コーポレートガバナンスの基礎知識
まずはコーポレートガバナンスの基礎知識として、その意味や注目されている背景、類似用語との違いを解説します。
コーポレートガバナンスとは?
「コーポレートガバナンス(Corporate Governance)」とは、企業経営を監視する仕組みのことを指し、日本語では「企業統治」とも呼ばれます。
コーポレートガバナンスは「株式会社は資本を投下している株主のものであり、経営者のものではない」という「所有と経営の分離」の考えに基づいており、企業の不正や経営者による独善的な判断・運営を防止し、長期的な企業価値の増大を目指すためのものです。
コーポレートガバナンスを省略して「ガバナンス」と呼ぶことも多く、コーポレートガバナンスが有効に機能している状態を指して、「ガバナンスが保たれている」や「ガバナンスが効いている」と表現します。
コーポレートガバナンスが注目される背景
コーポレートガバナンスは、1960年代のアメリカで「企業の非倫理的・非人道的な行動を抑止するべき」という文脈で用いられるようになりました。
1980年代に入り、アメリカ国内で大規模な企業買収が活発化するなかで、コーポレートガバナンスへの関心は一層高まります。
日本国内においては、バブル崩壊後の1990年代以降にコーポレートガバナンスの重要性が唱えられ始めました。
それ以前の日本企業においては、メインバンク(主要取引銀行)が企業の意思決定に大きな影響力を持っており、企業統治の役割を担っていました。
しかし1990年代に入り、金融・資本市場の規制緩和やグローバル化が進むにつれ、株主構成も大きく変化し、メインバンクの影響力は縮小していきます。
また、バブル崩壊を契機に企業による不正経理や粉飾決算などの不祥事が頻発したことも大きな問題となりました。
こうした背景があり、株主の立場や権利を確保しつつ、企業の健全な発展を促すための仕組みとしてコーポレートガバナンスの注目が高まっていったのです。
類似用語との違いや関係性
コーポレートガバナンスと混同しがちな言葉として、以下が挙げられます。
- コンプライアンス
- 内部統制
- CSR
それぞれ、コーポレートガバナンスとの違いを見ていきましょう。
コンプライアンスとの違いと関係性
「コンプライアンス(Compliance)」は、「法令遵守」と訳されるのが一般的です。
企業におけるコンプライアンスは、「法令はもとより、法律で明文化されていない社会的規範も含めたルールの遵守」という意味合いを持ちます。
企業活動を行うなかでコンプライアンスが徹底されていない場合、企業イメージの失墜や法的な制裁につながります。
コンプライアンスは健全に事業活動を行うための前提であり、コーポレートガバナンスを維持・強化する上で欠かせない要素だと言えます。
内部統制との違いや関係性
「内部統制」は、「健全かつ効率的に企業経営を行う上で、経営者を含むすべての従業員が遵守するべきルールや仕組み」のことを指します。
コーポレートガバナンスは主に株主の保護を目的とした対外的な仕組みであるのに対し、内部統制はあくまで組織内の統制・管理を目的とした対内的な仕組みだと言えます。
とはいえ、どちらも健全な企業経営のための仕組みであり、コーポレートガバナンスを強化していくためには内部統制の取り組みも不可欠だと言えます。
CSRとの違いと関係性
「CSR(Corporate Social Responsibility)」は、「企業が果たすべき社会的責任」を意味します。
この社会的責任とは、株主や取引先、従業員といったステークホルダーに対する責任だけでなく、環境保護や寄付活動といった社会貢献も含まれます。
つまりコーポレートガバナンスは、CSR(企業の社会的責任)を果たすための仕組みのひとつだと言えるでしょう。
コーポレートガバナンスの目的とは?
コーポレートガバナンスの目的として、大きく以下の2つを挙げることができます。
- 経営の透明性確保
- 中長期的な企業価値の向上
2つの目的について、詳しく見ていきましょう。
経営の透明性確保
コーポレートガバナンスの目的のひとつが、経営の透明性確保です。
経営者は、会社の所有者である株主に対して利益を最大限還元していく責任があります。
しかし、経営の透明性が担保されていない場合、株主の立場や権利が尊重されず、経営者の独善的な意思決定や組織ぐるみの不正や隠ぺいが行われてしまう可能性が否定できません。
企業経営が公正に行われているかを監視し、経営戦略や財務状況、リスクマネジメントなどの情報を適切に開示するための仕組みとして、コーポレートガバナンスが必要なのです。
中長期的な企業価値の向上
中長期的な企業価値の向上も、コーポレートガバナンスの目的だと言えます。
コーポレートガバナンスの強化に取り組み企業経営の透明性が高まることで、ステークホルダーとの良好な関係性につながり、金融機関や投資家から新たな出資を受けやすくなります。
資金調達が円滑になることで財務状況の安定性が増し、事業投資や優秀な人材獲得を行いやすくなり、持続的な成長基盤を整えることができます。
コーポレートガバナンス・コードとは?
上場企業がコーポレートガバナンスに取り組むうえで参照すべきガイドラインとして、東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」を公表しています。
東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コードについて以下のように説明しています。
中長期的な企業価値増大に向けた経営者による的確な意思決定を支える実務的な枠組みを示したものがCGコードであり、投資家との建設的な対話における共通基盤といえます。
(引用元:コーポレートガバナンス・コードの全原則適用に係る対応について)
コーポレートガバナンス・コードは、以下5つの基本原則から成り立っています。
- 基本原則1.株主の権利・平等性の確保
- 基本原則2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 基本原則3.適切な情報開示と透明性の確保
- 基本原則4.取締役会等の責務
- 基本原則5.株主との対話
さらに、基本原則を実現するための31項目の「原則」、一部の企業に適用される47項目の「補充原則」が存在し、コーポレートガバナンスは3層構造となっています。
スタンダード市場とプライム市場の上場会社は「基本原則」「原則」「補充原則」の3層すべてが適用され、グロース市場の上場会社は「基本原則」が適用され、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain:遵守せよ、さもなくばその理由を説明せよ)」が求められます。
また、コーポレートガバナンス・コードは上場企業を対象としたガイドラインですが、ガバナンス強化の取り組みは非上場企業にとっても重要です。
たとえば、経営状況の透明性や健全性が担保されていない企業に対して、融資したいと考える金融機関や取引を開始したいと考える企業はいないでしょう。
上場・非上場に関わらず、企業としての社会的信用を高めるためにはコーポレートガバナンス強化の取り組みが不可欠だと言えるでしょう。
文書の電子化がガバナンス強化に有効な理由
コーポレートガバナンスの強化につながる取り組みのひとつに、文書の電子化があります。
次は、文書の電子化がコーポレートガバナンス強化の取り組みとして有効な理由を見ていきましょう。
強固な内部統制の構築
先述の通り、コーポレートガバナンスと内部統制は相互に関係しており、コーポレートガバナンスを強化するには内部統制の強化も欠かせません。
しかし、紙の文書を使った業務では、文書の改ざんや持ち出しによる情報漏えいといったリスクがつきまとい、内部統制の観点で課題が残ります。
一方、電子化された文書であれば、文書データに対して個別に閲覧権限を設定したり、証跡をシステムに記録することで改ざんを検出・抑止でき、強固な内部統制を構築可能です。
また、自然災害や人的災害によって文書が物理的に紛失・破損してしまう心配もないため、情報資産の損失リスク低減にも有効です。
監査対応の効率化・迅速化
コーポレートガバナンスを強化するためには、経営状況について第三者視点で評価・監視する仕組み、つまり監査が必要です。
しかし、紙ベースで文書管理を行っている場合、監査対応の負担が大きくなってしまうケースが少なくありません。
たとえば、監査で過去の証憑の提出を求められた際、大量の書類のなかから該当の証憑を探し出すのは多くの工数を要してしまいます。
また、紙文書をつかったアナログ業務では、照合作業に時間がかかってしまうほか、ヒューマンエラーが発生しやすく、監査対応の工数が増えてしまいがちです。
一方、電子化された証憑であれば、取引年月日や取引先名、あるいは文書内の情報で検索を行うことが可能です。必要な証憑を速やかに提示することができるため、監査対応を効率化することができるでしょう。
ガバナンス強化を実現するソリューションは?
次は、ガバナンス強化に役立つソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」をご紹介します。
「invoiceAgent」には以下4つの製品をラインナップしており、目的に応じた文書・業務の電子化を実現することが可能です。
- 紙文書を電子化する「invoiceAgent AI OCR」
- 電子文書を一元管理する「invoiceAgent 文書管理」
- 帳票の送受信を電子化する「invoiceAgent 電子取引」
- 契約手続きを電子化する「invoiceAgent 電子契約」
では、各製品の特徴を説明していきます。
紙文書を電子化する「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙の文書を電子化するソリューションです。
「invoiceAgent AI OCR」には高精度なOCR(光学的文字認識)エンジンが搭載されており、文書に応じてOCRエンジンを選択したり、複数のOCRエンジンを組み合わせることができます。OCR機能に加え、自動補正機能によって活字や手書き文字の認識率を高めることが可能です。
これらの特徴により、システム入力や目視による確認の工数を削減し、業務効率化やRPA連携による自動化を実現します。
電子文書を一元管理「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、電子化した文書の一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent AI OCR」で電子化した文書データはもちろん、他システムで出力したり新規作成した文書データをまとめて取り込み、自動で仕分け保管を行います。
高度な検索機能によって必要な文書を速やかに参照できるほか、文書の保存期間に応じた自動削除機能や証跡管理機能によって、文書管理の効率化を実現します。
電子帳票の送受信なら「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、請求書などの企業間で取引される帳票の送受信を実現するソリューションです。
PDF化した帳票を専用のWebサイトにアップロードするだけで配信・受信することができ、複数の取引先とのやりとりを1つのプラットフォーム上で管理することが可能です。
電子帳簿保存法の電子取引要件に対応しているほか、2023年10月に開始するインボイス制度にも対応することができます。
契約手続きの電子化に「invoiceAgent 電子契約」
「invoiceAgent 電子契約」は、商取引における契約の確認・署名・管理をクラウド上で実現する電子契約ソリューションです。
ウイングアーク1stが立会人となり電子署名・タイムスタンプを付与し、紙の契約書と同等の証拠力を担保します。
「invoiceAgent」の他製品と組み合わせることで、契約に基づき流通する関連文書のWeb配信や管理を一気通貫で実現でき、業務効率化や内部統制の強化に効果を発揮します。
文書の電子化でガバナンス強化を実現した事例
最後に、「invoiceAgent」を活用してガバナンスを強化した企業事例をご紹介します。
プラスチック成形に関わる機器の開発・製造・販売を手掛ける株式会社松井製作所は、「invoiceAgent 文書管理」を活用してペーパーレスによる情報活用の新たな仕組みを構築しました。
同社では「invoiceAgent 文書管理」の導入以前、設計図面や技術情報を紙文書で扱っていたものの、情報の更新や共有に時間がかかり、セキュリティの面でも課題を感じていました。
「invoiceAgent 文書管理」の導入により、文書の更新や追加、各拠点への共有をリアルタイムに行えるようになり、情報活用の効率が大幅に改善。
さらに、各拠点で管理されていた文書を本社で一元管理できるようになったほか、アクセス権限などを厳格にコントロールすることで情報管理のガバナンス・セキュリティ強化に大きな効果を得ています。
▼事例詳細はこちら
株式会社松井製作所のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、コーポレートガバナンスの基礎知識や強化方法・事例をご紹介しました。
コーポレートガバナンスは、事業活動の健全性を保ち、長期的な企業価値の向上を図るために必要な仕組みであり、すべての企業が強化に取り組むべきものです。
ガバナンス強化に課題を感じていたり、取り組み方に迷っている企業は、今回ご紹介した情報も参考に文書の電子化から始めてみてはいかがでしょうか。