ペーパーレス化とは?
そもそもペーパーレス化とは、紙媒体の文書などを電子化し、データとして利活用することを指します。
ビジネスシーンでは、会議資料や各種申請書などの社内文書や、請求書や見積書、契約書などの企業間取引文書のペーパーレス化により、業務効率化やコストカット、テレワークの推進を図る企業が増えつつあります。
加えて、ペーパーレス化を推進して紙の使用料を減らすことは環境保全にもつながり、森林伐採や地球温暖化といった社会課題解決に向けた取り組みとしても重要です。
また、ペーパーレス化は政府主導による国家を挙げた取り組みでもあります。
1998年には企業の税務・会計分野におけるコスト削減・業務効率化を目的に電子帳簿保存法が制定、2005年にはスキャナなどで電子化した文書の保存を認めるe-文書法が制定されるなど、かねてよりペーパーレス推進の土台となる法整備が進められてきました。
そして、2016年から政府が提唱・推進している働き方改革でも、ペーパーレス化は重要施策のひとつに数えられています。
さらに近年はDXやSDGsの重要性が高まっていることもあり、企業だけでなく官公庁でもペーパーレス化によるデジタルシフトの動きが加速しています。
ペーパーレス化に関する国内企業の取り組み状況
次に、ペーパーロジック株式会社が公開している「ペーパーレス化に伴う2024年度予算」に関する調査結果を基に、ペーパーレス化に向けた国内企業の取り組み状況を見ていきましょう。
東京に本社がある企業の経営者・役員107名を対象に行われたこの調査では、「あなたの会社では、2023年に社内のペーパーレスの推進を実施しましたか」という質問に対し、「積極的に行った」という回答が11.2%、「ある程度行った」という回答が43.9%を占めました。つまり、約6割の企業が2023年に社内のペーパーレス推進に取り組んだことが示されています。
(参照元:【リサーチ】ペーパーレス化に伴う2024年度予算に関する調査 - paperlogic)
企業がペーパーレス化に取り組むメリット
企業がペーパーレス化に取り組むことで、以下のように多くのメリットを期待できます。
- コスト削減
- 業務効率および生産性向上
- セキュリティ・ガバナンスの強化
- データ活用やDXの推進
- 働き方改革の推進
- BCP対策としても有効
- 企業価値の向上
次は、ペーパーレス化を推進することで得られるメリットについて詳しく確認していきましょう。
コスト削減
企業がペーパーレス化を推進するメリットとして、コストの削減を挙げることができます。
これまで紙で印刷していた書類や資料をデータとして扱うことで、紙代やインク代、複合機の維持・メンテナンス費用、郵送コストなどを削減することができるでしょう。
また、保存期間が定められている文書については、鍵付きのキャビネットや専用の保管スペースを利用しているケースも少なくないでしょう。電子化した文書であれば物理的な保管スペースを必要としないため、保管スペースの賃料や備品代の節約にもつながります。
さらに、後述する業務効率化の効果により作業工数が削減されれば、人的コストも抑えることが可能です。
業務効率化および生産性向上
ペーパーレス化を推進することで、業務効率化の効果も見込めます。
紙の文書の場合、印刷や手渡しによる回覧、封入封緘などの郵送準備、発行・受領後の書類のファイリングなど、多くの手作業が発生してしまいます。
手作業によるアナログな作業は効率が悪いだけでなく、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。
一方、ペーパーレス化を推進して文書をデータとして扱うことで、上記のような作業をPCなどのデバイス上で完結させることができ、RPA連携による定型作業の自動化も目指せるでしょう。
業務の効率化や自動化により作業工数が削減されれば、そのリソースを付加価値の高いコア業務に充てることができ、組織全体の生産性向上にもつなげることができます。
セキュリティ・ガバナンスの強化
文書のペーパーレス化により、セキュリティやガバナンスの強化にもつながります。
紙の文書の場合、改ざんや不正な持ち出し、物理的な紛失・破損のリスクが付きまといます。
一方、電子化された文書であれば、個別に閲覧権限を設定したり、タイムスタンプや電子署名によって原本性を担保することができます。使用するシステムによっては文書の作成から破棄までの証跡を残すことも可能です。
また、文書データのファイル名や内容から検索できるため、監査などで提出が必要になった際も速やかに対応することができるでしょう。
データ活用やDXの推進
データ活用を推進していく上でも、ペーパーレス化は有効です。
紙文書の場合、記載された内容をそのままデータとして扱うことができないため、データ分析に活用するハードルが高いと言えます。
一方、電子化した文書であれば、情報をテキストデータとして扱うことができるため、容易に集計・分析することが可能になります。
これまで活用が難しかった文書情報を分析することで、より精緻な経営判断につなげることができるでしょう。
また、業務のデジタル化およびデータ活用は、DXを推進していく上でも重要です。ペーパーレスを推進することは、DX推進の基盤づくりとしても効果的だと言えるでしょう。
働き方改革の推進
先述の通り、ペーパーレス化は働き方改革の重要施策のひとつでもあります。
ペーパーレス化により、業務効率化および作業工数削減が実現できれば、働き方改革の課題である長時間労働の是正につなげることができるでしょう。
また、ペーパーレス化によりオフィスにいなくても行える業務の幅が広がります。その結果、在宅勤務などのテレワークを実施できる環境が整い、多様な働き方への対応も進めることができるでしょう。
BCP対策としても有効
ペーパーレス化は、BCP対策としても有効です。
BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画のことで、災害や感染症によるパンデミックなど、企業が非常事態に直面した際に業務を早期復旧もしくは継続するための計画を指します。
ペーパーレス化が進んでいれば、重要な文書が物理的に破損・紛失してしまうリスクを防げます。さらに、ペーパーレス化によりテレワークが導入されていれば、非常事態で出社が困難な状況でも在宅で業務を遂行することができ、業務停止による損害を最小限に抑えられる可能性が高まります。
企業価値の向上
ペーパーレス化の推進は、企業価値の向上にもつながります。
近年はSDGsやESGなど、サスティナビリティ(持続可能性)に対する関心が高まっています。
そして、ペーパーレス化の取り組みは、ビジネスに大きなメリットをもたらすだけでなく、サスティナビリティの観点でも大きな意義があります。
ESGの観点から企業を評価・分析するESG投資にも注目が集まっているなか、ペーパーレス化に積極的に取り組むことは企業イメージの向上にも効果が期待できるでしょう。
ペーパーレス推進に向けた課題とは?
多くのメリットが期待できるペーパーレス化ですが、企業が推進していく上で留意すべき課題も存在します。
次は、ペーパーレス推進に向けた課題について見ていきましょう。
社内外の理解が必要
ペーパーレス化を推進していく上では、社内外の理解を得ることが不可欠です。
ペーパーレス化の目的やメリットが社内で浸透していなければ、文書の電子化が思うように進まなかったり、現場の業務に混乱をもたらす恐れがあります。
そのため、ペーパーレス化の必要性をしっかりと社内に浸透させた上で、実際の業務にどのような変化があるのかも事前に周知しておく必要があるでしょう。
また、請求書や契約書などの社外向けの文書をペーパーレス化する際には、取引先の理解も得る必要があります。
紙でやり取りしていた文書を電子化する旨と、取引先にとってのメリットや、対応をお願いする事項についても周知しておきましょう。
今まで通り紙媒体でのやり取りを希望する取引先にも配慮し、決して無理強いせずに柔軟な対応を心掛けましょう。
電子帳簿保存法への対応
ペーパーレスを推進する際は、単純に紙の文書を電子化するだけでは不十分です。
国税関係帳簿書類は紙での保存が原則とされており、電子データ(電磁的記録)として保存するためには電子帳簿保存法で定められている要件を満たす必要があります。
電子帳簿保存法には「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件が定められており、それぞれさらに細かな規定が設けられています。
ただし、2022年1月の改正で保存要件が大幅に緩和されているので、これまでよりも文書の電子保存に取り組みやすくなっています。
以下の記事では、電子帳簿保存法の内容や改正の要点、対応のポイントを詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
ペーパーレス化の進め方は?
次は、ペーパーレス化推進の課題を踏まえつつ、実際に文書を電子化していく流れを見ていきましょう。
1.文書の棚卸とペーパーレス化する文書の検討
社内のあらゆる文書を同時にペーパーレス化するのは工数・コストの観点から現実的ではなく、仮に実現できたとしても現場の混乱は避けられません。
そのため、最初は一部の文書からペーパーレス化をスモールスタートし、徐々に適用範囲を拡大していくことをおすすめします。
どの文書からペーパーレス化を進めるのかを決定するため、まずは業務の棚卸しを行って、どのような文書があるのか把握しましょう。
その上で、ペーパーレス化の対象文書を決定していきます。その際、ペーパーレス化した場合の費用対効果や、ペーパーレス化による業務上の変更点やリスクなども考慮することが重要です。
2.ペーパーレス化に伴う業務プロセスの見直し
ペーパーレス化を推進する文書が決まったら、業務プロセスを見直していきます。
たとえば、発行の際に押印による承認・決裁が必要な文書や、契約書のように自社と取引先の押印が必要な文書の場合、押印や署名の代わりに電子印鑑や電子署名、タイムスタンプなどの仕組みが必要になるでしょう。
また、業務プロセスを見直すなかで、無駄な工程やボトルネックとなっている工程があるかもしれません。ペーパーレス化による効果を最大化するためには、既存の業務プロセスの無駄や非効率を改善することも大切です。
3.ペーパーレス化する業務に適したシステムの導入
ペーパーレス化の対象となる文書の選定や業務プロセスの見直しが完了したら、ペーパーレスを実現するためのシステム・サービスを検討していきます。
たとえば、帳票関連業務を電子化するのであれば電子帳票システム、契約業務を電子化するのであれば電子契約サービス、社内申請や稟議などを電子化するのであればワークフローシステム、といった具合に、ペーパーレス化する文書・業務に合わせて適切なシステム・サービスを選択する必要があります。
また、法的要件に対応可能なシステム・サービスかどうかもチェックすべきポイントとなります。
たとえば、請求書や見積書といった国税関係帳簿書類の場合には、JIIMA認証の取得有無が選定の基準となります。JIIMA認証とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による認証制度で、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェアに与えられます。
ペーパーレス化を推進するソリューションは?
次は、企業のペーパーレス化推進を実現するソリューションとして、ウイングアーク1stの「invoiceAgent」をご紹介します。
「invoiceAgent」はJIIMA認証を取得しているので、電子帳簿保存法に対応しつつ、目的に合わせたペーパーレス化が可能です。
紙文書のデータ化を実現する「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙文書のデータ化を実現するソリューションです。
5つのOCR(光学的文字認識)エンジンと自動画像補正機能により、紙の文書を高い精度で電子データ化することが可能です。
文書の種類に応じてOCRエンジンを使い分けたり、ひとつの読み取り項目に対して複数のOCRエンジン処理を行うこともできます。
目視による確認や手作業による入力作業の工数を削減や、RPA連携によって定型作業を自動化することも可能です。
電子化した文書の一元管理を実現する「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、「invoiceAgent AI OCR」や他システムで出力・作成した文書データの一元管理を実現するソリューションです。
電子化した文書データをまとめて取り込み、指定したルールに従い自動で仕分けを行い適切なフォルダーに格納・保存します。保存した文書データは、高精度な検索機能で速やかに参照することができます。
また、文書の作成から破棄までの証跡を残すことや、保存期間に応じた自動削除機能も備えているため、文書管理の負担を大幅に軽減することが可能です。
企業間取引文書データの送受信を実現する「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、企業間取引文書の送受信の効率化を実現するソリューションです。
PDF化した請求書や納品書などの企業間取引文書を、専用のWebサイトにアップロードするだけで、取引先へのWeb配信を行えます。また、取引先から発行される帳票もWebサイト上で受け取ることができます。
紙文書の郵送サービスも利用できるため、紙での受け取りを希望する取引先にも対応でき、Web配信と郵送のハイブリッド運用を実現可能です。
また、「invoiceAgent 電子取引」には簡易承認フロー機能や画像イメージ付与機能が備わっているので、従来の紙とハンコによる社内承認フローを再現でき、既存の業務を大きく変更することなく導入することができます。
契約業務の電子化を実現する「invoiceAgent 電子契約」
「invoiceAgent 電子契約」は、契約業務の電子化を実現するソリューションです。
面倒な契約業務をクラウド上で完結することができるため業務の効率化・迅速化に効果的で、電子署名とタイムスタンプにより改ざんリスクを抑えた電子契約が可能です。
また、ウイングアーク1stのクラウドサービスと連携することで、契約に紐づく関連文書のWeb配信や電子保管も実現可能です。
ペーパーレス推進に成功した企業事例
最後に、「invoiceAgent」を使ってペーパーレスの推進に成功した企業事例をご紹介します。
発注業務におけるペーパーレス化を推進(CTCビジネスエキスパート)
CTC(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)グループにおけるバックオフィス業務などを担うCTCビジネスエキスパート株式会社は、「invoiceAgent」の導入により発注業務のペーパーレス化を推進しました。
CTCにおける調達の多くは同社を通じて仕入先各社に発注する体制となっており、基幹システムで発注処理を行うと注文書が書面として印刷され、それを仕分けて封入封緘して郵送する業務フローとなっていました。このような業務フローはアナログな作業が必要であり、発注担当者はコロナ禍でも毎日出社しなければならず、業務継続性の観点でも課題となっていました。さらに、コロナ禍で帳票をメール送付してほしいという要望が増え、個別対応やメール誤送信防止のダブルチェックの負担が増加。
こうした状況を受けて、同社は注文書を電子化してWeb配信する仕組みの構築を決断しました。サービス選定においては、既存システムや業務への影響が少なく、電子帳簿保存法の保存要件に対応可能な点、そして外部システム・ツールとの連携が可能な点を評価し、「invoiceAgent」の導入に至りました。
導入決定からわずか3ヶ月後には「invoiceAgent」の運用を開始し、平常時には月間約3,000件、年度末のピーク時には月間6,000件以上の注文書を「invoiceAgent」で配信。作業の効率化やリモートワークへの対応、BCP対策に加え、下請法の遵守徹底にも効果が表れるなど、発注業務のペーパーレス化で大きな成果を得ています。
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CTCビジネスエキスパート株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
月7,000枚の月報兼請求書をペーパーレス化(ロジクエスト)
『あらゆる届けるを解決する』を理念に掲げる株式会社ロジクエストは、「invoiceAgent」を導入して全国の委託ドライバーから受領する月報兼請求書のペーパーレス化を推進しました。
同社は、全国に5,500以上の直接契約ドライバーや協力会社を抱えており、毎月約7,000枚の月報兼請求書が各支店に送られてきます。月報兼請求書の管理フローは各支店で異なり、保管用の倉庫から過去の書類を探し出すのが困難であることも課題視されていました。
こうした状況を受け、同社は電子保管によるペーパーレス推進に着手。システム選定では、「JIIMA認証取得のシステム」「費用面」「導入しやすいクラウド型」「使いやすさ」といった点を評価基準として製品を比較検討し、最終的に「invoiceAgent」の導入に至りました。
導入後、紙の印刷量が減少してコピー用紙の発注が少なくなるなど、ペーパーレス化の効果を実感。書類検索が効率化したことで、荷主企業からの問い合わせ対応や監査対応に要する工数の短縮にもつながっています。
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自社だけでなく取引先のペーパーレス化にも貢献(三井住友ファイナンス&リース)
総合リース会社の三井住友ファイナンス&リース株式会社は、「invoiceAgent」を利用して請求書をはじめとした帳票のWeb配信を実現しています。
「invoiceAgent」の導入以前、請求書や支払通知書を紙で運用していた同社では、印刷・発送にかかるコストや、発行から受領までのタイムラグに課題を感じていました。また、2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大によりリモートワークに移行したものの、請求関連業務のための出社しなければならない状況でした。
そこで、「invoiceAgent」の導入により請求関連の帳票のWeb配信を開始。
スモールスタートで運用を始めたWeb配信ですが、現在は約1200件の取引先に範囲を拡大し、自社だけでなく取引先のペーパーレス化や業務の効率化にも貢献しています。
▼事例詳細はこちら
三井住友ファイナンス&リース株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、重要性が高まるペーパーレス化に焦点を当て、メリットや推進時の課題・ポイント、ペーパーレス化に成功した企業事例をご紹介しました。
働き方改革やDXの動きが活発化するなか、ペーパーレスの取り組みは今後ますます重要になることが予想されます。
紙を使った業務に課題を感じている企業や、ペーパーレス化を検討している企業は、今回ご紹介した情報も参考に「invoiceAgent」でペーパーレス化の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。