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インボイス制度の経過措置とは?その内容や必要な対応・準備を解説!

法対応作成日:2023.05.31 更新日:2024.02.16

2023年10月1日開始のインボイス制度により、原則として免税事業者からの仕入税額控除が適用外となります。
しかし、課税事業者との取引がある免税事業者、および免税事業者からの仕入取引がある課税事業者への影響が大きいことから、インボイス制度には一定期間の経過措置が設けられています。

この記事では、インボイス制度の経過措置に焦点を当て、その内容や経過措置期間中に事業者が進めるべき準備・対応を解説します。
インボイス制度対応に有効なソリューションも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

【インボイス制度】発行準備だけでは不十分!

インボイス制度の開始に向けて、適格請求書の発行準備は済んでいるという企業も多い一方で、受領や保存についての対応は進んでいますか?
この資料では、今すぐ取りかかるべき改正電帳法への対応や経理担当者の業務負担増といった課題への解決策をわかりやすくご紹介します!

インボイス制度の要点をおさらい

まずは、インボイス制度の概要について簡単におさらいしておきましょう。

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除に関する新制度のことで、正式名称を「適格請求書等保存方式」と言います。
インボイス制度が開始された2023年10月以降、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、「適格請求書(通称:インボイス)」の適正保存が必要になります。
そして、適格請求書を発行することができるのは、所轄税務署に事前申請を行い、適格請求書発行事業者として登録を受けた課税事業者のみです。

そのため、免税事業者は課税事業者になるか否かの選択を、課税事業者は免税事業者からの仕入取引を継続するか否かの選択を迫られているのです。

ただし、これらの選択は事業活動に大きな影響を及ぼすものであり、すぐに決断を下すのが難しいという事業者も少なくありません。
こうした状況を考慮し、インボイス制度には一定の経過措置が設けられています。

インボイス制度の経過措置の内容とは?

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先述の通り、インボイス制度には経過措置が設けられています。
では、経過措置の適用期間や控除率、必要書類といった内容を確認していきましょう。

経過措置の適用期間

インボイス制度の経過措置の期間は、軽減税率制度が始まった2019年10月からの4年間、そしてインボイス制度が始まった2023年10月から2029年9月までの6年間、あわせて10年間となっています。

2019年10月1日から2023年9月30日までの4年間は「区分記載請求書等保存方式」が適用されており、区分記載請求書を適正保存することで、免税事業者からの課税仕入税額を全額控除することが可能となります。

また、インボイス制度が始まった2023年10月1日から2029年9月30日までの6年間は、後述する必要書類を保存することで、免税事業者からの課税仕入税額の一定割合を控除することができます。

経過措置の控除率と必要書類

インボイス制度開始後の2023年10月から2029年9月30日までの6年間は、免税事業者からの仕入であっても一定割合の仕入税額控除が可能です。

ただし、以下のように期間によって適用される控除の割合が異なるため注意が必要です。

  • 2023年10月1日~2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
  • 2026年10月1日~2029年9月30日:仕入税額相当額の50%
(参考:経過措置(免税事業者からの仕入れに係る経過措置)|国税庁

例として、課税売上に係る消費税額が100万円、課税仕入等に係る消費税額が30万円のケースで考えてみましょう。
このケースでは、期間別の納税額を計算式に表すと以下の通りです。

  • 2023年9月30日まで
    100万円-(30万円×100%
    =100万円-30万円
    =70万円
  • 2023年10月1日から2026年9月30日まで
    100万円-(30万円×80%
    100万円-24万円
    =76万円
  • 2026年10月1日から2029年9月30日まで
    100万円-(30万円×50%
    100万円-15万円
    =85万円
  • 2029年10月1日から
    100万円-(30万円×0%
    100万円-0円
    =100万円

なお、経過措置の適用を受けるには、以下の要件を満たす帳簿および請求書等の保存が必要となります。

  • 帳簿:区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載(「80%控除対象」など)が必要。
  • 請求書等:区分記載請求書と同様の記載事項が必要。
(参考:経過措置(免税事業者からの仕入れに係る経過措置)|国税庁

インボイス制度に向けた企業の動向

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次は、ウイングアーク1stが実施した「インボイス制度に向けた企業間取引の電子化に関する対策調査」を基に、インボイス制度に関する国内企業の動向を確認していきましょう。

<調査概要>

  • 調査名:インボイス制度に向けた企業間取引の電子化に関する対策調査
  • 有効対象:100億円以上の売上の企業に所属する請求書関連業務に携わる会社員
  • 有効回答数:500名(建設業101名、製造業104名、情報システム・ソフトウェア業103名、金融・保険業104名、卸売り・小売業88名)
    ※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
  • 調査期間:2022年12月2日〜同年12月6日

▼調査の詳細はこちら
大企業を中心としたインボイス制度対策状況を調査 インボイス制度対応中は41.0%に上昇、財務経理部門と情シス・DX推進部門間連携は3ヶ月半で約20%加速 | ウイングアーク1stコーポレートサイト

約半数の企業が取引先に対して課税事業者への移行を依頼(依頼予定)

この調査では、「免税事業者の取引先に課税事業者への移行を依頼しましたか」という質問を実施しています。
その結果、「すでに依頼した」という回答が19.8%、「まだ依頼していないが依頼する予定」という回答が27.6%となり、約半数(47.4%)の企業が免税事業者の取引先に対して課税事業者への移行を依頼済み、あるいは依頼予定ということが判明しました。

また、取引先の免税事業者が課税事業者へ移行しない場合、78.7%の企業が「今後の取引に影響する」と回答しています。

「最大3年間は取引を継続」する意向の企業は約半数

同調査では、「取引先が免税事業者のままであるとしても(課税事業者への変更せずとも)どれほどの期間、取引を継続する意向がありますか」という質問も実施しています。
この質問に対し、最多の回答が「2~3年間は取引を継続する」で33.8%、次いで「1年間は取引を継続する」という回答が18.8%。

つまり約半数の企業は、取引先が免税事業者のままでも「最大3年間は取引を継続する意向」という結果となりました。
逆に言えば、免税事業者は3年以内に課税事業者へと移行しない場合、取引を打ち切られる可能性が高いと捉えることができるでしょう。

経過措置期間に進めるべき準備・対応

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ここまでは、インボイス制度の経過措置の概要や、国内企業の動向について紹介してきました。
次は、免税事業者との取引がある買い手企業の目線と、課税事業者との取引がある免税事業者の目線で、経過措置期間に進めるべき準備・対応を確認していきましょう。

買い手企業の準備・対応

免税事業者との取引がある課税事業者は、取引先の意向を確認したうえで適切な対応を進める必要があります。

インボイス制度開始後も6年間は一定割合の控除が認められるとは言え、段階的に控除率が引き下げられるため、免税事業者からの課税仕入れにおける自己負担額は大きくなっていきます。
免税事業者からの仕入取引がある課税事業者は、2023年10月以降の課税仕入税額について試算を行うなどして、「免税事業者からの仕入取引をいつまで継続するのか」という方針を明確にすることが大切です。
そのうえで、取引先の免税事業者に対して課税事業者への切り替え予定を確認しましょう。
取引先の対応状況や対応予定に応じて、課税事業者への変更および適格請求書発行事業者への登録を依頼したり、場合によっては取引の見直しを進める必要があるでしょう。

免税事業者の準備・対応

免税事業者においては、課税事業者になるか否かの選択を迫られています。

一般消費者を対象としたBtoCの免税事業者であれば、仕入税額控除のために適格請求書の発行を求められることがないため、免税事業者のままでも問題ない可能性があります。
ただし、一般消費者が顧客のBtoC事業者であっても、高級レストランや料亭など、会社の接待で利用されることが多い業態ならば、適格請求書発行事業者になることが求められるケースもあります。

課税事業者との取引があるBtoBの免税事業者は、できる早い段階で課税事業者になるか否かを判断を下す必要があります。
ただし、すべての売上先が簡易課税制度を採用していれば適格請求書発行事業者になる必要はないため、BtoB事業であっても免税事業者のままでいられるケースも考えられます。

適格請求書発行事業者の登録申請について

通常、免税事業者から課税事業者になるには「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要がありますが、インボイス制度開始に伴い適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合には、登録を受けたその日から課税事業者となります。

インボイス制度開始後の2023年10月1日以降に適格請求書発行事業者の申請を行う場合は、登録申請書の提出日から15日以降の日を登録希望日として記載することができます。

「簡易課税」や「2割特例」の利用も一策

消費税の納税に関する事務処理負担がネックで、課税事業者への切り替えをためらってしまう免税事業者も少なくないことでしょう。
そのような場合は、「簡易課税制度」の利用を選択肢に加えてみることをおすすめします。

以下の記事では、簡易課税制度について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

また、令和5年度税制改正により、2023年10月からの3年間は2割特例」と呼ばれる措置を利用することが可能になりました。
免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者は、この「2割特例」を利用することで、売上税額の2割を納税額とすることができます。
つまり、税率ごとの売上・収入を把握するだけで納税額の申告が可能になり、事務処理負担を抑えることができるでしょう。

インボイス制度対応なら「invoiceAgent」

インボイス制度の開始後は、今まで以上に請求業務が煩雑化することが考えられます。
そのため、先述したインボイス制度の準備・対応を進めるだけでなく、請求業務自体の効率化を進めることも大切です。

次は、インボイス制度への対応、そして請求業務の効率化に役立つ具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent 電子取引(インボイスエージェント 電子取引)」をご紹介します。

請求書の送受信を電子化

「invoiceAgent 電子取引」は、請求書などの企業間取引文書の送受信を電子化するソリューションです。

PDFファイルをアップロードするだけで取引先に請求書をWeb配信することができ、取引先から発行される関連帳票も「invoiceAgent 電子取引」を介して受け取れます。
また、請求データのCSVファイルを所定のフォルダにアップロードすることで、自動的にPDF出力することも可能です。

また、郵送サービスのオプションも用意しているので、Web配信と郵送のハイブリッド運用を実現可能です。

インボイス制度に対応する各種機能を搭載

「invoiceAgent 電子取引」は、インボイス制度に対応する各種機能を搭載しています。

デジタルインボイス(電子化された適格請求書)の標準仕様である「Peppol」経由のデータ送受に対応しているほか、受領した適格請求書のデータ化や適格請求書発行事業者の登録番号照合もできるようになります。
これらの機能によって、インボイス制度開始後の請求関連業務を効率化ることができるでしょう。

電子帳簿保存法の要件を満たす「JIIMA認証」取得

「invoiceAgent 電子取引」は「JIIMA認証」取得サービスです。
「JIIMA認証」とは、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が管理する認証制度のことで、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェアに対して認証が与えられます。
JIIMA認証を取得している「invoiceAgent 電子取引」であれば、請求書を送る側も受け取る側も電子帳簿保存法に対応することが可能です。

まとめ

今回は、インボイス制度の経過措置に焦点を当て、その内容や準備のポイントをご紹介しました。

記事内で解説したように、2023年10月のインボイス制度開始後も、一定の経過措置が設けられています。
とはいえ、税額控除率は段階的に引き下げられるため、できるだけ早めにインボイス制度に対応するべきだと言えるでしょう。

また、インボイス制度の開始後は、従来よりも請求関連業務の負担が増加すると予想されます。

インボイス制度開始後の負担を軽減するためにも、今回ご紹介した「invoiceAgent」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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インボイス制度の開始に向けて、適格請求書の発行準備は済んでいるという企業も多い一方で、受領や保存についての対応は進んでいますか?
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