コロナ禍をきっかけにテレワークを導入する企業が急拡大しました。しかし、その流れから取り残されてきたのが、経理をはじめとする管理部門です。請求書や領収書、あるいは各業務部門の担当者から寄せられる経費の申請書など多くの書類が紙で回されているからです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれてはいますが、経理などの管理業務は後回しにされがちです。顧客や取引先など社外の相手との文書を扱うだけに、それが簡単ではないのも事実です。
ウイングアーク1st(以下、ウイングアーク)は「顧客のDX」実現の第一段階として、デジタル業務環境の社内構築とノウハウの蓄積を進めており、経理部門でもさまざまな文書のペーパーレス化に取り組み、今回のコロナ禍においてもスムーズに経理部門のテレワークを実現しました。
ウイングアークがどのように「経理DX」を実践してきたのか、その取り組みをご紹介します。
紙の帳票でも、経理業務は成り立ってしまうんですよ...
なぜ、これまで経理部門のデジタル化はなかなか進まなかったのでしょうか。その疑問を、ウイングアーク1st 取締役 執行役員 CFOの藤本にぶつけてみました。
「経理DXの実現が難しいのは、仮に紙の帳票を残して何も見直さなかったとしても、業務そのものが成り立ってしまっていたからだと思います。また、電子化にあたっては、電子帳簿保存法(電帳法)に従う必要があることも高いハードルになっているのかもしれません。紙を減らし、帳票をデジタル化し、業務プロセスを変革するには、『強い意志』が必要なのだと思います」
ウイングアークが、経理部門のデジタル化を本格化させるきっかけとなったのも、実は、電子帳簿保存法における「スキャナ保存制度」の改定がきっかけです。それまでスキャナ対象書類の条件となっていた3万円未満という金額基準が2016年に撤廃され、2017年からは領収書を受領した本人がスマートフォンでその伝票を撮影して電子ファイル化することが可能になりました。ただし、こうした規制緩和は、無条件で適用されるわけではありません。
領収書を受領した翌日から3日以内にスキャンまたは撮影し、その電子ファイルにタイムスタンプを付与する必要があります。
このような「電子帳簿保存法」への対応は我々だけではなく、顧客企業がDXを実現する上でも重要なテーマであり、まず自社自身の環境の整備とノウハウ蓄積に取り組む必要があるとの認識からこの取り組みが始まりました。
「帳票システム『SVF』の提供を通じて、国内企業における紙出力の約7割を担っているウイングアークの責務として、社内業務のデジタル化を実践してみせる必要があると考えていました」(藤本)
SVFとinvoiceAgent 文書管理で、帳票のペーパーレス化と法対応を進める
ウイングアークには総合帳票基盤ソリューション「SVF」をはじめ、スキャナ保存申請における公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)認証取得済みのドキュメント管理ソリューション「invoiceAgent 文書管理」など、データおよび電子文書活用のためのソフトウェア製品があります。それらを、社内のあらゆる業務に適用してきたことが、経理DXをスムーズに進められた背景にあります。
また、ウイングアークには多数の文書情報管理士が在籍しています。そのノウハウを生かす形で電子帳簿保存法対応の要件を満たしつつ、さまざまな帳票のペーパーレス化を進めるとともに、その後の法改正にも積極的に対応して、社内業務での実践を重ねてきました。
「その結果として、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発出された際にも、経理業務をまったく止めることなく、すべての社員をすぐにテレワークに移行することができました」(藤本)
「ツールだけではうまくいきません。全社で意識を合わせることが大切です。」
しかし、単にSVFやinvoiceAgent 文書管理といったツールがあるというだけでは、経理DXは実現できないのも事実です。これらのツールを業務で自発的に活用し、変革を進めていこうという文化・風土が大切だと思います。例えば、領収書のデジタル申請などは、個々の従業員の協力が必要になります。
「私たちはトップダウンとボトムアップの両面からデジタル化、ペーパーレス化を推進することで、社内文化の形成に取り組み、全社で意識を合わせてきました」(藤本)
また、経理部に所属する際(きわ)も、従業員一人ひとりの意識が大切だと話します。
「会社全体の総意として『紙を減らすことが働き方改革につながる』と意識して取り組んでいたからこそ、ツールを効果的に活用できています。例えば、請求書や領収書は電子データをワークフローに添付してinvoiceAgent 文書管理に保存することを一人ひとりが徹底したことで、申請する側も、承認する側も、みんなでテレワークに移行することができました」
経理部が商談に加わりDXを実現する、という新しい働き
こうした経理DXによる成果として、経理部における働き方改革も大きく前進しました。会計システムにデータを入力する作業や、大量の伝票処理に日々追われていた作業負荷が軽減され、それによって余裕のできた時間をより創造的な業務に割くことが可能となりました。
際は現在、経理部に所属するかたわら、営業担当者とともに商談に加わり、経理DXを目指すお客様に対して自分たちの取り組みを紹介するエバンジェリストとして活動しています。経理DXを実現することで、これまでになかった形での人材育成・活用ができるようになったわけです。
「これまで経理だけをやってきた私が、お客様と直接コンタクトすることになるとは、まったく考えてもいませんでした。まだまだ勉強することはたくさんありますが、自分自身の新しい可能性にチャレンジしたいと思っています」(際)
どう変わりたいのかというビジョンを描き、熱意をもって取り組む
ウイングアークでは、このような自社の実践体験をベースに、さまざまな企業に経理DXへの取り組みを支援しています。
SVF、invoiceAgent 文書管理、Dr.Sum、MotionBoardといったツールを統合する「SPA Integration Service(SPA IS)」や、人とシステムを"コミュニケーション"でつなぐプラットフォーム「dejiren」を通じてペーパーレス化やデータ活用を実現していきますが、提供するのはプロダクトだけではありません。
「各ツールの利用方法からDX化、全社組織への定着まで一貫してサポートするウイングアークのDX推進支援部隊が、いわば運命共同体となって、お客様が成功するまで伴走します」(藤本)
例えば、2020年度には、大手ライフライン会社や大手フィットネス会社などに対して経理DXを提案。経理部門におけるハンコと紙からの脱却、電子帳簿保存法の適用、倉庫の保管帳票の電子化、請求書の郵送業務のWeb配信化などを実現し、業務効率化の大きな成果を上げました。現在では、経理部門だけでなく全社のDXプロジェクトを推進している部門の窓口と継続的に情報交換を行っています。
あるお客さまの経営層の方は、経理DXに取り組む以前、帳票のペーパーレス化や経理部門のテレワーク化に対して、「自宅で請求書が見えるのはセキュリティ的に問題」と難色を示されていました。ところが経理DXが進むにつれ、「もっとペースを上げて、早く電子決済ができるようにしたい」と意識に大きな変化が起きました。経営層の意識が変わることで、その熱意が組織の隅々にまで浸透し、DXを求めるボトムアップの機運も高まってきたそうです。
今般のコロナ禍は、あらゆる業界のビジネスに影響を及ぼしています。でも、見方を変えれば、企業文化・風土を変革させるチャンスでもあります。この機を生かせるかどうかは、「自分たちがどう変わりたいのか」というビジョンを描き、その目標に近づくためにデジタル化を推進するという熱意がどこまであるかだと思います。どのようにして経理DXを始めようかと検討されているのであれば、ぜひウイングアークにご相談ください。
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