領収書のPDF化に関するよくある疑問
まずは、領収書のPDF化にまつわる主な疑問として、以下の4点について解説します。
- PDFの領収書は法的に有効?
- PDFの領収書に印鑑は必要?
- PDFの領収書の保存方法は?
- PDFの領収書の記載項目は?
では、それぞれの疑問を解消していきましょう。
PDFの領収書は法的に有効?
結論から述べると、領収書はPDF形式であっても法的に有効です。
発行者と受領者の双方による合意さえあれば、PDFの領収書でも法的な有効性を持たせることが可能です。
ただし、後々のトラブルを避けるためにも、PDF形式の領収書を用いる旨を文面として残しておくことが大切です。
PDFの領収書に印鑑は必要?
そもそも、領収書に印鑑を押さなければならないという法的根拠は存在しません。
つまり、PDF形式の領収書であっても押印は必須ではありません。
ただし、領収書への押印は商習慣として広く浸透しているため、押印済みの領収書の発行を求められるケースも考えられます。
PDF形式の領収書に押印を施すには、印影を画像化した電子印鑑を使用する方法が一般的です。
PDFの領収書の保存方法は?
領収書などの帳簿書類は、税法によって7年間の保存が義務付けられています。
紙媒体での保存が原則ですが、電子帳簿保存法の要件を満たすことで、PDFなどの電子データの状態で保存することも可能です。
2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、電子保存のための要件が緩和されたことで、領収書を含む帳票の電子化に着手する企業は増えていくと予想されます。
以下の記事では、電子帳簿保存法の概要や対応のポイントについて解説しています。あわせてご確認ください。
PDFの領収書の記載項目は?
PDF形式の領収書であっても、記載するべき項目は紙媒体の領収書と同じです。
具体的には、領収書と認められるために以下5つの項目の記載が必要です。
- 発行者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容
- 金額
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
また、紙の領収書は、売上代金が50,000円以上で現金決済の場合は収入印紙の貼付が必要ですが、PDF形式の領収書の場合は収入印紙の貼付が不要となります。
領収書をPDF化する方法
領収書をPDF化するには、大きく以下3つの方法があります。
- ExcelやWordなどで作成した領収書をPDF出力する
- 専用の帳票システムからPDF出力する
- 紙の領収書をスキャンしてPDF化する
それぞれの方法について、詳しく確認していきましょう。
ExcelやWordなどで作成した領収書をPDF形式で出力
Excel(エクセル)やWord(ワード)、あるいは他システムを使って領収書を作成している場合、書面での印刷ではなくPDF形式で出力することが可能です。
ExcelやWordの場合、作成した領収書を以下の手順でPDF出力します。
- WordもしくはExcelで作成済みの領収書ファイルを開く
- 画面左上部にある「ファイル」をクリック
- 画面左にあるエクスポートをクリックし、「PDF/XPSの作成」をクリック
- PDFファイルの保存場所とファイル名を決定し、「発行」をクリック
- 作成した領収書のPDF出力が完了
専用システムを介して領収書をプリントアウトする仕組みの場合、システム側の出力設定をPDFに変更する必要があります。
現場の担当者では出力設定を変更できない場合、情報システム部門などに依頼して、PDF出力に切り替えてもらいましょう。
なお、PDFに変換した領収書データがExcelやWordの表示と異なるケースもあるため、出力したPDFファイルが正常に表示されているか確認しましょう。
専用の帳票システムからPDF出力
専用の帳票システムであれば、PDFファイルを含むさまざまな出力形態に対応しているケースがあります。
帳票システムを介して領収書を書面としてプリントアウトする設定になっている場合、システム側の出力設定を変更することでPDFとして出力することが可能です。
現場の担当者では出力設定を変更できない場合、情報システム部門などに依頼して、PDF出力に切り替えてもらいましょう。
紙の領収書をスキャンしてPDF化
スキャナやスキャン機能付きの複合機を利用して、取引先から受け取ったり自社で印刷した紙の領収書をPDF化する方法もあります。
利用している製品によって細かな手順は異なりますが、領収書をスキャンしてPDF化する基本的な流れは以下の通りです。
- スキャナ・複合機にPDF化したい領収書をセット
- メニューから「スキャン」を選択
- PDFファイルの保存先を指定し、「スタート(開始)」ボダンを押す
- 紙の領収書のPDF化が完了
指定した保存先のPDFファイルを確認し、正常に表示されるかを確認しましょう。
領収書をPDF化するメリット
次に、領収書をPDF化するメリットとして、以下の3点について確認していきましょう。
- ペーパーコストの削減
- 領収書に関連する業務効率化
- セキュリティの向上
それぞれ詳しく確認していきましょう。
ペーパーコストの削減
領収書をPDF化することで、コスト削減の効果が期待できます。
紙の領収書の場合、以下のようにさまざまなコストが発生してしまいます。
- 用紙代やインク代などの印刷コスト
- 取引先への郵送コスト
- 保管場所の賃料やファイル・書棚などの備品コスト
- 収入印紙代
など
PDF形式で領収書を運用すれば、上記のようなコストを削減することができます。
また、後述する業務効率化によって作業工数が削減されれば、人件費の節約にもつなげることができるでしょう。
領収書に関連する業務効率化
領収書をPDF化することで、領収書に関連する業務を効率化することができます。
PDF形式の領収書であれば、発行から社内確認、取引先への配信までをデバイス上で完結することができ、紙媒体よりも効率的に業務を遂行することができます。
また、領収書を紙で管理している場合、社内や取引先から過去の領収書について問い合わせがあった際、大量の書類のなかから該当の領収書を探し出す手間が発生します。
領収書をPDF形式で保管していれば、ファイル名などで検索することができ、必要なデータを速やかに参照・出力できるので、管理の負担軽減につなげることが可能です。
セキュリティの向上
領収書のPDF化は、セキュリティ向上の観点でも有効です。
領収書には取引内容などの重要な情報が含まれているほか、7年間の保存も義務付けられているため、扱いには細心の注意が必要です。
しかし、紙媒体の領収書は関係者以外に盗み見されてしまうリスクがあるほか、紛失や破損のリスクもあります。
また、ExcelやWordのファイルはパスワードを設定して送付することができますが、記載内容を容易に変更できるため改ざんリスクが高いと言えます。
PDF形式の領収書であれば、記載内容の改ざんが難しく、パスワードを設定して関係者以外による盗み見を防ぐことができます。物理的に紛失したり破損したりする恐れもないため、紙媒体の領収書よりもセキュリティを高めることができるでしょう。
OCRを使えば領収書PDFの文字認識が可能
PDFはあくまで画像データであり、画像内の文字を自由に編集することはできません。
しかし、OCR機能付きのスキャナでPDF化したり、PDFデータにOCR処理を施すことで、文書内の文字情報をテキストデータとして扱うことが可能になります。
テキストデータ化することで、業務システムへの入力や照合作業を効率化したり、RPAツールと連携して作業を自動化することも可能です。
近年はOCRとAIを組み合わせた「AI OCR」も登場しており、活字だけでなく手書きの文字も高い精度でテキストデータ化できる製品も存在します。
領収書のPDF化とあわせてOCRを活用することで、先述したコスト削減や検索性向上、文書管理の効率化といった効果をさらに高めることができるでしょう。
領収書PDFの出力・データ化・保管・配信を一気通貫で実現するソリューションは?
次は、領収書のPDF出力やデータ化、保管、配信を一気通貫で実現するソリューションとして、ウイングアーク1stが提供するデジタル帳票基盤をご紹介します。
では、デジタル帳票基盤を構成する各ソリューションの特徴について見ていきましょう。
領収書のPDF出力なら「SVF Cloud」
「SVF Cloud(エスブイエフ クラウド)」は、領収書を含むあらゆるデジタル帳票の設計・出力を実現するソリューションです。
ノーコードで帳票設計が可能なレイアウト作成ツールを備えており、新たな帳票の作成や既存の帳票レイアウトの移行も簡単に行えます。各種システム・アプリケーションとのデータ連携・マッピングを行うことで、帳票作成を効率化することも可能です。
さらに、多様な出力形態に対応している点も「SVF Cloud」の特徴です。社内プリンターでのプリントアウトはもちろん、PDFやExcelなどの電子ファイルとして出力したり、FAXやメールで配信したりすることもできるので、自社の業務プロセスに合わせて出力形態を選択することができます。
領収書PDFの文字認識なら「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR(インボイスエージェント エーアイ オーシーアール)」は、紙文書やPDFのテキストデータ化を実現するOCRソリューションです。
特徴の異なる高精度な5つのOCR/AI OCRエンジンを搭載しており、読み取り項目に対して適切なOCR/AI OCRエンジンを選択したり、複数のOCR/AI OCRエンジンによる処理を実行することが可能です。
また、読み取り画像の歪みや傾きを自動で補正する機能も備わっており、文字認識率の低下を防ぎます。
これらの特徴により、活字・手書きを問わず高い精度でテキストデータ化することができます。
PDFなどの文書データを管理するなら「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理(インボイスエージェント 文書管理)」は、PDFファイルをはじめとした文書データの一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」や他システムで作成・出力した文書データを取り込み、事前に設定したルールに基づき自動で仕分け保存を実行します。
保存した文書データは、取引先名や金額、日付などの条件で検索することができ、必要な書類を速やかに参照・出力することが可能です。
また、文書の保存期間に応じた自動削除機能や、改ざんを防止・検知する証跡管理機能を備えているため、セキュアな環境で効率的に文書のライフサイクルマネジメントを行うことができます。
領収書PDFの送受信なら「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引(インボイスエージェント 電子取引)」は、領収書や請求書といった企業間で交わされる帳票のやり取りを電子化するソリューションです。
領収書などのPDFファイルをアップロードするだけで取引先との間で送受信することができ、複数の取引先とのやり取りを「invoiceAgent」上で完結することができます。
また、複数の取引先の領収書データが1つのPDFファイルにまとまっている場合でも、取引先ごとに自動で分割して指定フォルダに格納し、手作業による仕分けの負担を削減します。
既存の帳票フォーマットを変更することなく取引を電子化することができ、送る側も受け取る側も電子帳簿保存法の要件に対応可能です。
ウイングアーク1st製品で領収書の電子化を実現した事例
最後に、ウイングアーク1stの「SVF Cloud」や「invoiceAgent」を活用して領収書にかかわる業務を電子化した事例をご紹介します。
領収書などの帳票を自動作成・保存する仕組みを構築(イーデザイン損害保険)
東京海上グループのダイレクト損保会社であるイーデザイン損害保険株式会社は、「SVF Cloud」を活用して領収書などの帳票を自動作成・保存する仕組みを構築しました。
2021年に自動車保険の新ブランド「&e(アンディー)」をリリースした同社は、それに合わせる形で「Salesforce Financial Services Cloud」を採用し、新たなCRMの構築を進めていました。そして、このCRMの仕組みを構築するうえで重要なポイントとなったのが、帳票運用の見直しでした。
従来、同社では帳票を作成する際にSalesforceや基幹システムにログインして散在するデータを収集し、人手で作成・印刷を行い顧客に送付していました。こうした作業は負担が大きいだけでなく、ミスが発生するリスクも懸念材料となっていました。
そこで同社は新CRMシステムに組み込む帳票開発ツールとして、Salesforce製品とAPIでシームレスに連携することができる「SVF Cloud」の採用を決定。
Salesforceや基幹システムのデータを集約して「SVF Cloud」上で帳票を作成し、さらにクラウドストレージサービス「Box」に保存することで社内および関係者間で共有できる仕組みを構築しました。
新CRMの導入により、「&e」のコールセンターでは現場で作成する帳票の種類が大幅に減少。顧客がスマートフォンから契約申し込みをすると手続きのフローが自動で開始し、社内の基幹システムと連携して保険証券や証明書、領収書などが「SVF Cloud」で自動作成され、「Box」に保管される仕組みが整いました。これにより、事務処理にかかる時間が削減され、その分の時間をCX(顧客体験)向上のための取り組みに充てることが可能になっています。
▼事例詳細はこちら
イーデザイン損害保険株式会社のSVF Cloud導入事例をもっと見る
数日かけていた毎月の領収書処理が4時間程度に短縮(テラスカイ)
国内有数のクラウドインテグレーターとして知られる株式会社テラスカイは、「invoiceAgent 文書管理」を活用して証憑保管・管理のデジタル化を実現しました。
かねてよりクラウドサービスを組み合わせたシステム構築を実践してきた同社ですが、請求書・領収書処理に関してはデジタル化が進められていない状況でした。たとえば、従業員の経費精算では紙の領収書を処理していましたが、ファイリングや目視による確認、そして領収書を探す作業に多くの手間がかかっており、領収書の処理作業は月に数日を要していました。また、コロナ禍で紙の領収書の収集が遅延しがちになり、テレワークの実施にも支障が生じる状況に。電帳法の宥恕措置の期限が迫っていたこともあり、電帳法に則った方法で領収書を収集する仕組みを構想開始しました。
自社ソリューションの「mitoco ERP」構想との親和性を考えた結果、「mitoco Work 経費」と「invoiceAgent 文書管理」の組み合わせが最適だという結論に至りました。
「mitoco Work 経費」と「invoiceAgent 文書管理」の組み合わせにより、従来は月に数日かかっていた領収書の処理が4時間程度まで短縮するなど、経理業務の大幅な効率化を実現しました。
▼事例詳細はこちら
株式会社テラスカイのinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、領収書のPDF化にまつわる疑問やPDF化の方法・メリット、領収書PDFの運用を効率化するソリューションをご紹介しました。
領収書をPDF形式で運用することは、企業に多くのメリットをもたらします。
そして、2022年1月の電子帳簿保存法の改正により、領収書などの帳票を電子化する企業は今後ますます増えていくことが予想されます。
現在、領収書を紙媒体で運用している企業は、今回ご紹介した情報も参考に「invoiceAgent」を活用した帳票の電子化に着手してみてはいかがでしょうか。