PDF形式の契約書は有効?
まずは、PDF形式の契約書が法的に有効かどうかについて確認していきましょう。
契約書はPDF形式でも有効
そもそも契約書とは、双方が締結した契約を証明するための文書です。
しかし、契約は当事者同士の合意によって成立するため、必ずしも契約書を作成しなければならないわけではありません。
つまり、書面の契約書でも、PDF形式の契約書でも、あるいは口約束であっても、契約自体の有効性に変わりはないと言えます。
ではなぜ、必須ではない契約書の作成が一般化しているのでしょうか。
それは、トラブルや訴訟などに発展した際、契約書があることで契約が成立した事実や条件を客観的に示す証拠となるからです。
そして、契約書をPDF化する方法によっては、証拠力の面で書面の契約書と違いが発生する可能性があります。
詳しくは、後述する「契約書をPDF化する方法」の章で解説します。
また、以下の記事では契約書の基礎知識についてわかりやすく解説しています。あわせてご確認ください。
電帳法の要件を満たせば契約書をPDF形式で保存可能
契約書は、会社法や税法によって一定の保存期間が定められており、締結後の契約書は適切に保管しておく必要があります。
そして、PDF形式などの電子データとして契約書を保存するには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
電子帳簿保存法とは、紙での保存が原則とされている国税関係帳簿書類の全部または一部を電子データとして保存することを認める法律で、契約書も対象です。
以下の記事では、電子帳簿保存法の内容や2022年1月に施行された改正の要点、対応方法について解説しているので、あわせてお読みください。
契約書をPDF化する方法
契約書をPDF化するには、主に以下2通りの方法が存在します。
- 紙の契約書をスキャナでPDF化する方法
- 電子契約サービス上で契約を締結する方法
それぞれの方法と証拠力の違いについて確認していきましょう。
紙の契約書をスキャナでPDF化する方法
1つめの方法は、締結済みの紙の契約書をスキャンしてPDF化する方法です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たすことで、スキャナでPDF化した契約書を電子データとして保存しておくことが可能です。
ただし、この方法には注意点も存在します。
通常、書面の契約書には「書面を2通作成し、当事者双方が1通ずつ保管する」という旨の文言が記載され、双方が保管している紙の契約書が「原本」として扱われます。
そのため、民事訴訟ではPDF化した契約書データは「原本のコピー」として扱われ、法的な証拠力の面で紙の契約書原本に劣る可能性があります。
電子契約サービス上で契約を締結する方法
2つめの方法が、電子契約サービス上で契約を締結する方法です。
電子契約サービスでは、書面の契約書の代わりにPDF形式の契約書を用いて契約を締結します。
その際、契約書データに電子署名とタイムスタンプを付与することで、署名を施した書面の契約書と同等の法的証拠力を担保することが可能です。
先述した締結済みの契約書原本をPDF化する方法と異なり、契約書データ自体が原本となるため、印刷した書面を別途保管しておく必要はありません。
後述する「契約書をPDF化するメリット」を最大限享受するのであれば、契約の一連の流れを電子化できるこの方法がおすすめだと言えます。
以下の記事では、電子契約の概要やサービス導入のポイントを解説しています。あわせてご確認ください。
契約書をPDFで運用するメリット
次に、契約書をPDFで運用するメリットとして、以下の5点をご紹介します。
- 印紙代やペーパーコストの削減
- 契約業務の迅速化
- 契約書管理の負担軽減
- テレワークへの対応
- ガバナンスの強化
では、PDF形式の契約書のメリットについて詳しく確認していきましょう。
印紙代やペーパーコストの削減
契約書をPDF化することで、紙の契約書よりもコストを削減することが可能です。
従来の書面による契約では、印刷費や郵送費などのコストが発生してしまいます。
また、契約の内容によっては収入印紙の貼付も必要になるでしょう。
一方、契約書PDFによる電子契約であれば、書面の印刷や郵送が不要で、収入印紙の貼付も必要ありません。
また、後述する業務効率化・迅速化の効果によって作業工数を削減できれば、人件費の節約にもつなげることができるでしょう。
契約業務の効率化・迅速化
一般的に、書面での契約は以下のような流れで行われます。
- 契約書の作成・印刷
- 契約内容の確認・署名捺印
- 原本2通を相手先に郵送
- 相手先での契約内容の確認・署名捺印
- 原本1通の返送
- 双方が原本を1通ずつ保管
上記の通り、契約内容の確認・署名捺印を双方で並行して行うことができず、原本の郵送が2度も発生するため、契約締結までに時間がかかってしまいがちです。
一方、PDFの契約書であればメールやクラウドサービスを介してリアルタイムに送受信することができるため、郵送のように数日間のタイムラグが発生しません。
そのため、面倒な契約業務を効率的かつ迅速に進めることができるでしょう。
契約書管理の負担軽減
契約書管理の負担を軽減できる点も、PDF形式で運用するメリットと言えます。
従来の紙の契約書の場合、後から契約内容を確認する際や、保存期間を終えた契約書を破棄する際、大量の書類のなかから該当の契約書を探し出す手間が発生します。
一方、PDFの契約書であれば、ファイル名などで検索することができ、必要なタイミングで速やかに契約書を参照したり破棄したりすることができます。
テレワークへの対応
PDFで契約書を運用することで、テレワークを促進することが可能です。
紙媒体で契約を行っている場合、書面の印刷や押印、郵送準備などの兼ね合いで、オフィス以外の場所で契約手続きを完結することや、保存している契約書の内容を確認することが困難です。
電子契約サービスであれば、PCやタブレット、スマートフォンなどのデバイス上で契約手続きを完結することができるため、テレワークでも契約手続きを進めることができます。
また、締結済みの契約書がPDF形式で保存してあれば、オフィス以外の場所からも契約内容をスムーズに確認することができるでしょう。
ガバナンスの強化
契約書のPDF化は、ガバナンス強化という面でも有効です。
契約書には機密情報が含まれることも多く、第三者による盗み見や持ち出し、紛失・破損を防止する対策が求められます。
PDF形式の契約書であれば、個別にパスワードを設定することができ、物理的に紛失したり破損したりする心配もありません。また、電子署名やタイムスタンプによって、契約書の原本性を担保することも可能です。
紙の契約書をPDF化する場合の注意点
契約書をPDF化することで、さまざまなメリットが期待できるとお伝えしましたが、書面で締結・保存している契約書を後からPDF化する場合には、以下のような注意点も存在します。
- 紙の契約書原本の保存が必要
- PDFファイルの文字認識には OCR処理が必要
それぞれ詳しく確認していきましょう。
紙の契約書原本の保存が必要
紙の契約書をスキャンしてPDF化した後も、紙の契約書を残しておく必要があります。
先述の通り、契約の締結を書面で行った場合、あくまでも紙の契約書が原本となります。
原本を処分してしまうと、契約書の保管義務を放棄したとみなされる可能性があるため、PDF化したデータがあるからと言って安易に破棄しないよう注意しましょう。
PDFファイルの文字認識にはOCR処理が必要
PDFファイルはあくまで画像データであり、基本的には画像内の文字情報を自由に編集することはできません。
PDF化した契約書内の情報をテキストデータとして扱うためには、OCR(光学的文字認識)処理を施す必要があります。
以下の記事では、OCRの基礎知識をわかりやすく解説しているので、あわせてお読みください。
契約書の電子化なら「invoiceAgent」
次は、契約業務の電子化や契約書のPDF化を実現する具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」をご紹介します。
「invoiceAgent」は、電子帳簿保存法の法的要件を満たす製品の証である「JIIMA認証」を取得しており、契約業務の電子化と法令対応を同時に実現します。
では、「invoiceAgent」の特徴を確認していきましょう。
書面契約と同等の証拠力を担保する「invoiceAgent 電子契約」
「invoiceAgent 電子契約」は、契約業務の電子化を実現するソリューションです。
契約書の作成から契約内容の確認・承認、双方による電子署名という一連の流れをクラウド上で完結することができます。
また、ウイングアーク1stが立会人となって電子署名とタイムスタンプを付与し、完了証明書を発行することで、書面の契約書と同等の法的証拠力を担保することが可能です。
紙の契約書をデータ化するなら「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙文書のデータ化を実現するソリューションです。
高精度な5つのOCR/AI OCRエンジンを搭載しており、読み取り文書の特徴にあったOCR/AI OCRエンジンを選択したり、複数のOCR/AI OCRエンジンで処理を実行したりすることも可能です。さらに、読み取り画像の歪みや傾きを自動補正する機能も搭載しています。
これらの特徴により、紙媒体で保管している契約書を高い精度で文字認識し、データ化することが可能です。
契約書の保存なら「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、文書データの一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」で作成・データ化した文書はもちろん、他システムで出力した文書もまとめて取り込み、設定したルールに基づき自動で仕分け・保存を実行します。
また、保存した文書を速やかに参照・出力できる高度な検索機能を搭載しているほか、保存期間に応じた自動削除機能や証跡管理機能も備わっています。
これらの特徴により、契約書や関連書類をセキュアな環境で効率的に管理することが可能です。
まとめ
今回は、契約書のPDF化に焦点を当てて、有効性やPDF化する方法、メリットや注意点などをご紹介しました。
ペーパーレス化やDXの重要性が叫ばれるなか、契約書のPDF化や電子契約の導入に着手する企業はますます増えていくと予想されます。
紙で保存している契約書のPDF化や、電子契約への切り替えを考えている企業は、今回ご紹介した「invoiceAgent」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。