検収や検収書の意味・役割

まずは基礎知識として、検収および検収書の意味や役割、検収書と混同しがちなビジネス文書との違いについて確認していきましょう。
「検収」や「検収書」とは?
検収(けんしゅう)とは、納品された商品やサービスの仕様・数量・品質などが発注内容と相違ないことを検査・確認する行為を指し、検収が完了した日を検収日と言います。
そして検収書(けんしゅうしょ)とは、発注者が納品物に対して検収を実施した後に発行する文書のことです。発注者が検収書を発行することで、「検収の結果、納品物に不備がなかった」という意思表示になります。
なお、検収を行う際の確認方法や検査方法については、あらかじめ発注者から受注者に対して伝えておくのが一般的です。
また、もしも納品物に不備があった場合には、検収書を発行する前に修正や再納品を依頼する必要があります。
検収書の役割
検収書は、法律で発行が義務付けられている文書ではありません。
しかし、検収書には以下の役割があり、検収書の発行をルールとしている企業も少なくありません。
- クレームやトラブルの防止
- 売上計上の基準
- 請求書発行の省略
次は、商取引のなかで検収書が果たす役割について見ていきましょう。
クレーム・トラブルの防止
検収書が果たす役割のひとつが、クレームやトラブルの防止です。
先述の通り、検収書は納品物に不備がないことを確認した証明となります。そのため検収書の発行後は、原則として納品物についてのクレームや契約解除を申し出ることはできません。
つまり受注者は、納品した商品・サービスについて発注者から検収書を受け取ることで、後々のトラブルやクレームを防止することができるのです。
売上計上の基準
検収書の発行をもって売上計上日とするケースもあります。
企業によって売上計上のタイミングは異なり、出荷のタイミング(出荷基準)、納品のタイミング(納品基準)、そして検収完了のタイミング(検収基準)などが主に採用されています。
受注者が検収基準で売上計上している場合、発注者が検収完了の旨を通知しなければ、受注者はいつまでも売上計上することができません。
検収書があることで検収日の客観的な証拠となるため、売上計上のタイミングを確定する上で非常に重要な役割を果たすと言えます。
請求書発行の省略
検収書は、請求書発行の手間を省略するために用いられることもあります。
通常の商取引では、検収完了後に請求書を発行という流れが一般的ですが、継続的かつ大量に取引が行われる場合、請求書を都度発行するのは大きな手間となってしまいます。
そのような場合、「検収書の発行をもって、支払義務が生じる」などの取り決めをしておくことで、請求書の発行を省略することが可能です。
検収期間について
検収期間とは、商品・サービスの納品から検収を実施するまでの期間を指します。
検収期間について法的な決まりは存在しませんが、検収期間を設定していない場合、商品・サービスの納品後いつまでたっても検収が完了しない、という事態が起こりかねません。
円滑に取引を進めるためにも、あらかじめ双方で検収期間を定めておき、検収期間を超過した場合の対応についても取り決めておくとよいでしょう。
検収書に収入印紙の貼付や押印は必要?
ビジネス文書の種類によっては収入印紙の貼付が必要な場合がありますが、検収書は印紙税法上の課税文書に該当せず、原則として収入印紙は不要です。
また、印鑑の有無についても、検収書への押印は法的に義務付けられているものではありません。
ただし、検収書を含むビジネス文書への押印は商習慣として広く浸透しており、改ざんなどの不正防止や信用性の向上にも一定の効果が期待できるため、特別な事情がない限りは押印することをおすすめします。
検収書と似た納品書や受領書、請求書との違い

検収書と混同しやすい文書に、「納品書」や「受領書」、「請求書」があります。
いずれも、商品やサービスの納品から請求までの間に発行される文書ですが、それぞれ発行するタイミングと用途が異なります。
納品書は、納品のタイミングで受注者が発行する文書で、発注通りに商品・サービスを納品したことを示すためのものです。
受領書は、商品やサービスなどを受け取った際に発注者が発行する文書で、納品物を確かに受け取ったことを示す文書です。
請求書は、検収完了後に受注者が発行する文書で、納品物の対価を発注者に請求するための文書です。
取引の流れで見てみると、発行の順番は「納品書⇒受領書⇒検収書⇒請求書」であり、納品書と請求書は受注者が発行、受領書と検収書は発注者が発行します。
検収書の記載項目と書き方

先述の通り、検収書は法的に発行が義務付けられている文書ではないため、インターネット上で公開されているテンプレートを使用したり、独自に作成したフォーマットを使用しても問題ありません。
ただし、検収書には一般的に必要とされている以下のような記載項目が存在します。
- タイトル
- 宛先(受注者)の情報
- 発行者(発注者)の情報
- 検収日
- 検収担当者
- 商品・サービスの詳細
各記載項目の内容と書き方とあわせて確認しておきましょう。
(1)タイトル
一目見て「何の文書か」が伝わるように、書面の上部中央などの目立つ位置に「検収書」と記載しましょう。
(2)宛先(受注者)の情報
「誰に宛てた検収書なのか」を明確にするため、相手(受注者)の会社名や氏名、屋号を記載します。
担当者がいる場合には、所属部署と担当者名もあわせて記載しましょう。
(3)発行者(発注者)の情報
「誰が発行した検収書なのか」を明確にするため、発行者(発注者)の会社名や氏名などを正式名称で記載します。
名称とあわせて、住所や電話番号などの連絡先情報も記載し、角印(会社印)を押印するのが一般的です。
(4)検収日
検収日として、検収が完了した日付を記載します。
検収書の受領者側にとっては売上計上日となることもあるため、正確に日付を記載する必要があります。
(5)検収担当者
検収を行った担当者名や担当部署を記載します。
担当者の氏名とあわせて押印することで、担当者によって検収が実施された証となります。
(6)商品・サービスの詳細
検収した商品・サービスの名称や数量、金額などを記載します。
検収書に記載する商品・サービスの情報が、注文書や納品書に記載された内容と一致していることを確認しましょう。
検収書の保存期間・保存方法
検収書は取引の事実を証明する証憑類に該当するため、発行・受領後の扱いに注意が必要です。
次は、検収書の保存期間と保存方法について見ていきましょう。
検収書の保存期間
検収書の保存期間は、法人か個人事業主かによって異なります。
法人の場合、原則7年間の保存が義務付けられており、欠損金の繰越がある事業年度は10年間の保存が必要です。個人事業主の場合は、青色・白色申告を問わず5年間の保存が必要です。
これらの保存期間は、その事業年度の確定申告の提出期限の翌日を起算日として計算します。
検収書の保存方法
検収書は、書面(紙)での保存が原則とされています。
ただし、電子帳簿保存法の要件を満たすことで、電子データとして保存しておくことも可能です。
以下の記事では、電子帳簿保存法の内容や2022年1月に行われた改正のポイントについて詳しく解説しているので、あわせてお読みください。
検収書を電子化するメリット

電子帳簿保存法の要件を満たすことで検収書を電子化することが可能だとお伝えしました。
そして、検収書の電子化は、企業にとって多くのメリットが期待できます。
次は、検収書を電子化するメリットについてご紹介します。
発行・受領の効率化
検収書を電子化するメリットとして、検収書発行・受領に関わる業務の効率化を挙げることができます。
紙ベースで検収書を運用している場合、PCなどで作成した検収書を印刷して担当者印や会社印を押印、封入した上で郵送手続きを行う必要があります。
また、検収書を受領する側は、記載内容に間違いがないか目視で確認し、業務システムに手作業で入力する手間が発生します。
一方、電子化した検収書であれば、検収書の作成から配信までPC上で完結することができ、郵送のようにタイムラグが生じることもありません。
また、受け取り側の企業は、検収書の記載内容をテキストデータとして扱うことができるため、内容の確認や入力作業の手間を削減することができます。
管理負担の軽減
検収書の電子化は、管理負担の軽減にも効果的です。
また、過去の取引に関する問い合わせがあった際、大量の書類のなかから該当の検収書を探しだすのは大きな負担となってしまいます。
一方、検収書を電子化することで、取引先名や取引年月日、取引内容などの条件で検索することが可能になり、必要に応じて速やかに参照・出力することができるようになります。
コスト削減
コスト削減もまた、検収書を電子化するメリットのひとつです。
検収書を紙ベースで運用している場合、発行のたびに印刷する必要があり、紙代やインク代、郵送費などのコストが発生してしまいます。
また、大量の検収書を保管しておくには専用のスペースやキャビネットなどの備品も必要です。検収書を電子化することで、印刷する必要がなくなり、データのまま取引先に送ることができます。
さらに、物理的な保管スペースを必要としないため、保管のためのスペースや備品などのコストも節約可能です。さらに、先述した業務効率化の効果により、人的コストを抑えることもできるでしょう。
テレワーク促進
検収書の電子化により、テレワークの促進につながるケースもあります。
紙の検収書の場合、印刷や押印、郵送手続きなどの作業が発生するため、オフィス以外では業務を完結することが困難です。
一方、検収書が電子化されていれば、PCなどのデバイス上で発行から送受信までを完結することができます。
オフィスにいなくても業務を遂行できるため、テレワークの促進にもつなげることができるでしょう。
検収書の電子化を実現するソリューション
次は、検収書の電子化を実現するためのソリューションとして、ウイングアークが提供する電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」と帳票基盤ソリューション「SVF Cloud(エスブイエフ クラウド)」をご紹介します。
「invoiceAgent」は、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェアに与えられる「JIIMA認証」を取得しています。そして「SVF Cloud」は、あらゆる帳票をクラウドで設計・出力することができ、利便性の高い円滑な帳票運用を実現します。
では、「invoiceAgent」と「SVF Cloud」の特徴を見ていきましょう。
検収書のWeb配信なら「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、企業間で交わされる帳票データの送受信を実現するソリューションです。
PDF化した請求書や検収書などの帳票を専用のWebサイトにアップロードするだけで送受信することができます。使用している帳票のフォーマットをそのまま利用できるほか、書面でのやり取りを希望する取引先に対しては郵送サービスを併用することも可能です。
そのため、現場や取引先の負担を軽減しつつ、スムーズに導入することができるでしょう。
紙の検収書をデータ化する「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙文書のデータ化を実現するソリューションです。
複数のOCR(光学的文字認識)エンジンと自動画像補正機能により、紙で受領した検収書などの文書をデータ化します。
読み取り項目に応じて適したOCRエンジンを選択できるほか、1つの読み取り項目に対して複数のOCRエンジンを使用することも可能です。
これらの特徴により、目視による確認作業や手動での入力作業の負担を軽減でき、RPA連携により自動化を目指した運用も可能です。
電子文書を一元管理「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は電子文書の一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」製品だけでなく、他システムから出力・作成した電子文書もまとめて取り込むことができ、自動で仕分けを行い適切なフォルダに保存します。
高度な検索機能で速やかに文書を参照・出力することができるほか、保存期間に応じた自動削除機能や証跡管理機能も備わっており、検収書を含む文書管理の効率化を実現可能です。
デジタル帳票の設計・出力なら「SVF Cloud」
「SVF Cloud」は、検収書を含むあらゆる帳票の設計・出力を叶える帳票基盤ソリューション。
ノーコードで利用可能な帳票設計ツールを搭載しているので、既存の帳票フォーマットを再現するのも、新たに帳票フォーマットを作成するのも簡単に行えます。PDFファイルなどの電子データでの出力はもちろん、社内プリンターで直接印刷や、FAX・メールでの配信にも対応しています。
また、各種業務システムやアプリケーションと連携することで、帳票発行を自動化・効率化することができます。

「invoiceAgent」シリーズと連携すれば、デジタル帳票の発行やデータ化、法令に基づく一元管理、企業間での配信・受領まで一気通貫で実現するデジタル帳票基盤を構築することも可能です。
「invoiceAgent」で検収書の電子化を実現した事例
最後に、「invoiceAgent」を活用して検収書などの帳票を電子化した事例をご紹介します。
検収書など請求関連書類のWeb配信を実現(伊藤忠商事)
伊藤忠商事株式会社では、2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため在宅勤務に移行したことで、紙ベースの請求関連業務の課題が顕在化。
同社では約600課ある営業部署の担当者が請求業務を行っており、在宅勤務では作業を完結することができず、コロナ禍でも出社せざるを得ない社員が多い状況でした。
そこで、検収書を含む請求関連書類をWeb配信する仕組みを構築するため、「invoiceAgent」の導入を決断します。
導入決定から2ヶ月後には検収書、納品書、支払通知書などをWeb配信する仕組みを構築。さらに4ヶ月後には請求書をWeb配信する仕組みを構築し、導入決定から半年という短期間で本格運用を開始しました。
同社では帳票の電子化をバックオフィスDXの第一歩と位置づけ、「invoiceAgent」のさらなる利用拡大を図っています。
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伊藤忠商事株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
請求書のWeb配信から始まり検収書などの他帳票にも展開(JFEスチール)

鉄鋼メーカーのJFEスチール株式会社は、コロナ禍に自社と取引先がテレワークに移行するなか、従来は紙で送っていた請求書などの帳票をデータで送付するニーズが増え、営業統括部門におけるデータ分割・送信の負荷が増加。
鉄鋼業界では20日締め月末払いという商習慣があり、請求書の送付から入金確認までを短期間で行わなければならない点も課題となっていました。
全社的にペーパーレス化を推進する計画もあり、まずは営業統括部門から請求書をWeb配信する仕組みを構築するため「invoiceAgent」の導入を決定。
導入後、従来よりも請求業務の負荷が軽減したことに加え、心理的プレッシャーからの解放にも効果を実感しています。さらに、入金予定表や請求明細書などの請求関連帳票にもWeb配信の適用範囲を広げ、原料企画室では検収書などの帳票に「invoiceAgent」を活用するなど、全社的な帳票のデジタル化および業務効率化に「invoiceAgent」を活用しています。
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検収書などの発行工数を大幅削減(toBeマーケティング)
Salesforceや Pardotの導入支援をおこなうtoBeマーケティング株式会社は、「SVF Cloud for Salesforce」を導入して検収書などの帳票発行にかかる工数を大幅削減しました。
同社では従来、商談を行うメンバー自身が各種帳票を作成しており、Salesforceで利用可能なマークアップ言語Visualforceを使用していました。しかし、Visualforceでの帳票作成は制約も多く、エクセルでカスタムして作成する場面も頻出。エクセルを使った帳票作成は負担が大きく、手作業によるミスやバージョン管理の難しさ、ガバナンス面などが課題視されていました。
そこで同社は、帳票作成のオペレーション刷新に着手。すでに利用しているSales Cloudとの親和性が高く、サポートやドキュメントが充実している「SVF Cloud for Salesforce」の導入に至りました。
「SVF Cloud」の運用開始後、Sales Cloudからシームレスに帳票発行を行える仕組みが完成。検収書や見積書、注文書などの帳票作成における人的ミスや作業工数を大幅削減することに成功し、ガバナンス統制の面でも成果を得ています。
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検収に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、検収や検収書に関するよくある質問とその回答について整理していきましょう。
検収とは何ですか?
検収(読み方:けんしゅう)とは、納品された商品やサービスの仕様・数量・品質などが発注内容と相違ないことを検査・確認する行為を意味します。
検収書とは何ですか?
検収書(読み方:けんしゅうしょ)とは、発注者が納品物に対して検収を実施し、発注内容と相違ないことを確認した後に発行する文書のことです。
検収を行う目的は何ですか?
検収を行う主目的はクレームやトラブルの防止です。また、検収書の発行・受領を売上計上の基準としている場合もあります。
検収と納品はどちらが先ですか?
通常、発注した商品・サービスが納品された後に検収作業を行います。
検収書に印鑑は必要ですか?
検収書への押印は法的に義務付けられているものではありませんが、商習慣として広く浸透しているほか、改ざんなどの不正防止や信用性の向上にも一定の効果が期待できます。
まとめ
今回は、企業が扱う文書のなかでも検収書に注目し、知っておきたい基礎知識や保存期間、電子化のメリットや方法についてご紹介しました。
検収書は発行が義務付けられている文書ではないものの、商取引を円滑にしたりトラブル・クレーム防止の面でも重要な役割を果たします。
そして、検収書を電子化することで企業にとって多くのメリットが期待できます。今回ご紹介した情報も参考に、検収書を紙で運用している企業は、電子化を検討してみてはいかがでしょうか。

























