PDFのタイムスタンプとは?
まずは基礎知識として、PDFのタイムスタンプの意味や仕組み、電子署名との違いについて確認していきましょう。
PDFにおけるタイムスタンプの意味
そもそもタイムスタンプとは、PDFなどの電子ファイルの信頼性を客観的に証明する技術のこと。主に「存在証明」と「非改ざん証明」という2つの重要な役割があります。
存在証明とは、タイムスタンプが付与された時刻にその電子文書(PDF)がたしかに存在していたことの証明。非改ざん証明とは、タイムスタンプが付与された後に変更が加えられていないことの証明です。
この2つの証明機能により、PDFなどの電子文書の信頼性を紙文書と同等以上に担保することができるのです。
PDFにタイムスタンプを付与する仕組み
タイムスタンプがPDFの信頼性を担保する仕組みについて見ていきましょう。タイムスタンプは、「時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)」という第三者機関によって客観性と正確性が保証されています。
その仕組みは以下の通りです。
ハッシュ値の生成
利用者がPDFにタイムスタンプを要求すると、まずそのPDFから「ハッシュ値」と呼ばれる固有の文字列が生成されます。ハッシュ値は、ファイルが1ビットでも異なれば全く違う値になるため、「電子指紋」とも呼ばれます。
時刻情報の付与
利用者は、このハッシュ値を時刻認証局(TSA)へ送信します。TSAは、受け取ったハッシュ値に、信頼できる時刻情報を結合させ、電子署名を施して「タイムスタンプトークン」を発行します。
PDFへの結合
発行されたタイムスタンプトークンを元のPDFファイルに結合することで、タイムスタンプの付与が完了します。
PDFにタイムスタンプが必要な理由
次に、PDFにタイムスタンプを付与する必要性について見ていきましょう。
近年の電子帳簿保存法改正の影響もあり、帳票の電子化・ペーパーレス化の機運が高まっています。そして、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」と「電子取引」においては、タイムスタンプの付与が必要なケースが存在します。
また、電子帳簿保存法への対応以外にも、タイムスタンプが必要なシチュエーションがあります。たとえば、知的財産の保護において、タイムスタンプを利用することでアイデアの「先使用権」を主張する際の有効な証拠となり得ます。
PDFにタイムスタンプを付与する方法と確認方法

次は、PDFにタイムスタンプを付与する方法、および確認方法を見ていきましょう。
タイムスタンプの付与方法
では、PDFにタイムスタンプを付与するための代表的な3つの方法をご紹介します。
Adobe Acrobat Pro DCでタイムスタンプを付与する手順
PDFを作成・編集する標準的なソフトウェアであるAdobe Acrobat Pro DCには、タイムスタンプ機能が搭載されています。
以下はタイムスタンプ付与の大まかな手順です。
- Acrobat ProでPDFファイルを開きます。
- 「ツール」から「証明書」を選択します。
- 上部メニューに表示される「タイムスタンプ」をクリックします。
- タイムスタンプサーバーの設定を事前に行い、保存します。(※別途、タイムスタンプサーバーとの契約が必要な場合があります)
- ファイルがタイムスタンプ付きで保存されます。
日常的に少数のPDFを扱う場合には便利な方法です。
タイムスタンプサービスを利用する方法
大量の書類を扱ったり、社内での管理・運用を効率化したりしたい場合には、専用のタイムスタンプサービスがおすすめです。
主なメリットとしては以下の通りです。
- 一括付与機能:複数のPDFにまとめてタイムスタンプを付与できる。
- 自動付与機能:指定のフォルダに格納するだけで自動的に付与される。
- 管理が容易:いつ誰が付与したか、有効期限はいつまでかなどを一覧で管理できる。
- 電子帳簿保存法対応:法の要件を満たしたサービスが多く、安心して利用できる。
上記のように多くのメリットがあることから、ビジネスシーンで大量にタイムスタンプを付与する必要がある場合などにはおすすめの選択肢となります。
無料でタイムスタンプを付与する方法と注意点
一部のフリーソフトやオンラインツールで、無料でタイムスタンプを付与できるものも存在します。しかし、ビジネスで利用する際には、以下の点に十分な注意が必要です。
- 法的要件を満たさない可能性:総務大臣認定のTSAを利用していない場合、電子帳簿保存法などの法的要件を満たせません。
- セキュリティリスク:オンラインツールに機密情報を含むPDFをアップロードすることには、情報漏洩のリスクが伴います。
- サポート不在:トラブルが発生した際に、自己責任での対応となります。
結論として、企業の公式な文書に利用する場合、無料ツールの使用は避け、信頼できる有料サービスの利用を強く推奨します。
PDFのタイムスタンプが有効か確認する手順
タイムスタンプは、ただ付与するだけでなく、その有効性を確認(検証)できることが重要です。取引先などから受け取ったPDFのタイムスタンプは、無料のAdobe Acrobat Readerで簡単に検証できます。
- 対象のPDFファイルをAdobe Acrobat Readerで開きます。
- 画面上部に青い帯で「署名済みであり、すべての署名は有効です。」といったメッセージが表示されれば、有効な署名・タイムスタンプが付与されています。
- 詳細を確認するには、「署名パネル」をクリックします。署名者やタイムスタンプの有効性、時刻などの詳細情報が表示されます。
もしここに警告マークが表示された場合は、タイムスタンプが付与された後にファイルが変更された可能性があり、注意が必要です。
タイムスタンプサービスの選び方

タイムスタンプサービスを導入する際には、どのサービスが自社に合っているかを見極めることが重要です。以下の比較ポイントを参考に、検討を進めましょう。
比較ポイント1:料金体系(従量課金制 vs 月額固定制)
タイムスタンプサービスを選ぶうえで重要なポイントのひとつが、料金体系です。
たとえば、タイムスタンプの付与回数が少ない場合などは、従量課金制のサービスの方が適しているかもしれません。反対に、大量に発行する帳票にタイムスタンプを付与する場合などは、定額制のサービスの方が適している可能性があります。
- 従量課金制:タイムスタンプを付与した回数に応じて料金が発生。利用頻度が低い場合に適しています。
- 月額固定制:毎月定額で、一定数または無制限に利用可能。利用頻度が高い、または予算を固定したい場合に適しています。
自社の月間処理枚数を算出し、どちらがコストメリットがあるかを事前にシミュレーションしてみましょう。
比較ポイント2:機能(一括付与、長期署名対応、API連携など)
自社の業務フローや用途・目的によって、タイムスタンプサービスに必要な機能は異なります。
具体的には、以下のようなポイントは必ずチェックしておくべきだと言えます。
- 一括付与・高速処理:大量に帳票発行を行う場合など、処理スピードが求められる場合に必要。
- 長期署名(PAdES)への対応:契約書など10年以上の長期保存が必要な書類を扱う場合に重要。
- API連携の可否:既存の社内システムと連携させ、業務を自動化したい場合に必要。
比較ポイント3:認定タイムスタンプか(信頼性と法的要件)
認定タイムスタンプか否かも、サービス選定においてもっとも重要なポイントのひとつです。
電子帳簿保存法などの法律に対応するためには、総務大臣の認定を受けた時刻認証業務に係るタイムスタンプである必要があります。サービス提供事業者のウェブサイト等で、法的要件に対応しているかどうかを必ず確認しましょう。
PDFへのタイムスタンプ付与なら「Trustee」
次はPDFへのタイムスタンプ付与に最適なソリューションとして、「Trustee(トラスティ)」を紹介します。
「Trustee」は、帳票領域で長年の実績と信頼を培ってきたウイングアークが提供するデジタルトラストサービスです。帳票発行時のタイムスタンプ付与を考慮した高速処理や高可用性、低コストでの運用が可能で、なかでも秒間1,000文書を超えるタイムスタンプの高速処理は「Trustee」の大きな特徴のひとつです。
さらに、同じくウイングアークが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」シリーズや「SVF Cloud(エスブイエフ クラウド)」と組み合わせることで、デジタル帳票の発行・データ化から企業間での配信・受領、電子帳簿保存法などの法令に準拠した文書管理まで、一気通貫でデジタル化を推進可能です。
まとめ
今回は、PDFのタイムスタンプに関する基礎知識から、付与・確認する具体的な方法、タイムスタンプサービスの選び方について解説しました。
ペーパーレス化が急速に進む昨今、タイムスタンプはPDFなどの電子ファイルの信頼性を担保する重要な役割を果たします。そして、現在は電帳法対応のためのタイムスタンプ利用が主流ですが、今後は帳票発行時のタイムスタンプ付与のニーズが高まると予想されます。
記事内でご紹介したウイングアークの「Trustee」は、帳票発行時のタイムスタンプ付与を考慮した高速処理が特徴のデジタルトラストサービスです。PDF文書のセキュリティ強化を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

























