電子帳票とは?
そもそも帳票とは、「帳簿」と「伝票」をあわせた総称で、事業活動のなかで行われる取引を記録する書類を指します。
そして電子帳票とはデータ化した帳票のことで、電子帳票システムで出力したり、OCR(光学的文字認識)機能によって紙の帳票をデータ化することが可能です。
帳票は紙媒体での保存が原則ですが、電子帳簿保存法が1998年に制定されたことで、一定の要件を満たせば電子データとしての保存が可能になりました。
後述するDXの活発化や働き方改革の普及といった社会的背景、そして電子帳票がもたらす多くのメリットから、近年は帳票の電子化に着手する企業が増えつつあります。
電子帳票が注目を集めている背景
先述の通り、1998年に電子帳簿保存法が制定されたことで、要件を満たせば帳票を電子データとして保存することが可能になりました。
ただし、電子帳簿保存法の制定当初は電子保存のための要件が厳しく、電子帳票が広く普及するまでには至りませんでした。
しかし近年、以下のような社会的背景から、電子帳票への注目が高まりつつあります。
- DXの活発化
- テレワークの普及
- 電子帳簿保存法の改正
- インボイス制度の開始
ここでは、電子帳票への注目度が高まる背景について、もう少し詳しく確認していきましょう。
DXの活発化
電子帳票の注目度が高まっている要因のひとつとして、DXの動きが活発化している点を挙げることができます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、ビジネスや社会に変革をもたらすこと。DXを実現する過程では、業務の電子化・ペーパーレス化が欠かせません。
そしてDXの第一歩として、事業活動で欠かすことができない帳票の電子化・ペーパーレス化に着手する企業が増えつつあるのです。
以下の記事ではDXの意味や必要性、取り組み方について詳しく解説しています。あわせてお読みください。
働き方改革の普及
政府が主導する働き方改革の影響もあり、多様な働き方が徐々に広まりつつあります。
とりわけ、オフィスに出社することなく勤務するテレワークは、新型コロナウイルス感染症の流行拡大をきっかけに急速に普及しました。
しかし一方で、帳票などのビジネス文書を紙媒体で運用していることで、書面の確認や押印、仕分けや発送作業のために出社せざるを得ないという声も少なくありませんでした。
このような背景があり、場所による制約が大きい紙の帳票から電子帳票への切り替えを検討する企業が増えてきています。
電子帳簿保存法の改正
2022年1月に電子帳簿保存法が改正されたことも、電子帳票への注目が高まっている要因のひとつです。
先述の通り、電子帳簿保存法が制定された当初、満たすべき要件のハードルが高かったこともあり、文書の電子保存が広く普及することはありませんでした。
その後、幾度かの法改正を経て徐々に電子保存の要件は緩和されていき、2022年1月の改正では大幅な要件緩和が実施されました。
以前よりも電子帳簿保存法の対応ハードルが下がったことから、今まで以上に電子帳票が普及していくと予想されているのです。
ちなみに、「電子帳簿」と「電子帳票」は意味も言葉の響きも似ていることから、「電子帳簿保存法」のことを「電子帳票保存法」と誤認しているケースが散見されます。
正しくは「電子帳簿保存法」ですので、間違わないよう注意しましょう。
以下の記事では、2022年1月の電子帳簿保存法改正について詳しく解説しているので、あわせてお読みください。
インボイス制度の開始
2023年10月開始のインボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)もまた、電子帳票への注目が増す要因だと言えます。
インボイス制度開始に伴い、請求書関連業務や納税関連の事務処理が今まで以上に煩雑化すると予想されており、経理などの担当部門の負担増加が懸念されています。そうしたなか、インボイス制度開始後の請求書関連業務や納税関連の事務処理の負担軽減を図り、請求書や関連帳票の電子化を検討する企業が増えつつあるのです。
電子帳票システムの導入メリット
紙の帳票から電子帳票に切り替える場合、電子帳票システムを導入する方法が一般的です。
電子帳票システムを導入することで、主に以下のようなメリットが期待できます。
- 業務効率化
- コスト削減
- テレワークへの対応
- ガバナンスの強化
- データ活用・DX推進
ここでは、電子帳票システムを利用するメリットについて詳しく解説します。
業務効率化
電子帳票システム導入のメリットとして、業務効率化を挙げることができます。
電子帳票であれば、紙ベースの帳票運用で発生する書面の印刷や郵送準備などの作業が不要になります。
また、社内回覧や承認、仕分けなどの作業もデバイス上で完結することができるため、効率的に業務を進めることができます。
さらに、電子帳票は紙媒体よりも検索性に優れるため、問い合わせ対応や監査対応の効率化にも効果が期待できるでしょう。
コスト削減
電子帳票システムを導入することで、コスト削減の効果が期待できます。
紙媒体での帳票運用では、以下のようにさまざまなコストが発生します。
- 紙代・インク代などの印刷コスト
- 郵送代・封筒代などの配送コスト
- 保管スペースや備品代などのコスト
- 収入印紙のコスト
電子帳票であれば、上記のようなコストを削減することができるだけでなく、先述した業務効率化によって人件費の削減にも効果が期待できます。
テレワークへの対応
電子帳票システムを導入することで、テレワークの促進にもつなげることが可能です。
紙媒体で帳票を運用している場合、書面の印刷や確認、取引先への郵送準備など、オフィス以外の場所では実施できない作業が数多く発生してしまいます。
一方、電子帳票システムを用いることで、帳票の作成・確認や配信、管理までをデバイス上で完結することができます。
自宅や外出先など、オフィス以外の場所でも業務を遂行できるため、テレワークを実施するための体制を整えることができるでしょう。
ガバナンスの強化
電子帳票システムの利用は、ガバナンスの強化にも役立ちます。
紙の文書は、物理的に紛失したり、経年劣化によって可読性を損ねたりといったリスクがあります。
また、関係者以外による盗み見や持ち出し、改ざんといった不正を防ぐために、物理的なセキュリティ対策を徹底する必要もあります。
一方、電子帳票であれば、物理的に紛失・劣化してしまう恐れがなく、個別に閲覧権限を設定してセキュリティ強度をコントロールすることが可能です。
また、電子帳票システムには証跡管理機能やタイムスタンプ機能など、不正を検知・防止する機能が備わっているものもあります。
これらの特徴により、紙媒体での帳票運用よりも強固なガバナンス体制を構築することができるでしょう。
データ活用・DX推進
データ活用の推進という面でも、電子帳票システムの導入は有効です。
紙の帳票の場合、書面の情報をそのままデータとして扱うことができず、手動による入力作業や集計作業の手間が発生します。
一方、電子帳票であれば文書内の情報をテキストデータとして扱うことができるため、紙媒体よりもデータ分析に活用しやすいと言えます。
また、ほかのITシステム・ツールとの連携による業務の電子化を行いやすくなるため、DXを効果的に推進するための基盤づくりとしても有効です。
電子帳票システムの選び方
電子帳票システムを導入することで多くのメリットが期待できるとお伝えしましたが、そのメリットを享受するには自社に合ったシステム選びが重要になります。
次は、電子帳票システムを選ぶ際に注目したいポイントとして、以下の6点をご紹介します。
- JIIMA認証の有無
- 業務範囲の明確化
- 機能の拡張性も重要
- 利用者の負担への配慮
- セキュリティ・ガバナンスの観点
- サポートの充実度
JIIMA認証の有無
紙の帳票から電子帳票へと切り替えるにあたって、電子帳簿保存法への対応は必須となります。
そこで、電子帳票システムを選ぶ際に注目したいのが「JIIMA認証」の有無です。
JIIMA認証とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会による認証制度で、電子帳簿保存法の要件を満たすソフトウェアに対して付与されます。
JIIMA認証を取得している電子帳票システムであれば、スムーズに電子帳簿保存法に対応することができるでしょう。
業務範囲の明確化
ひとくちに電子帳票システムと言っても、数多くの製品が存在します。
たとえば、電子帳票の出力や紙帳票のデータ化を得意とするシステムや、電子帳票の送受信を得意とするシステム、電子帳票の保存・管理を得意とするシステムなど、製品によって特徴が異なります。
電子帳票に切り替えるにあたって、「作成」「送受信」「管理」という業務範囲のどこに比重を置くのかを明確にして、自社に合った電子帳票システムを選定していくことが大切です。
機能の拡張性も重要
「業務範囲の明確化」が重要とお伝えしましたが、将来を見据えて機能の拡張性についても確認しておきましょう。
具体的には、紙の帳票のデータ化から送受信、そして保管・管理までを一貫して行える製品を選択することをおすすめします。
ウイングアーク1stが2023年4月に実施した調査では、電子帳票の保管・管理と受け取りで異なるツールを利用している人のうち、90.8%が業務効率が悪いと感じたことがあると回答。
また、電子帳票の保管・管理と受け取りに異なるツールを使用することで、情報漏洩リスクの高まりを感じたことがあると回答した人の割合は76.6%にのぼりました。
つまり、電子帳票に関わるツールが散在してしまうことで、利便性が低下したりセキュリティリスクが生じたりする恐れがあるのです。
この調査結果を踏まえると、現段階では一部の帳票関連業務だけを電子化したいと考えている場合でも、将来的に電子帳票に関わる業務範囲を拡張していくことを見据えて、帳票のデータ化や送受信、保管・管理まで幅広くカバーできる製品を選択しておくべきだと言えるでしょう。
- 調査名:企業間取引の電子化に関する実態調査
- 調査対象:100億円以上の売上の企業に所属する請求書関連業務に携わる会社員
- 有効回答数:531名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。 - 調査期間:2023年4月5日〜同年4月6日
▼調査の詳細はこちら
「企業間取引の電子化に関する実態調査」を実施 | ウイングアーク1stコーポレートサイト
利用者の負担への配慮
電子帳票システム選びでは、実際にシステムを利用する現場と取引先の負担にも配慮することが大切です。
たとえば、既存の帳票フォーマットを変更することなく電子化することができるか、直感的に操作可能か、紙の帳票運用と両立することはできるか、といった点を確認して、できるだけ利用者の負担を軽減できるようなシステムを選びましょう。
セキュリティ・ガバナンスの観点
電子帳票システムは、セキュリティ・ガバナンスに配慮した製品を選ぶことも大切です。
帳票は企業にとって重要な情報資産であり、第三者による盗み見や持ち出し、改ざんといった不正を防止し、適切に管理する必要があります。
たとえば、閲覧権限や印刷可否の設定、改ざんを防止するタイムスタンプや電子署名、証跡管理機能など、セキュリティ・ガバナンスを担保するための機能が備わっているかを事前に確認しましょう。
サポートの充実度
電子帳票への切り替えおよび運用を円滑に進めるためにも、システムを提供するベンダーのサポート体制についても注目してみましょう。
とくに、導入にあたってどのようなサポートを受けることができるのか、運用開始後も利用できる伴走型のサポートは用意されているか、といった点は事前に確認しておくべきポイントだと言えます。
また、トレーニングコンテンツやFAQの充実度、ユーザー参加型のコミュニティサイトの有無など、利用者が自ら製品理解を深めたり疑問を解消できる環境が整っているかもチェックしてみましょう。
電子帳票への切り替えなら「invoiceAgent」
次は、電子帳票への切り替えを実現する具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」をご紹介します。
「invoiceAgent」は、帳票のデータ化から送受信、保管・管理までを一気通貫で実現する電子帳票プラットフォームで、JIIMA認証を取得しています。
では、「invoiceAgent」の特徴を見ていきましょう。
紙の帳票をデータ化する「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙の帳票をデータ化するソリューションです。
高精度な5つのOCRエンジンを搭載しており、読み取り項目に応じて適切なOCRエンジンを選択することができるほか、1つの読み取り項目に対して複数のOCR処理を行うこともできます。また、文書の歪みや傾きなどを自動補正する機能も備わっています。
これらの特徴により、活字・手書き文字を問わず紙の帳票を高精度にデータ化することが可能です。
取引帳票の送受信を電子化する「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、企業間でやり取りする請求書や受領書などの送受信を電子化するソリューションです。
PDF形式の帳票データをアップロードするだけで送受信することができ、「invoiceAgent 電子取引」上で複数の取引先とのやり取りを完結することができます。
また、デジタルインボイスの標準規格である「Peppol」経由のデータ送受に対応予定なので、2023年10月開始のインボイス制度への対応という点においても有効です。
契約手続きを電子化する「invoiceAgent 電子契約」
「invoiceAgent 電子契約」は、契約手続きを電子化するソリューションです。
契約書の作成や社内承認、署名による契約締結という一連の流れをクラウド上で再現することができ、面倒な契約手続きの効率化および迅速化を実現します。
また、ウイングアーク1stが立会人となって電子署名とタイムスタンプを付与して完了証明書を発行するため、書面契約と同等の法的証拠力を担保することが可能です。
電子化した帳票の一元管理なら「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、電子帳票の一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent AI OCR」でデータ化した帳票だけでなく、他システムで作成した帳票のデータをまとめて取り込み、一元管理することが可能です。
取り込んだ帳票データは、あらかじめ設定したルールに基づき自動で仕分け保存され、高度な検索機能によって速やかに参照・出力することが可能です。
また、帳票の保存期間に応じた自動削除機能を備えているほか、証跡管理機能によって改ざんなどの不正を防止・検知することができます。
「invoiceAgent」の導入事例
最後に、「invoiceAgent」を導入して電子帳票への切り替えを実現した事例をご紹介します。
受領する請求書の電子化で経理業務改革を推進(西武ホールディングス)
グループ会社全体で「デジタル経営」を推進する株式会社西武ホールディングスは、「invoiceAgent」の導入で受領する請求書の電子化に成功しています。
同社では、2019年にERPパッケージを導入するなど、かねてより会計システムの刷新に取り組んできました。
しかし、2019年時点では電子帳簿保存法の対応ハードルが高く、請求書をはじめとした取引先から受領する帳票の電子保存については先送りとなっていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によりテレワークの必要性が高まったこと、そして2022年1月の電子帳簿保存法改正が重なったことで、受領する請求書の電子化に着手することを決定。
すでに導入していたERPパッケージとの連携が容易で、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応している点が決め手となり、「invoiceAgent」の導入に至りました。
取引先がPDF形式の請求書をアップロードするだけで受領でき、電子データのまま開封・保存まで行える仕組みが完成したことで、作業の大幅な効率化を実現。
現在はグループ23社への展開が完了し、最終的には40社での利用を想定するなど、グループ全体の「デジタル経営推進」に「invoiceAgent」を活用しています。
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株式会社西武ホールディングスのinvoiceAgent導入事例をもっと見る
帳票の電子化で働き方改革とコスト削減(三井住友ファイナンス&リース)
総合リース会社の三井住友ファイナンス&リース株式会社は、「invoiceAgent」を利用して請求・支払に関する帳票を電子配信へと切り替えています。
同社では以前、毎月の請求・支払関連の帳票を紙で運用しており、印刷・発送コストの負担や郵送によるタイムラグが課題となっていました。
また、新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴いテレワークへの移行が進むなか、紙の帳票の発行・郵送業務のために出社しなければならない状況が発生していました。
そこで同社は「invoiceAgent」を活用した帳票の電子化に着手。
オンボーディングサポートを活用しつつ、約3ヶ月という短期間で帳票の電子配信を開始しました。
スモールスタートで電子帳票の運用を開始した同社ですが、段階的に適用範囲を広げ、電子配信へと切り替えた取引先は約1200件まで拡大。
リモートワークの推進とコスト削減を実現しただけでなく、取引先のペーパーレス化や業務効率化にも寄与しています。
▼事例詳細はこちら
三井住友ファイナンス&リース株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
電子帳簿保存法の対応基盤を整備(JFEスチール)
世界有数の鉄鋼メーカーとして知られるJFEスチール株式会社は、「invoiceAgent」の導入によって請求書のWeb配信を実現し、電子帳簿保存法への対応にも効果を得ています。
同社では以前、請求関連の帳票を紙媒体で運用していましたが、鉄鋼業界では「20日締め月末払い」という商習慣があり、郵送によるタイムラグが課題となっていました。
さらに、コロナ禍となり在宅勤務が広まるなか、請求書のデータ送付を希望する取引先が増え、請求業務は今まで以上に煩雑に。
そうした課題を解消するため、同社では「invoiceAgent」の導入を決定しました。
「invoiceAgent」の導入によって請求書をWeb配信する仕組みが整い、発行した請求書をタイムリーに取引先に配信することが可能になったほか、請求業務の負荷が大幅に軽減されました。
さらに、電子帳簿保存法に対応するための基盤整備にもつながっています。
▼事例詳細はこちら
JFEスチール株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、注目度が高まっている電子帳票に焦点を当て、メリットや電子帳票システムの選び方などを紹介しました。
DXや働き方改革の動きが活発化しているなか、電子帳票への切り替えは一層加速していくことが予想されます。
紙媒体の帳票運用に課題を感じている企業は、電子帳票への切り替えを実現する「invoiceAgent」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。