります。

継続的かつ安定的に設備を利用するには、機器類に精通した作業員やメンテナンスマニュアルが不可欠です。導入だけでなくメンテナンスにも、手間やコストがかかります。

既存の古い設備がスマート化できない

古い機器を刷新できずに使い続けていることで、スマートファクトリー化が進まないという課題もあります。

日本機械工業連合会の調査によると、保有期間が「10年以上」経過している生産設備が約62.4%を占めているという結果が出ており、製造現場にはまだまだ老朽化した設備が多いと言えるでしょう。

古い設備にはスマート化に対応できていないものも多いため、スマートファクトリー化が進まない原因にもつながっています。

※参考:生産設備保有期間実態調査の結果概要

スマートファクトリー化の流れ

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経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」ではデータ活用の詳細について、以下の3つのレベルごとに示しています。

  • レベル1.データ収集・蓄積・可視化
  • レベル2.データ分析・予測
  • レベル3.最適化

レベル1.データ収集・蓄積・可視化

レベル1では目的を達成するために有益なデータを見極め、IoTやAIなどを活用して収集し、情報を可視化します。

収集された情報は、ノウハウや知見の蓄積につなげることが可能です。

例えば、生産性向上を目的に設備の故障に伴う稼動停⽌の削減を行う場合、設備にセンサーを取り付けてモニタリングすることで、設備の稼働状況を収集・監視することができ、異常や故障が発⽣した際には早期に通知することが可能です。

レベル2.データ分析・予測

レベル2では収集した膨大なデータを分析・学習し、目的達成に必要な要素の抽出や、事象のモデル化やパターン化によって将来予測をします。

例えば、設備の故障に伴う稼動停⽌の削減を行う場合には、収集したデータと設備異常とを関連付けて、設備の故障につながる兆候・条件を明らかにすることで、故障の発⽣時期を予測することが可能です。

レベル3.最適化

レベル3では蓄積した知見・ノウハウや構築したモデルによる将来予測をもとに、設備を制御して最適な判断・実行をします。

生産計画や作業工程の最適化は、この段階で実行可能です。

例えば、設備の故障に伴う稼動停⽌の削減を行う場合には、設備の故障予測に基づき、予防保全することで、故障の発⽣を抑制し、想定外の稼動停⽌時間を削減・最⼩化することができます。

スマートファクトリーの成功事例4選

日本の多くの企業でスマートファクトリーの導入が進められています。

代表的な成功事例を4つ紹介します。

製造ライン全体の設備状況をリアルタイムに可視化(東洋製罐)

包装容器の製造を行う東洋製罐株式会社では、デジタルトランスフォーメーション(DX)による経営改革の一環として、製造ラインにおける複数の設備のデータを取り込むことで、製造ライン全体の状況をリアルタイムで可視化しています。

現場の人手不足や担当者の高齢化が課題となりつつあり、経験の浅い社員でも品質を保持しながら効率的にラインを稼働できる体制づくりが求められていましたが、製造ライン全体の状況がリアルタイムに把握できるようになったことで、少ない人数でも品質を保持しながらラインを稼働できるようになり、属人化の解消や、より効率的な生産につながっています。

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製造ライン全体の設備状況をリアルタイムに可視化 「匠の技」を数値化し、より効率的で質の高い生産体制を構築

工場内のすべてのモノを可視化(ヤマザキマザック)

工作機器メーカーであるヤマザキマザック株式会社では、多品種少量生産の工場内で部材の物流管理を可視化する際、スマートファクトリーが活用されています。

物流管理BI(ビジネスインテリジェンス)を用いて部材の滞在時間を色別で表示し、どこで部材が滞留しやすいか直感的に把握できるようダッシュボード化した結果、部材の輸送タイムラインが明確になり、在庫・資産管理や現場の生産性向上に成功しました。

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「RFIDタグで工場内のすべてのモノを可視化したい」現場の期待値を超え続ける、独自の物流管理BI「ID TRACKING PLUS」

スマートファクトリー化により生産性と品質向上(日本特殊陶業)

セラミック製品を手掛ける日本特殊陶業株式会社では、スマートファクトリー化に向け、IoTデータをリアルタイムで可視化できる取り組みを進めています。

今までは各工場からIoTデータを取得していましたが、リアルタイムで高速に解析できる技術を導入し、現場の状況を効率的に把握する手段としてその技術を役立てています。

設備稼働や生産数の可視化は、作業工程におけるボトルネックの早期解決にもつながっています。

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見える化によって設備総合効率を最大化スマートファクトリー化によって高い生産性・高品質を目指す

全25項目の製造管理指標の見える化(パナソニック)

パナソニック株式会社 アプライアンス社では家庭用燃料電池「エネファーム」の製造過程において、品質や生産進捗、4M3Hの変化点など全25項目にわたる製造管理指標をBIツール「MotionBoard」で一元管理し、リアルタイムで可視化しています。

IoTの仕組みを単にものづくりに活用するだけでなく、収集されたデータを有効に活用できる「人材」にも重点をおきながら、高効率・高品質の実現に注力している成功事例です。

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IoTを基軸に高品質・高効率の工場を目指して、4M3Hの変化点、生産進捗、品質データなど、製造管理指標を25項目にわたり一元的に見える化。

まとめ

スマートファクトリーではAIやIoTを導入し、製造業務で生じるプロセスの改善や生産性・品質向上の実現を図ることができます。

近年国を挙げてスマートファクトリーの推進がなされており、今後ますますその重要性は高まっていくでしょう。

ウィングアーク1stのBIツール「MotionBoard」は、スマートファクトリーを推進するために不可欠である、データの収集から可視化までを一気通貫で実現できるソリューションです。

スマートファクトリー化を検討している方、DXの推進に興味のある方はお気軽にご相談ください。

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