FAXのデータ化とは?
FAXのデータ化とは、FAXを介して授受していた紙ベースの情報を電子データとして扱える状態にすること。
まずは、紙ベースのFAX業務の主な課題、FAXデータ化に取り組むべき理由について見ていきましょう。
従来のFAX業務の課題
紙ベースのFAX業務は、企業に多くの課題をもたらします。
代表的な課題としては、手作業による非効率が挙げられます。受信したFAXの内容を基幹システムやExcelに入力する作業は時間がかかるだけでなく、入力ミスや転記ミスといったヒューマンエラーを誘発しやすいと言えます。
ヒューマンエラーが発生すると、取引先からの信頼失墜につながりかねず、情報セキュリティ上のリスクも高まります。FAX機器の故障や自然災害といった不測の事態が発生した場合、業務が停止してしまう可能性もあり、事業継続計画(BCP)の観点でも大きな問題といえるでしょう。
さらに、検索性の低さも大きな問題です。紙のFAXに記載された情報は、そのままではキーワード検索などができないため、過去の取引内容を確認したい場合などには、膨大なファイルの中から探し出す必要があります。テレワークや外出先からのアクセスも困難で、情報共有のボトルネックとなり得るでしょう。
FAXのデータ化に取り組む必要性は?
先述した通り紙ベースのFAX業務には多くの課題があり、FAXのデータ化は競争力向上および持続的成長のために必要な取り組みと言えます。
たとえば、FAXで送受信される情報、とくに注文書や請求書といった取引データは、本来であれば企業にとって貴重な経営資源です。これらの情報をデータ化し、分析可能な状態にすることで、販売予測の精度向上、顧客ニーズの把握、さらには新商品開発や経営戦略の策定に役立てることができるでしょう。
とくにデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる現代において、FAXのデータ化は企業の競争力を高め、将来の成長基盤を築くための変革と言えるでしょう。
電子帳簿保存法への対応について
FAXで送受信される書類の多くは、注文書や請求書といった国税関係書類に該当します。
これらの書類をデータ化する際には、電子帳簿保存法(以下、電帳法)の規定を正しく理解し、適切に対応することが重要です。
FAX取引が電帳法の対象となるかどうかは、そのFAXが「電子取引」に該当するかどうかで判断されます。
たとえば、クラウドFAXサービスを利用してFAXを送受信した場合や、複合機の機能でFAXをPDFなどの電子データとして受信した場合などは電子取引に該当します。この場合、原則として当該の電子データを電子データのまま保存する義務が生じます。
一方で、従来型のFAX機で紙に出力して受信した場合や、紙の書類をFAX機で送信した場合は、基本的に紙の書類として扱われます。この場合は、紙のまま保存することが可能ですが、「スキャナ保存」の要件を満たすことで電子データとして保存することもできます。
FAXをデータ化する方法
次に、FAXでやり取りしている情報をデータ化する方法をご紹介します。
スキャン機能の活用
1つめの方法は、FAXで受信した紙をスキャンして電子データ化する方法です。
多くのオフィスで導入されている複合機(MFP)には、受信したFAXを紙に出力するだけでなく、スキャンして電子データとして保存・転送する機能が備わっており、FAXデータ化のもっとも手軽な第一歩となり得ます。
ただし、この方法はあくまで「紙の電子的な保管」であり、FAXに記載された情報を「データ」として活用するには不十分である点を理解しておく必要があります。
OCRツールによるデータ変換
2つめの方法は、OCRを利用してFAXで受信した情報をテキストデータ化する方法です。
受信したFAX画像を取り込み、OCRエンジンが画像内の文字を解析してテキストデータに変換します。
変換されたデータは検索可能なドキュメントとして扱うことができ、販売管理システムや会計システムなどの基幹システムと連携させることで、後続業務の自動化・効率化にもつなげることが可能です。
インターネットFAXの利用
3つめは、インターネットFAXを利用する方法です。
インターネットFAXは、従来のFAX機や専用の電話回線を使わず、インターネット経由でFAXの送受信を可能にするサービスです。受信したFAXはPDFなどの電子ファイルとしてメールや専用のウェブポータルで受け取り、送信も同様にパソコンやスマートフォンから行えます。
FAXをデータ化する際の注意点
FAXデータ化の方法を選択する際には、現在の課題解決だけでなく、将来的な事業の成長や変化も見据えることが重要です。
目先のコストや手軽さだけで安易な方法を選んでしまうと、数年後には再びシステムの見直しが必要になったり、より高度なデータ活用への移行が困難になったりする可能性があります。
たとえば、現在はFAXの送受信量が少なく、複合機のスキャン機能で十分だと判断したとしても、将来的に事業が拡大し、FAXの量が増加した場合、手作業によるスキャンやファイル管理が追いつかなくなるかもしれません。
また、当初は考えていなかった基幹システムとの連携や、AI OCRによる高度なデータ抽出のニーズが将来的に発生する可能性も考慮すべきです。
そのため、初期投資が多少高くなったとしても、拡張性や柔軟性に優れたソリューション、たとえばAPI連携が可能なクラウドサービスや、多様な帳票に対応できるAI-OCRシステムなどを選択することが、長期的な視点で見れば賢明な判断となる場合があります。
単に現在のFAX業務の課題を解決するだけでなく、3年後、5年後のビジネスシーンを見据え、FAXデータをどのように活用していきたいかを考えることが、将来につながる選択をするための鍵と言えるでしょう。
FAXのデータ化なら「invoiceAgent AI OCR」
次は、FAXのデータ化を実現するソリューションとして、ウイングアークが提供する「invoiceAgent AI OCR(インボイスエージェント エーアイ オーシーアール)」をご紹介します。
複数のOCR/AI OCRエンジンを搭載
「invoiceAgent AI OCR」は、活字・手書きを問わず帳票のデータ化を実現するソリューションです。
複数の高精度なOCR/AI OCRエンジンを搭載しており、読み取り帳票の種類や特徴に応じて適切なOCR/AI OCRエンジンを選択できます。1つの読み取り文書に対して複数のOCR/AI OCRエンジンで並行処理を実行し、結果を比較することも可能です。
さらに、読み取り文書の歪みや傾きを自動補正する機能により、認識率の低下を防ぎつつ効率的かつ高精度にFAX文書をデータ化することができるでしょう。
システム連携でデジタル化の範囲を拡張可能
「invoiceAgent AI OCR」は、他システムとの連携によってさらに利便性を高めることができます。
各種アダプターやWeb APIを用いて、さまざまな業務システムやクラウドサービスとスムーズに連携可能。たとえば、RPAツールを介して業務システムと連携すれば、AI OCRでデータ化した情報を自動で入力・転記することも可能です。
また、ウイングアークが提供する「SVF Cloud」や「invoiceAgent」シリーズとの連携で、帳票の設計・出力やデータ化、法令に基づく文書管理、さらには企業間での送受信までを一気通貫で実現するデジタル帳票基盤を構築することもできます。
ウイングアーク製品でFAXのデータ化を推進した事例
最後に、ウイングアーク製品を利用してFAXのデータ化を推進した事例を紹介します。
OCRで業務効率化とコスト削減を達成(丸木医科器械)
丸木医科器械株式会社は、「invoiceAgent」を導入し、FAXをはじめとする紙ベースの取引をデータ化し、電子保管する仕組みを整えました。
数多くの取引先を抱える同社では、各社との取引はFAXをはじめとする紙ベースで行っており、注文書や請求書、納品書といった取引帳票が大量に発生。その数は年間約40万枚に達し、基幹システムへの入力作業の負荷や保管コストが課題となっていました。
そうしたなか、基幹系システムにおける内部書類の電子保存を目的としたプロジェクトが開始。その過程でコロナ禍に突入し、電子取引促進の機運が高まるとともに、電帳法改正による要件緩和が決定し、外部との取引領域も含めた業務の電子化に着手することとなりました。
システム選定の結果、OCRの利用コストを抑えられる点と、文書管理まで行える点を評価し、「invoiceAgent」の導入を決定。FAXなどで送られてくる帳票類をスキャンしてOCR処理を実行し、データを販売管理システムに受け渡す仕組みを構築しました。紙文書の保存コストや印刷コストが大幅削減されたと同時に、業務の効率化を実現しています。
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丸木医科器械株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
受領する月7,000枚の月報兼請求書を電子化(ロジクエスト)
株式会社ロジクエストは、電子帳簿保存法への対応を目指し「invoiceAgent」を導入しました。
全国に5,500以上の直接契約のドライバーや協力会社を抱える同社では、毎月約7,000枚の月報兼請求書が各支店に送られてきます。紙ベースで保管しているこれらの帳票は検索性が悪く、過去の書類が必要になったときに探すことが難しいという問題がありました。
そこで同社は、電子保管によるペーパーレス推進を検討開始。同社ではFAXで送られてくる月報兼請求書を複合機で受け取っていることから、電帳法の電子取引要件を満たす仕組み構築に着手しました。
システム選定の結果、JIIMA認証を取得しているクラウドサービスであり、使い勝手と性能に優れている「invoiceAgent」の導入に至りました。導入後、各支店で受領した月報兼請求書を集約し、「invoiceAgent」でOCR処理を行いデータ化するとともに、タイムスタンプを付与して電子保管する仕組みが完成。紙の印刷量やコピー用紙の発注が少なくなるなどペーパーレス化の成果が表れつつあるほか、過去の日報に関する問い合わせがあった際の書類検索の効率化にもつながっています。
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まとめ
今回は、FAXのデータ化に焦点を当てて、その必要性や実現方法、注意点について紹介しました。
デジタル化が叫ばれる現代においても、FAXによるやり取りを行っている企業は多く存在し、競争力向上および持続的成長のためにはデータ化の取り組みが必要です。
そして、FAXのデータ化を実現するソリューションが、記事内でご紹介したウイングアークのデジタル帳票基盤です。FAXのデータ化を検討中の方は、「invoiceAgent」および「SVF Cloud」のご利用を検討してみてはいかがでしょうか。