電子帳簿保存法の検索要件とは?
そもそも電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを認める法律のこと。
そして、電子帳簿保存法に対応するための要件のひとつが「検索機能の確保」、いわゆる「検索要件」です。
検索要件とは、保存した帳簿書類の電子データを必要に応じて速やかに取り出せるようにする仕組みを意味します。
保存区分(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引)によって求められる検索機能は異なりますが、取引年月日や取引金額、取引先などの条件で検索できる仕組みを整える必要があります。
電子帳簿等保存における検索要件
電子帳簿等保存における検索要件は、保存の対象が帳簿か決算関係書類などの書類かによって求められる検索機能が異なります。
帳簿の保存に関しては、以下の検索要件をすべて満たす必要があります。
- 取引年月日・取引金額・取引先名の条件で検索できること
- 取引年月日・取引金額の記録項目は、範囲を指定して検索できること
- 任意の記録項目を複数組み合わせて検索できること
※優良帳簿で税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、2と3の要件は不要
書類の保存に関しては、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
- 取引年月日とその他日付で検索できること
- 日付の記録項目は、範囲を指定して検索できること
※税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、1と2の要件が不要
スキャナ保存における検索要件
スキャナ保存においては、以下の検索要件をすべて満たす必要があります。
- 取引年月日・取引金額・取引先名の条件で検索できること
- 取引年月日・取引金額の記録項目は、範囲を指定して検索できること
- 任意の記録項目を複数組み合わせて検索できること
※税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、2と3の要件は不要
電子取引における検索要件
電子取引においては、以下の検索要件をすべて満たす必要があります。
- 取引年月日・取引金額・取引先名の条件で検索できること
- 取引年月日・取引金額の記録項目は、範囲を指定して検索できること
- 任意の記録項目を複数組み合わせて検索できること
※税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、2と3の要件は不要
現在(2023年8月時点)では、売上高が1,000万円以下で、なおかつ税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、検索要件への対応が不要になります。
なお、後述する令和5年度税制改正によって、検索要件が不要となる対象の条件が変更となります。
令和5年度税制改正による検索要件に関する変更点
1998年に施行された電子帳簿保存法は、これまでに幾度かの改正が行われてきました。
直近(2023年8月時点)では2022年1月に改正が行われたほか、2022年12月に公表された令和5年度税制改正大綱で、2024年1月以降の電子帳簿保存法の変更点についても示されました。
そして先述の通り、令和5年度税制改正には、電子取引の検索要件に関する変更も含まれています。
現状では、売上高が1,000万円以下で、なおかつ電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合は検索要件への対応が不要となっています。
2024年1月の改正後は、以下いずれかの条件に当てはまる場合は検索要件への対応が不要になります。
- 売上高が5,000万円以下で、なおかつ電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合
- 電磁的記録のダウンロードの求めに応じ、なおかつ電磁的記録の出力書面の提示または提出の求めに応じる場合
- 以下3つの要件を満たし、猶予措置が適用される場合
・通常書面を保存するのと同様な方法で整理された書面の保存
・電子データを一括ダウンロード(コピー含む)して提示
・通常要件で保存できなかった理由の説明と容認
1に関しては、売上高の条件が1,000万円から5,000万円に引き上げられ、対象範囲が広がった形です。
新たに加わった2に関しては、電磁的ダウンロードの求めに応じるとともに、以下のいずれかの方法で整理された出力書面を提示または提出する必要があります。
- 課税期間ごとに、取引年月日の日付順にまとめたうえで、取引先ごとに整理する方法
- 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日の日付順に整理する方法
- 書類の種類ごとに1または2と同様の方法により整理する方法
書面に出力する時期については定められていないものの、提示または提出を求められた際に遅延なく対応するためにも、日頃から書面出力して整理しておくことが大切です。
また、書面と電子の二重保存になるため業務負荷が高く、必要に応じて速やかに提示・提出しなければならないため、法的要件ではないものの電子データも年月日別や取引先別などで整理しておく必要があります。
検索要件に対応する方法
次は、電子帳簿保存法の検索要件に対応する方法を解説します。
検索要件への対応方法は、以下2つの方法に大別することができます。
- システム導入による対応
- 業務フローでの対応
それぞれ詳しく確認していきましょう。
システム導入による対応
電子帳簿保存法の検索要件に対応する際は、システム導入による対応が一般的です。
先述した検索要件に対応する機能が備わっているシステムであれば、スムーズに対応することができます。
後述する業務フローでの対応の場合、運用の負荷が大きくミスも発生しやすいため、特別な事情がない限りシステム導入による対応がおすすめです。
とくにおすすめなのが、「JIIMA認証」を取得しているシステムによる対応です。
「JIIMA認証」とは、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会が管理する認証制度で、電子帳簿保存法の要件を満たすソフトウェアに認証が与えられます。
電子帳簿保存法には検索要件以外にも満たすべき要件が存在しますが、「JIIMA認証」を取得しているシステムであれば電子帳簿保存法にスムーズに対応することができるでしょう。
業務フローでの対応
システムを導入しない場合、業務フローで検索要件に対応する必要があります。
具体的には、以下のような対応が考えられます。
- 検索条件を含む規則的なファイル名を付ける
- ファイル名に連番を付け、Excelなどで索引簿を作成する
ひとつめは、取引年月日・取引金額・取引先名を含む規則的なファイル名を付ける方法です。
たとえば、2023年8月31日に〇〇株式会社から受領した100,000円の請求書であれば、「20230831_〇〇株式会社_100000」のようにファイル名を設定します。
ふたつめは、ファイル名に連番を付けるとともに、Excelなどで索引簿を作成して管理する方法です。
索引簿には、ファイル名に付けた連番と対応する形で、取引年月日・取引金額・取引先名といった検索条件を記載します。
なお、これらの方法で対応する場合、「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を策定し、備付・運用する必要があります。
このようにシステムを導入せずに検索要件に対応することも可能ですが、作業が煩雑で担当者の負担が大きく、人的ミスも発生しやすいため注意が必要です。
もしも運用の過程でミスがあり、適切に検索したりダウンロード・書面出力できない場合、検索要件を満たしていないと判断されてしまう恐れがあります。
電子帳簿保存法への対応なら「invoiceAgent」
運用負荷の増加やミスが発生するリスクを考えると、システム導入による対応がおすすめだとお伝えしました。
次は、検索機能の確保を含む電子帳簿保存法への対応を実現する具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」をご紹介します。
「invoiceAgent」は「JIIMA認証」を取得しており、電子帳簿保存法で求められる各種要件に対応しています。
では、「invoiceAgent」の特徴を確認していきましょう。
文書データの送受信「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、電子帳簿保存法への対応を支援するソリューションです。
PDFファイルをアップロードするだけで企業間で帳票データを送受信でき、帳票データの電子帳簿保存法対応を支援します。
PDFファイルとして出力する前のCSVファイルを所定のフォルダにアップロードすることで、事前に設定したルールに基づきPDFファイルを自動生成することも可能です。
また、「invoiceAgent 電子取引」はインボイス制度への対応という面でも有効です。
デジタルインボイスの標準規格である「Peppol(ペポル)」経由のデータ送受信に対応しており、受領した適格請求書のデータ化や適格請求書発行事業者の登録確認も行えます。
これらの特徴により、電子帳簿保存法の電子取引やインボイス制度への対応をスムーズに実現することができるでしょう。
文書データの保存・一元管理なら「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、電子帳簿保存法に則した文書データの保存および一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」で作成・出力した文書データはもちろん、他システムで作成・出力した文書データもまとめて取り込み、事前に設定したルールに従い自動で仕分け・保存を実行します。
複雑な条件に対応する高精度な検索機能を搭載しているので、電子帳簿保存法の検索要件にも問題なく対応できます。
また、文書の保存期間に応じた自動削除機能や改ざんなどの不正防止・検知に役立つ証跡管理機能も備わっているので、文書データのライフサイクルを安全かつ効率的に管理することが可能です。
「invoiceAgent」で電帳法対応を推進・実現した事例
最後に、「invoiceAgent」の導入で電子帳簿保存法への対応を推進・実現した事例をご紹介します。
住友グループの総合不動産会社である住友不動産株式会社は、「invoiceAgent 」の導入により、改正電帳法で求められる検索要件への対応を実現しました。
紙によるやり取りが多いという業界特有の事情に加え、同社は事業規模の大きさから取引量が多く、業務効率化を図るうえでペーパーレス化の推進が課題となっていました。
そうした背景もあり、同社では社内の申請書類やオフィスビルのテナント宛てに発行する請求書などの電子化を進めてきました。
その過程で電子帳簿保存法の改正が決まり、受領する電子請求書を改正電帳法の要件に則した形で電子保存することができ、支払承認までのワークフローを兼ね備える仕組みの構築を検討し始めました。
システム選定にあたり、コスト面やJIIMA認証の有無、承認ワークフローの有無、導入実績などを考慮した結果、「invoiceAgent」の導入に至りました。
導入後、電子帳簿保存法で求められる検索要件に対応する仕組みを構築することに成功しただけでなく、承認プロセスを電子化したことで業務スピードの向上も実感されています。
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まとめ
今回は、電子帳簿保存法における検索要件(検索機能の確保)について、その内容や税制改正による変更点、対応方法などについて解説しました。
記事内でもお伝えした通り、検索要件を含め電子帳簿保存法の各種要件を満たすには、システムでの対応がおすすめです。
今回ご紹介した情報も参考に、「invoiceAgent」による電子帳簿保存法への対応を検討してみてはいかがでしょうか。