入金消込とは?
入金消込(にゅうきんけしこみ)とは、企業が商品やサービスを提供した際に発生する売掛金と、顧客から実際に支払われた入金を照合し、債権が回収済みであることを会計帳簿上で処理する一連の作業を指します。
なお売掛金とは、商品やサービスを販売したものの、まだ代金を受け取っていない状態の債権(代金を受け取る権利)のことです。
この入金消込が正確に行われていないと、入金されたはずのお金が未回収として扱われるなど、キャッシュフローの実態が把握できなくなります。また、支払済みの顧客に対して再度請求書を送ってしまうなど、二重請求のリスクも高まります。
さらに、月次決算や年次決算などの財務諸表が正確に作成できず、経営状況の把握や意思決定が遅れてしまうケースも考えられます。
つまり、入金消込は単なる事務作業ではなく、企業の信用維持や健全な経営基盤を支える重要な業務だと言えます。
入金消込の流れ
入金消込の業務は、一般的に以下の4つのステップで進められます。
- 請求情報の準備
- 入金情報の取得
- 照合作業(突合作業)
- 会計処理
ここでは、手作業で入金消込を行う場合の基本的な流れを解説します。
請求情報の準備
まず、どの顧客にいくら請求しているのかをまとめた「請求情報」を準備します。
会計ソフトや販売管理システムから請求データを出力したり、Excelなどで一覧表を作成したりするケースが一般的です。この一覧には、少なくとも以下の情報が含まれている必要があります。
- 請求先企業名・顧客名
- 請求日
- 請求額
- 支払期日
- 請求書番号
入金情報の取得
次に、顧客からの入金があったかどうかを確認するため、「入金情報」を取得します。主に以下の方法で確認します。
- 預金通帳への記帳:銀行窓口やATMで通帳に取引履歴を記録します。
- インターネットバンキングの利用:Webサイト上で入出金明細を閲覧・ダウンロードします。多くの企業では、CSV形式や全銀フォーマット形式のデータをダウンロードして利用しています。
照合作業(突合作業)
入金消込業務におけるもっとも重要かつ煩雑なステップが、照合作業(突合作業)です。ステップ1で用意した「請求情報」と、ステップ2で取得した「入金情報」を一つひとつ突き合わせ、正しく入金されているかを確認します。
- 振込名義人と請求先名の一致:請求した相手と、実際に振り込んできた名義が同じかを確認します。
- 入金額と請求額の一致:請求した金額と、振り込まれた金額が一致しているかを確認します。
完全に一致していれば問題ありませんが、実際には一致しないケースが少なくありません。一致しない場合は、その原因を特定するための調査が必要です。
会計処理(仕訳)
照合が完了し、入金が確認できた請求については、会計帳簿上で債権(売掛金)を消去するための仕訳処理を行います。具体的には、資産である「売掛金」を減らし、同じく資産である「普通預金」を増やす仕訳を計上します。
この処理をもって、一つの入金消込作業が完了します。未入金の請求については、そのまま売掛金として残し、必要に応じて督促などのアクションに移ります。
入金消込でよくある課題
次に、手作業による入金消込でよくある課題をご紹介します。
振込名義人と請求先名が違う
入金消込でとくに多い課題が、振込名義人と請求先名が異なるケースです。
法人の場合、正式名称、略称、屋号など、複数の名義を使い分けることがあり、請求情報と完全に一致しないことが起こり得るため注意が必要です。
入金額と請求額の不一致
請求額通りに振り込まれず、入金額と請求額が一致しないケースも少なくありません。
たとえば、請求額の一部のみが入金される「一部入金」や、誤って多く振り込まれる「過入金」がその例です。また、契約でどちらが振込手数料を負担するか決まっていないと、差額の処理に手間取ってしまうケースもあります。
複数の請求をまとめて入金
数か月分の請求がまとめて入金されるケースや、いくつかの取引の請求がまとめて入金されるケースにも注意が必要です。どの請求に対する入金なのかを特定するために、合計金額が一致する組み合わせを探す必要があり、手間がかかってしまいがちです。
手作業によるヒューマンエラー
目視による確認や手入力に頼る作業は、どうしても人的なミスが発生しやすくなります。
たとえば大量のデータのなかから、未入金や入金済みの情報を見落としてしまうケースや、Excelや会計ソフトへの転記ミス、照合が完了したにも関わらず会計処理を忘れてしまうケースなどが挙げられます。
業務の属人化
入金消込業務が属人化してしまうケースも珍しくありません。
たとえば、「Aさんでないと、あの会社からの入金ルールがわからない」「入金消込はベテランのBさんしか対応できない」といったように、特定の担当者に依存してしまう状態です。入金消込業務が属人化してしまうと、担当者が休暇や退職で不在になることで業務が滞ってしまうリスクが発生します。
入金消込を自動化する方法は?
前述のような課題を解決するには、手作業をできるだけ排除して自動化する仕組みを目指すのが有効です。
入金消込の自動化にはいくつかのレベルがありますが、ここでは代表的な3つの方法をご紹介します。
Excel関数やマクロの活用
もっとも手軽に始められる方法が、Excel(エクセル)の関数やマクロを使った自動化です。
すでにExcelを利用している企業であれば、追加のコストを掛けずに取り組むことができるのがメリットです。一方で、振込名義人の表記揺れや手数料差引といった複雑な照合に対応できない点や、ファイルの破損や誤操作による上書きなどのリスク、関数やマクロの知識を要することから属人化しやすい点がデメリットと言えます。
このように、Excelでの効率化はあくまで応急処置であり、根本的な解決には至らないケースが多いのが実情です。
会計ソフトの入金消込機能
ふたつめは、会計ソフトの機能を使って自動化する方法です。多くの会計ソフトには、銀行口座の入出金明細を取り込んで入金処理を行う機能が備わっています。
メリットとしては、会計処理との連携がスムーズで仕訳作成までを一気通貫で行える点や、すでに導入している会計ソフトに入金消込機能が備わっていれば、追加コストなしで利用できる場合がある点が挙げられます。
懸念点としては、あくまで会計ソフトの一機能であり、入金消込に特化したシステムほどの高精度な照合はできない可能性があります。
入金消込システムの導入
もっとも確実かつ効果的な方法が、入金消込に特化した専用システムを導入することです。専用システムは、手作業で発生していた入金消込の課題を解決するために設計されており、以下のような機能が備わっているのが一般的です。
- 入金データの自動取得:金融機関のAPI連携やFBデータの自動取込により、手動で入金明細を取得する手間をなくします。
- 高精度な自動照合:AIや独自のロジックを活用し、振込名義人の表記揺れや一部入金、手数料差引などを自動で判断して照合します。
- 学習機能:一度手動で紐づけた名義やパターンをシステムが学習し、次回以降の照合率を自動で向上させます。
- 未入金リストの自動作成:消込が完了しなかった売掛金を自動でリストアップし、督促業務を迅速化します。
- 会計ソフト連携:消込結果を会計ソフトの形式に合わせて出力、またはAPI連携で自動的に仕訳データを作成します。
入金消込の自動化に役立つソリューションは?
次は、入金消込の自動化に役立つソリューションとして、ウイングアークが提供する「invoiceAgent AI OCR(インボイスエージェント エーアイ オーシーアール)」をご紹介します。
紙帳票のデータ化を実現
「invoiceAgent AI OCR」は、紙帳票のデータ化を実現するソリューション。入金消込の際に使用する紙帳票などを、手書き・活字を問わず効率的にデータ化することが可能です。
「invoiceAgent AI OCR」には高精度な複数のOCR/AI OCRエンジンが備わっており、読み取り帳票の種類や特徴に応じて最適なOCR/AI OCRエンジンを選択することができます。また、複数のOCR/AI OCRエンジンで並行処理を実行し、結果を比較することも可能です。
さらに、読み取り帳票の歪みや傾きを自動補正する機能も搭載しているので、認識率の低下を防ぎつつ効率的なデータ化を実現します。
システム連携で業務を自動化
「invoiceAgent AI OCR」は、専用のアダプターやWeb APIを用いることで、さまざまなシステム・ツールと連携することが可能です。
たとえば、「invoiceAgent」シリーズの他製品やデジタル帳票基盤「SVF Cloud」と連携することで、帳票の設計・出力やデータ化、文書管理、企業間での送受信まで一気通貫でデジタル化することが可能。
もちろん、外部システムとの連携も可能です。
たとえば、取引先から受領する支払通知書を基に入金消込を行っている場合、支払通知書を「invoiceAgent AI OCR」でデータ化し、RPA連携によってERPの入金データと自動照合する仕組みを目指すこともできるでしょう。
まとめ
今回は、入金消込業務の意味やよくある課題、効率化・自動化のポイントについて解説しました。
入金消込は、企業の信用維持や健全な経営基盤を支える重要な業務であり、正確性とスピードが求められます。
そして、入金消込の自動化に役立つソリューションのひとつが、記事内でもご紹介した「invoiceAgent AI OCR」です。現在、紙の支払通知書などを基に入金消込作業を行っている企業は、「invoiceAgent AI OCR」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。