書類のPDF化とは?

まず、書類のPDF化とは何を指すのかを確認しておきましょう。
書類のPDF化とは、紙媒体の書類や、異なるファイル形式の書類データをPDFファイルに変換することを意味します。
そもそもPDFとは、「Portable Document Format」の頭文字から取られており、文字や図などを紙に印刷した状態を、そのままデータとして保存するファイル形式です。
書面のレイアウトをそのまま表現することができるため、紙媒体の文書をデータ化する際によく用いられます。
PDF化した書類であればインターネットを介して速やかに共有・配信することができ、後述するさまざまなメリットも期待できます。
また、2022年1月の電子帳簿保存法改正により、帳簿書類を電子保存するための要件が緩和されたこともあり、書類のPDF化によるペーパーレス推進を図る企業が増えてきています。
書類をPDF化する方法

書類をPDFファイルにするには、以下の方法が考えられます。
- ExcelやWordなどで作成した書類をPDFに変換する方法
- 帳票システムの出力設定をPDFに変更する
- 紙の書類をスキャンしてPDF化する方法
- オンラインソフト・ツールでPDFに変換する方法
それぞれの方法について見ていきましょう。
ExcelやWordなどで作成した書類をPDFに変換
書類をPDFファイルにする方法として、Word(ワード)やExcel(エクセル)などで作成した文書を、紙ではなくPDF形式で出力する方法があります。
WordやExcelのファイルは、閲覧するデバイスや使用しているWord・Excelのバージョンが異なる場合、レイアウトが崩れて意図しない表示形式になることがあります。
その点、WordやExcelで作成したデータをPDFファイルに変換してから共有することで、意図したレイアウトのまま共有することができます。
WordやExcelで作成した文書をPDF出力する際は、以下の手順でPDFファイルを出力します。
- WordもしくはExcelで作成済みの書類のファイルを開く
- 画面左上部にある「ファイル」をクリック
- 画面左にある「エクスポート」をクリックし、「PDF/XPSの作成」をクリック
- PDFファイルの保存場所とファイル名を選択し、「発行」をクリック
- 作成した文書のPDF出力が完了
帳票システムの出力設定をPDFに変更する
WordやExcelではなく、専用の帳票システムを利用している場合、帳票の出力先を社内プリンターからPDFに変更します。
現場部門での設定変更が難しい場合、情報システム部門などの担当部門に依頼し、PDFで出力されるように設定変更してもらいましょう。
紙の書類をスキャンしてPDF化
取引先から受領した紙の書類や、紙媒体で保存している書類は、スキャナやスキャン機能を搭載した複合機を使ってPDF化することが可能です。
製品によって細かな手順は異なりますが、書類をスキャンしてPDF化する大まかな流れは以下の通りです。
- スキャナ・複合機にPDF化したい書類をセット
- メニューから「スキャン」を選択
- PDFファイルの保存先を指定し、「スタート」ボタンを押す
- 書類のPDF化が完了
また、現在はスキャナや複合機以外にも、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像をPDF化するサービスも存在します。
オンラインソフト・ツールでのPDF変換は注意が必要
オンラインソフト・ツールを利用してWordやExcel、画像ファイルなどをPDFに変換する方法もあります。
インターネット上には、アップロードするだけでさまざまなファイル形式のデータをPDFに変換するオンラインソフト・ツールが有料無料問わず存在します。
手軽にPDFファイルに変換することができる一方で、無料のオンラインソフト・ツールはウイルス感染やデータ流出といったリスクが否定できません。
セキュリティの観点から、無料のオンラインソフト・ツールを利用してビジネス文書をPDFに変換するのは控えるべきだと言えるでしょう。
書類をPDF化するメリットとは?

書類のPDF化は、以下のようにさまざまなメリットをもたらします。
- 印刷・配送コストの削減
- 業務の効率化・迅速化
- セキュリティ・ガバナンスの強化
- テレワークの促進
- DX推進基盤の構築
次は、書類をPDF化することのメリットについて詳しく確認していきましょう。
印刷・配送コストの削減
書類を紙媒体ではなくPDF形式で運用することで、コスト削減につなげることが可能です。
書面として印刷する機会が減ることで、コピー用紙代やインク代などの印刷コストを削減することができます。取引先や拠点間でのやり取りをPDF形式のまま行えば、郵送費や封筒代などの配送コストも削減することができるでしょう。
また、取引先から紙で受け取った文書や、紙媒体のまま保管している書類をPDF化することで、キャビネットやファイルなどの備品代、保管スペースの賃料などの節約にもつなげることが可能です。
業務の効率化・迅速化
書類のPDF化は、業務の効率化・迅速化にも有効です。
PDF形式で書類を運用することで、文書の作成や社内確認といった作業をPCなどのデバイス上で完結することができ、従来の紙媒体での運用よりも効率的に情報共有したり業務を遂行したりすることが可能になります。
また、取引先や別拠点に書類を送る際も、郵送のようにタイムラグが発生することがなく、リアルタイムな情報伝達が可能です。
さらに、PDF形式で保存した文書はファイル名などで検索することができるため、紙の書類よりも速やかに参照できる点も大きなメリットと言えるでしょう。
セキュリティ・ガバナンスの強化
書類のPDF化は、セキュリティ・ガバナンスの強化にも効果的です。
紙媒体の文書は、経年変化によって見読性が損なわれてしまう恐れがあるほか、自然災害や人的ミスによって破損・紛失してしまうリスクもあります。
一方、PDF化した文書データであれば、経年変化の心配がなく、物理的に破損・紛失してしまうリスクもありません。
また、PDFファイルにパスワードを設定して閲覧権限を管理したり、タイムスタンプや電子署名によって改ざんを防止・検知することもできるため、紙の書類よりも強固なセキュリティ・ガバナンスを担保することが可能です。
テレワークの促進
紙媒体の書類をPDF化することで、テレワークの推進にもつなげることができます。
書類を紙媒体で運用していると、印刷や押印、郵送手続きなど、人手による作業が多く発生してしまいます。
また、紙媒体で書類を保管している場合、社内や取引先から問い合わせがあった際、オフィスにいなければ必要な情報を参照できないケースも考えられます。
書類のPDF化が進んでいれば、デバイス上で作成から配信まで完結でき、必要な書類を検索することもできるため、在宅勤務などのテレワーク時でも滞りなく対応することができるでしょう。
DX推進基盤の構築
書類のPDF化は、DXを推進していくための基盤づくりとしても有効です。DXの推進には、ITシステムの活用が不可欠です。
しかし、各種情報資産を紙媒体で運用している場合、ITシステムの利用範囲が限定されてしまいます。
一方、書類のPDF化を進めて情報資産をデータとして利活用できる体制を整えておくことで、ITシステムをスムーズに導入することができ、業務効率化や自動化、さらにはDXの推進につなげることができるでしょう。
OCRでPDF文書の文字認識が可能
PDFファイルはあくまで画像データであり、基本的にはPDF文書内の文字を編集することはできません。
しかし、OCR機能を搭載したスキャナで文書をPDF化したり、PDF化した文書データにOCR処理を施すことで、PDF文書内の情報を編集可能なテキストデータとして扱うことが可能になります。
OCRとは日本語で「光学的文字認識」と訳され、近年は活字だけでなく手書き文字もテキストデータに変換可能な「AI OCR」も登場しています。
書類のPDF化とあわせてOCRを利用することで、書類の仕分けやシステム入力などの作業をより効率化することができるでしょう。
書類をPDF化する際の注意点
次は、書類をPDF化するにあたって覚えておきたい注意点を解説します。
電子帳簿保存法への対応が必要
保存が義務付けられている帳票をPDF化して運用する場合には、電子帳簿保存法に対応する必要があります。
専用のシステムを利用せずに電子帳簿保存法の要件を満たすことも可能ですが、体制整備や運用ルールの周知・徹底などの負担が大きいため、システム導入による対応をおすすめします。
とくに、電子帳簿保存法の要件を満たすソフトウェアの証である「JIIMA認証」を取得しているシステムであれば、負担を抑えつつスムーズに電子帳簿保存法に対応することができるでしょう。
レイアウトの崩れに注意
WordやExcelなどのデータをPDFファイルに変換する場合は、レイアウトの崩れに注意が必要です。
設定によっては思わぬところで改ページされてしまうケースもあるので、事前にプレビューを確認してからPDFに変換しましょう。
ファイル共有の際はセキュリティに配慮
PDFファイルはデータ共有に適したフォーマットですが、共有方法に注意が必要です。
注意すべきファイル共有方法として、「PPAP」に代表されるようなメールにファイルを添付して送信するような方法を挙げることができます。
PPAPとは、PDFなどのデータをzipファイルに圧縮・メール添付して送信し、別途パスワードを共有するファイル共有の手法で、従来は多くの企業や公的機関で採用されていました。
しかし近年では、PPAPによるファイル共有の脆弱性が指摘されており、PPAPによるファイル共有を禁止し、クラウドサービスによるファイル共有に移行する企業が増えつつあります。
PDF書類の出力・データ化・保管・配信を実現するソリューションは?
次は、書類のPDF化から運用まで効率化するソリューションとして、ウイングアークが提供するデジタル帳票基盤を紹介します。

ウイングアークのデジタル帳票基盤は、「SVF Cloud(エスブイエフ クラウド)」と「invoiceAgent(インボイスエージェント)」シリーズで構成されるソリューション群で、書類のPDF出力や紙書類のPDF化、法令に基づく一元管理、企業間での配信・受領まで一気通貫でデジタル化します。
では、デジタル帳票基盤を構成する各ソリューションの特徴を見ていきましょう。
書類の設計・PDF出力なら「SVF Cloud」
「SVF Cloud」は、あらゆる書類の設計と出力をサポートするソリューションです。
ノーコードの帳票設計ツールを搭載しているので、既存の帳票を再現するのも、新たに帳票を設計するのも簡単に行えます。各種システム・アプリケーションとの連携・マッピングにより、書類作成を効率化することも可能です。
さらに、さまざまな出力形態に対応しているのもポイントです。社内プリンターでの印刷はもちろん、PDFを含む電子ファイルでの出力や、メール・FAXでの配信にも対応しているので、自社の業務プロセスにあわせて最適な出力方法を選択できます。
紙文書のデータ化なら「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、文書のデータ化を実現するソリューションです。
高精度な複数のOCRエンジンを搭載し、文書の種類に応じて適切なOCRエンジンを選択したり、1つの読み取り項目に対して複数のOCRエンジンによる処理を実行することができます。
さらに、読み取り文書の歪みや傾きを自動補正する機能により、高い精度での文字認識を実現します。これらの特徴により、活字・手書き文字を問わずデータ化することが可能です。
PDFなどの文書データの管理なら「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、PDFファイルなどの文書データの一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」で作成した文書データはもちろん、他システムで作成・出力した文書データもまとめて取り込み、あらかじめ設定してあるルールに基づき自動で仕分け・保存を実行します。
保存したデータは、高度な検索機能で速やかに参照・出力することができ、社内・取引先からの問い合わせ対応や監査対応の迅速化にも有効です。
また、文書の保存期間に応じた自動削除機能や証跡管理機能によって、文書データのライフサイクルを効率的に管理することができるでしょう。
PDF文書の送受信なら「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、企業間取引の電子化を実現するソリューションです。
PDF形式の文書をアップロードするだけで文書を送受信することができ、複数の取引先とのやり取りを「invoiceAgent」上で完結することができます。
複数の帳票が1つのPDFファイルにまとまっている場合でも、取引先ごとに自動で分割できるため、仕分けの負担を軽減可能です。
また、PDF文書を送る側も受け取る側も電子帳簿保存法に対応することができ、2023年10月開始予定のインボイス制度に対応する機能も搭載予定となっているので、書類のPDF化に伴う法対応を円滑に進めることが可能です。
「invoiceAgent」を活用したPDF書類の運用事例
次に、「SVF Cloud」や「invoiceAgent」などのウイングアーク製品を活用したPDF書類の運用事例を紹介します。
年間1,700万円以上のコスト削減を実現(藤田金屬)

新潟県新潟市に本社を構える鉄の総合商社、藤田金屬株式会社は「SVF Cloud」と「invoiceAgent」を導入して大幅な業務効率化とコスト削減を実現しています。
約2千数百社にのぼる取引先を抱える同社では従来、ドットプリンターと複写紙の連続帳票を使用して月間2千通超の請求書、約2万通の納品書を作成していました。手作業による切り離しや仕分け、封入封緘と郵送、そして保管・廃棄といった煩雑な作業も発生しており、作業工数やコストの面で大きな負担となっていました。
そうしたなか、インボイス制度や電帳法改正による電子取引データの保存義務化などが重なり、請求書・納品書のWeb配信および帳票の電子化に着手することを決定。複数製品を比較検討した結果、「SVF Cloud」と「invoiceAgent 文書管理」、「invoiceAgent 電子取引」の導入に至りました。
「SVF Cloud」で社内帳票をPDF出力に切り替えて電子化を推進するとともに、「invoiceAgent」で帳票のWeb配信と電帳法に対応する文書保管を実現。半日以上かかっていた作業が不要になるなど大幅な業務効率化を達成したほか、年間1,700万円以上のコスト削減効果を得ています。
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PDF化したワークフローデータを「invoiceAgent」で管理(ジャムコ)

航空機の内装品の製造を手掛ける株式会社ジャムコは、「invoiceAgent」を活用して案件照会システムの構築に成功しています。
同社では従来、日々の業務で発生する申請・承認フローをワークフローシステムを通して行っていました。
しかし、社員は自身が携わった最近のワークフローデータしか検索することができず、過去のデータを参照するには情報システム部門が個別に照会し、共有する必要がありました。
そのため情報システム部門の業務負担が大きく、知見の共有が制限されてしまう点も課題となっていました。
そこで同社は、ワークフローシステムと「invoiceAgent」の組み合わせによる案件照会システムの構築に着手。
ワークフローデータをPDF化して「invoiceAgent」に格納することで、ワークフローデータの見読性を担保しつつ、従業員が過去のデータを自由に検索・参照できる仕組みを整えました。
これにより、情報システム部による案件照会業務を削減することに成功し、社内の知見を共有できる体制も整えることができました。
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PDFファイルを一括送信できる仕組みを構築(クリアコンサルティング)

税務顧問業務をはじめ、企業向けの多彩なサービスを提供する税理士法人クリアコンサルティングは、請求書発行業務の負担軽減を図り「invoiceAgent」を導入しました。
同法人では、会計システムで請求書発行を電子化しており、メールを受け取った取引先は請求書のPDFをダウンロードできる仕組みを整えていました。
しかし、一部の業務に関しては請求書とあわせて請求明細や事務所通信といった関係書類を同封する必要があり、その場合には手作業で封入封緘を行い発送しなければなりませんでした。
この作業は担当者の負担が大きく、リスク管理の面でも課題となっていたことから、請求書と関係書類をまとめて一括送信できる仕組み構築を検討開始。
既存の会計システムを継続利用することができ、請求書と関係書類のPDFファイルをまとめて自動送信できる点が決め手となり、「invoiceAgent」の導入に至りました。
導入後、PDFファイルを一括送信する仕組みが整い、請求書の送付作業が大幅に効率化しただけでなく、作業内容が簡素化されたことで属人化を解消することに成功しています。
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税理士法人クリアコンサルティングのinvoiceAgent導入事例をもっと見る
書類のPDF化に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、書類のPDF化に関するよくある質問とその回答について、改めて整理していきましょう。
Q.書類のPDF化とは具体的に何ですか?
書類のPDF化とは、紙媒体や異なるファイル形式のデータをPDFファイルに変換することです。ExcelやWordなどのツールや帳票システムの出力設定を変更する方法や、紙の書類をスキャンしてPDF化する方法があります。
Q.書類をPDF化すると、どんなメリットがありますか?
書類をPDF化することで、印刷・配送コストの削減や業務の効率化・迅速化、セキュリティ・ガバナンスの強化が可能です。また、テレワークの促進やDX推進基盤の構築にもつながります。
Q.紙の書類をPDFファイルにするには?
スキャナやスキャン機能を搭載した複合機を使ってPDF化できます。現在では、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像をPDF化するサービスも存在します。
Q.PDF化した書類の文字をテキストデータとして扱う方法は?
PDF化した書類の文字は、OCRツールを利用することでテキストデータとして扱うことが可能になります。書類のPDF化とあわせてOCRを利用することで、書類の仕分けやシステム入力などの作業をより効率化することができます。
Q.PDF化した文書のセキュリティは強化されますか?
PDFファイルにパスワードを設定して閲覧権限を管理したり、タイムスタンプや電子署名を利用して改ざんを防止・検知したりすることが可能です。
まとめ
今回は、書類のPDF化に焦点を当てて、方法やメリット、具体的なソリューションをご紹介しました。
2022年1月の電子帳簿保存法改正により、企業は今まで以上に書類の電子化に着手しやすくなりました。
現在、紙媒体で書類を扱っている企業は、今回ご紹介した情報も参考に書類のPDF化を検討してみてはいかがでしょうか。

























