請求書はメールで送っても大丈夫?
そもそも、請求書をメールで送付することは法的に問題ないのでしょうか。
まずは、請求書をメールで送ることの可否や、注意点について確認していきましょう。
「請求書のメール送付」は法律上問題ない
請求書を電子化してメールで送付することは法律上問題ありません。
請求書の発行は法的に義務づけられているものではなく、取引内容や金額、期日などを双方が確認できる状態であれば、発行する必要がないためです。
請求書の保存方法と保存期間
請求書などの国税関係書類は、原則として紙媒体での保存が義務付けられています。ただし、電子帳簿保存法の要件を満たすことで、電子データとして保存することも可能です。
以下の記事では、電子帳簿保存法への対応方法や2022年1月から適用される改正のポイントについて解説しています。あわせてご確認ください。
なお、請求書を紙媒体で保存する場合も、電子データとして保存する場合も、発行側・受取側ともに7年間の保存が義務づけられています。
取引先への事前確認は必須
メールで請求書を送付する場合、事前に取引先の了承を得ることが必要です。
近年では請求書をメールで送付する企業が増えつつありますが、紙の請求書を必須としている企業はまだまだ多いのが現状です。
そのため、事前に承諾を得ないままメール送付に切り替えてしまうとトラブルに発展する恐れがあります。
請求書をメールで送付したい旨を事前に説明したうえで、取引先が原本郵送を希望する場合には引き続き請求書原本を郵送するなど、取引先への配慮を忘れないようにしましょう。
請求書をメールで送る方法
次に、メールで請求書を送付する際、請求書に必要な記載項目や、請求書のファイル形式、メールの件名・本文の例文をご紹介します。
メールで送付する請求書に必要な項目は?
メールで送る場合も、請求書に記載するべき項目は紙の請求書と同様です。
2023年9月30日まで、仕入額控除を受けるために必要な「区分記載請求書」では以下の記載事項が必要でした。
区分記載請求書の記載事項(2023年9月30日まで)
- 区分記載請求書等発行者の氏名又は名称
- 課税資産の譲渡等を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の提供の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減税率の対象となるものであれば、その内容及び軽減税率の対象である旨)
- 税率ごとに区分して合計した税込価格
- 区分記載請求書等の交付を受ける事業者の氏名又は名称
2023年10月にインボイス制度が始まったことで、仕入額控除を受けるために「適格請求書」が必要になります。
適格請求書の記載事項(2023年10月1日から)※太字が追加箇所
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 課税資産の譲渡等を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の提供の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減税率の対象となるものであれば、その内容及び軽減税率の対象である旨)
- 税率ごとに区分した税抜価格又は税込価格の合計額及び適用税率
- 消費税額等
- 適格請求書の交付を受ける事業者の氏名又は名称
適格請求書は区分記載請求書よりも記載項目が増え、税率ごとに合計額や消費税額を算出しなければならないため、請求業務の負担が今まで以上に大きくなると懸念されています。
そのため、インボイス制度下での請求業務の負担軽減を目的に、請求書の電子化を検討する企業が増えつつあります。
メールで送付する場合のファイル形式は?
請求書をメールで送付する場合、PDFファイルとして添付するのが一般的です。
PDFファイルであれば、発行後に記載内容を変更されにくく、相手先でプリントアウトするのも簡単です。
Excel(エクセル)などの表計算ツールを使用して請求書を作成している場合は、そのまま添付して送るのではなく、PDFファイルに変換してから送付しましょう。
メールで送付する請求書に印鑑は必要?
請求書をメールで送付する場合、印鑑の要否について気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
じつは、書面・メールを問わず、請求書に印鑑を押さなければならないという決まりはありません。
とはいえ、請求書への押印は商習慣として広く浸透しており、偽造防止の観点でも一定の効果が期待できることから、メールに添付する請求書データにも印鑑を押すことをおすすめします。
主な方法としては、印鑑を押した請求書をスキャンしてPDFにする方法のほか、印影を画像データ化した電子印鑑を利用する方法があります。
請求書を送付する際のメール例文
請求書をメールに添付して送る際、メールの件名や本文をどうするべきか迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
請求書をメールで送付する際は、以下の点に気を付けましょう。
- 伝わりやすいタイトル(件名)にする
- 添付ファイルがあることを明記する
次は、請求書をメールで送付する際の件名・本文のサンプルを見ていきましょう。
請求書原本を送付しない場合の例文
請求書をメールのみで送付する(原本を郵送しない)場合のメール件名・本文の例文です。
・件名
【請求書】〇〇月分請求書送付のご案内(添付書類1件)
・本文
株式会社〇〇〇〇(※相手先の会社名)
〇〇〇〇部(※担当部署名)
〇〇〇〇(※担当者名)様
平素より格別のお引き立てをいただき御礼申し上げます。
〇〇株式会社(※自社名)の〇〇(※自分の名前)と申します。
「〇〇(※案件名)」の請求書を添付ファイルにて送付させていただきますので
ご査収のほど、よろしくお願いいたします。
添付ファイル名:〇〇〇〇.pdf
ご請求番号:〇〇〇〇〇〇〇
ご請求金額:〇〇〇,〇〇〇円
お支払期日:〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
ご不明点や添付ファイルを開封できない等の不都合がございましたら、
お手数ではございますがご一報いただければと存じます。
また、請求書原本郵送の必要がございましたらお伝えください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
請求書原本も送付する場合の例文
メールだけでなく、紙の請求書原本も郵送する場合のメール件名・本文の例文です。
・件名
【請求書】〇〇月分請求書送付のご案内(添付書類1件)
・本文
株式会社〇〇〇〇(※相手先の会社名)
〇〇〇〇部(※担当部署名)
〇〇〇〇(※担当者名)様
平素より格別のお引き立てをいただき御礼申し上げます。
〇〇株式会社(※自社名)の〇〇(※自分の名前)と申します。
「〇〇(※案件名)」の請求書を添付ファイルにて送付させていただきます。
なお、請求書原本もあわせて郵送させていただきますので、ご査収のほど、よろしくお願いいたします。
添付ファイル名:〇〇〇〇.pdf
ご請求番号:〇〇〇〇〇〇〇
ご請求金額:〇〇〇,〇〇〇円
お支払期日:〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
ご不明点や添付ファイルを開封できない等の不都合がございましたら、
お手数ではございますがご一報いただければと存じます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
請求書をメールで送付するメリット・デメリット
記事冒頭で触れた通り、コスト削減や業務効率化を目的に請求書のメール送付を検討する企業は少なくありません。
しかし、請求書をメール送付に切り替えるだけで、本当にコスト削減や業務効率化につながるのでしょうか。
次は、請求書をメール送付することのメリットやデメリットについて見ていきましょう。
請求書をメールで送るメリット
請求書をメールで送る主なメリットとして、以下の2点を挙げることができます。
- ペーパーレスによるコスト削減
- 取引先に届くまでのタイムラグがない
- 在宅勤務などのテレワーク促進
各メリットについて詳しく見ていきましょう。
ペーパーレスによるコスト削減
請求書をメールで送付するメリットのひとつが、ペーパーレスによるコスト削減です。
メールで請求書を送付することで、原本の印刷・郵送コストを削減することが可能です。
また、紙の請求書の封入封緘や郵送手続きといった作業にかかっていた人的コストも抑えることができます。
取引先に届くまでのタイムラグがない
請求書をメールで送ることで、取引先の手元に届くまでのタイムラグを解消することができます。
郵送の場合、請求書を送付してから取引先の手元に届くまでに数日間かかってしまいます。
もしも記載内容にミスがあった場合には、修正してから再送付しなければならないため、さらに多くの日数が掛かってしまうでしょう。
メールでの送付であれば、発行したその日に取引先に確認してもらうことができ、もしも記載内容にミスがあっても速やかに修正・再送することが可能です。
在宅勤務などのテレワーク促進
従来の紙の請求書では、請求書の印刷や発送、押印などをオフィスで行わなければならず、テレワーク中であっても出社しなければならないケースが多々あります。
一方、メール送付であれば場所を問わず作業を進めることができるため、テレワークの促進・定着にも効果が期待できます。
請求書をメールで送るデメリット
請求書をメール送付することのデメリットとして、以下の4点を挙げることができます。
- 確認工数がかかる
- 送付ミスのリスクがある
- 電子帳簿保存法対応の負担
- セキュリティ面の不安も
各デメリットについて詳しく見ていきましょう。
確認工数がかかる
「メールで請求書データを送付する」と聞くと、請求業務の効率が改善すると考える方も少なくないでしょう。しかし、請求書をメール送付に切り替えるだけでは、請求業務の効率化にはつながりません。
添付する請求書データの内容確認はもちろんですが、メール本文や宛先のダブルチェックなど、紙の請求書以上に確認工数がかかってしまうケースは珍しくありません。
送付ミスのリスクがある
送付ミスなどの人的ミスが発生するリスクがある点も、請求書をメールで送付するデメリットだと言えます。
メール送付の場合、クリックひとつで請求書データが送信されてしまうため、紙での送付以上に慎重な確認が求められます。
また、どれだけ慎重にチェックを行ったとしても、手作業や目視によるフローが介在する以上、人的ミスの可能性を完全に払拭することはできません。
電子帳簿保存法に対応する運用体制の整備
請求書をメールで送付する方法は、電子帳簿保存法の電子取引要件に該当します。
そのため、電子取引要件に対応する運用体制を整備する必要があります。
専用のシステムを導入することなく電子取引要件に対応することは可能ですが、規則性のあるファイル名を設定したり索引簿を作成したりして検索性を担保しなければならないほか、「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を策定して運用ルールを徹底する必要があります。
セキュリティ面の不安も
請求書をメール添付して送付するデメリットとして、セキュリティ面に不安がある点も見逃せません。
従来、PDFの請求書をメールで送付する場合、パスワード付きのzipファイルで暗号化してメールに添付・送信し、zipファイルのパスワードを別途メールで送付する手法、いわゆる「PPAP」が主に用いられてきました。
しかし、PPAPにはウイルス感染やメール盗聴などのリスクがあることが指摘されており、近年はPPAP廃止の流れが加速してきています。
そのため、セキュリティの観点からPPAPによるファイル送信・受信を禁止する企業は多く、メールでの請求書送付が認められないケースも少なくありません。
請求書を電子化するなら「invoiceAgent 電子取引」
請求書のメール送付は、ペーパーコストの削減やテレワークの促進といった一定の効果は期待できるものの、業務効率の面でデメリットも存在することがわかりました。
これらのデメリットを解消するためには、ただ紙の請求書を電子化するだけでなく、送付までの業務も電子化・自動化する必要があります。
請求書に関する業務効率を高めたいと考えるのであれば、ウイングアーク1stが提供する電子取引プラットフォーム「invoiceAgent 電子取引(インボイスエージェント 電子取引)」の活用がおすすめです。
「invoiceAgent 電子取引」を導入することで、請求書の電子化によるメリットはもちろん、請求書の発行や送付、管理といった業務を効率化することが可能です。
次は、「invoiceAgent 電子取引」の特徴をご紹介します。
現状の請求業務を大きく変えずに電子化
「invoiceAgent 電子取引」は、従来の請求書フォーマットをPDF形式にするだけでWeb配信が可能で、既存システムへの改修は不要です。
また、「invoiceAgent 電子取引」には簡易承認フロー機能や画像イメージ付加機能が備わっています。そのため、請求書発行前の社内承認フローを再現でき、紙の請求書と同様に印影を付けることも可能です。
このような特徴から、現状の請求業務を大きく変更せずに電子化することができます。
取引先ごとの自動仕分けで作業負担と人的ミスを削減
「invoiceAgent 電子取引」は、請求書データが1つのファイルにまとまっていても、取引先ごとに自動で仕分けが可能なため、作業時間や確認工数を削減することができます。
また、取引先は専用サイトから請求書をダウンロードすることができ、請求書以外の文書のアップロードも行えます。
紙の請求書郵送や請求書データのメール送付で発生しがちな、手作業による業務負担および人的ミスの削減に効果が期待できるでしょう。
スモールスタート&ハイブリッド運用で取引先の負担が少ない
「invoiceAgent」では、請求書のWeb配信とあわせて、郵送サービスをご利用いただけます。
紙の請求書を希望する取引先には従来通り原本を送付することができるので、Web配信と郵送のハイブリッド運用が可能です。
まずは一部の取引先から請求書のWeb配信を開始したいという場合もスモールスタートすることができます。
電子帳簿保存法やインボイス制度に対応
先述の通り、請求書を電子データとして保存するためには、電子帳簿保存法の要件に対応する必要があります。
「invoiceAgent」は、電子帳簿保存法に対応する法的要件を満たすソフトウェアに与えられるJIIMA認証を取得したサービスです。
- 電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証
- 電子書類ソフト法的要件認証
- 電子取引ソフト法的要件認証
そのため、電子帳簿保存法に対応する運用体制をスムーズに構築することが可能です。
また、電子インボイスの標準仕様である「Peppol」経由のデータ送受や、適格請求書発行事業者の登録番号の照合にも対応しているため、インボイス制度に向けた準備としても有効です。
「invoiceAgent」で請求業務の電子化を実現した事例
最後に、「invoiceAgent」を利用して請求業務の電子化を実現した事例をご紹介します。
Web配信への切り替えで業務負担が軽減(JFEスチール)
世界有数の鉄鋼メーカーとして知られるJFEスチール株式会社は、「invoiceAgent」を導入して請求書のWeb配信を実現しました。
同社では、営業統括部が紙ベースで請求業務を行っており、請求書の発送や問い合わせ対応などを人手で対応していました。
そうしたなか、コロナ禍に突入して出社制限が行われ、請求書をデータで受領したいという取引先の需要が高まりました。しかし、連続帳票で出力されるデータを取引先ごとに分割し、PDF化してメールで送付する作業は大きな負担となってしまいました。
また、鉄鋼業界には20日締め月末払いという商習慣が根付いており、タイトなスケジュールのなかで請求書を送付しなければならないという課題も存在しました。
そこで同社は、請求書をWebで配信する仕組みを導入することを決断し、サービスの比較検討を経て「invoiceAgent」の導入に至りました。
請求書のWeb配信が可能になったことで、業務負荷が軽減したことに加え、速やかに取引先に送付しなければならないというプレッシャーからも解放されました。
▼事例詳細はこちら
JFEスチール株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
請求書のWeb配信で作業時間が半減(エムオーテックス)
「LanScopeシリーズ」をはじめとしたソフトウェア開発・販売を行うエムオーテックス株式会社は、「invoiceAgent」を活用して請求書をWeb配信する仕組みを構築しました。
同社では従来、請求書を紙ベースで運用しており、担当者2人がかりで月間約40時間を請求書発行業務に費やしていました。
その後、新型コロナウイルス感染症の流行によって在宅勤務が基本となり、一部の取引先においてはメールでの請求書配信に切り替えたものの、送付先や添付ファイルのダブルチェックの負担が増え、送付ミスのリスクも高まってしまいました。
そこで同社は、「invoiceAgent」の導入によって、紙とメールによる請求書発行をWeb配信へと切り替えることを決断。
「invoiceAgent」の導入後、約40時間かかっていた請求書発行の作業工数は半減したほか、郵送のために出社して作業する必要がなくなるなど、大きな効果を実感しています。
▼事例詳細はこちら
エムオーテックス株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
請求書関連の作業時間を3分の1に短縮(アスノシステム)
「会議室.COM」などのサイト運営事業を手掛けるアスノシステム株式会社は、「invoiceAgent」の導入により請求書のWeb配信化と作業時間短縮に成功しました。
同社では、2016年に「Salesforce」を、2017年にウイングアーク1stの「SVF Cloud」を導入して「Salesforce」から帳票を直接発行する仕組みを構築していました。
その後、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、リモートワークに移行する取引先が増加。
これまで郵送のみで送付していた請求書を、メールで受け取りたいというニーズが増え始めました。
郵送とメール、2つの送付方法に対応しなければならなくなったことで、事務作業が煩雑化し、ミスの発生リスクやセキュリティ上の問題が顕在化しはじめました。
そこで同社は、これらの問題の根本的な解決を図り、「invoiceAgent」による請求書のWeb配信化を決断。
「invoiceAgent」の導入後、請求書発行の作業時間が従来の3分の1まで短縮され、メール送付によるミスやセキュリティ面のリスクを解消することに成功しています。
▼事例詳細はこちら
アスノシステム株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、請求書をメールで送付する場合の注意点やメールの例文、請求業務を効率化する方法についてご紹介しました。
今回ご紹介したウイングアーク1stの「invoiceAgent 電子取引」は、請求書を電子化するだけでなく、メール送付や管理の手間も削減することが可能です。
契約前にサービスをお試しいただける無償トライアルもご用意しているので、請求業務の効率化を検討している方はぜひお試しください。